放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    中国,反汚職ドラマが大人気に

    中国で3月末から放送が始まった汚職摘発のドラマ『人民的名義』が大変な人気を呼び,OTT事業者も相次いで配信した結果,調査会社のデータでは,累計視聴回数が1か月で100億回を超えた。中国では2004年,それまで汚職摘発のドラマが多数制作されていたことから,当局が新規の制作を制限する措置を打ち出し,その後,こうしたドラマは鳴りを潜めていた。2012年に習近平政権が発足すると,「反汚職」が最重要政策として打ち出されたこともあって,2014年,最高人民検察院映画テレビセンターが小説家の周梅森氏に『人民的名義』の原作の執筆を依頼した。一方で「反汚職」は共産党批判につながりかねず,途中で放送停止処分が出るリスクもあることから,当初は各局ともドラマの購入に及び腰だった。紆余曲折の末,娯楽番組で定評のある湖南ラジオテレビが作品を購入,事前のPRなどは一切しないまま,3月28日から放送を開始していた。

    米Netflix,愛奇芸を通じ中国で番組配信へ

    アメリカのOTT事業大手Netflixは4月27日,中国の検索大手「百度」傘下のOTT事業者「愛奇芸」(iQIYI)との間で独占的なコンテンツ提供契約を締結したと発表した。対象となるのは『ストレンジャー・シングス』『ブラック・ミラー』などを含むNetflixのオリジナル作品の一部で,今後審査を経て中国で配信される。Netflixはこれまでも人気ドラマ『ハウス・オブ・カード』の配信契約を,中国の別の大手OTT事業者との間で結ぶなどしていたが,今回もプラットフォーム事業者としての参入は認められず,現地企業と提携する形での進出となった。中国では従来,OTTサービスは無料視聴がほとんどだったが,2015年に愛奇芸の独自コンテンツの『盗墓筆記』が大ヒットして以降,課金方式が急成長,調査会社Iリサーチによると,視聴料収入の比率は2016年の19%から,2019年には38%に上昇する見込みという。

    韓国KCC,大統領選挙前に事実上の機能停止

    メディア規制監督機関のKCC(韓国放送通信委員会)は4月末現在,5人の常任委員のうち欠員が委員長を含め2人になり,大統領選挙を間近に控える中,「全体会議」を開くことができなくなっている。主要な審議事項を議決するための全体会議は,法律上,委員長の招集で,5人の常任委員のうち3人以上の出席があれば開くことができる。4月末の時点では,全体会議を開催することは物理的には可能だが,大統領選挙直前ということもあり,実際に開かれる可能性は低いとみられている。法律ではKCC常任委員5人のうち,大統領が委員長を含む2人を指名し,国会が与党から1人を,野党から2人を推薦して構成することになっており,5月の大統領選挙の後に,後任委員長が選任されるまでは業務の空白が避けられない見通しとなっている。

    シンガポール政府,アナログ停波後の空き周波数帯の競売を実施

    2017年末までにアナログ放送を終了することを目標にしているシンガポール政府は4月4日,アナログ停止で空きが生じる周波数帯を,通信事業用に転用するための競売を実施した。競売に出されたのは700MHz帯,900MHz帯,2.5GHz帯の計175MHz分。通信業界1位のSingtelが75MHz分の周波数を5億6,370万シンガポールドル(約460億円)で落札し,通信業界2位のStarHubやM1,TPG Telecomなどの通信事業者も一部の周波数を落札した。

    ミャンマーの国営放送局にJICAが資金協力

    日本の国際協力機構(JICA)は3月29日,ミャンマーの首都ネピドーで,「ミャンマーラジオテレビ局放送機材拡充計画」の一環として,ミャンマー政府への22億6,300万円を限度とする無償資金協力の贈与契約を締結した。同計画では,国営メディアの一つであるMRTV(ミャンマー・ラジオ・テレビ局)の放送機材を拡充し,MRTVの放送能力と放送番組制作能力の向上を図ることで,民主化の推進を含む経済社会を支える人材の能力向上に寄与するとしている。MRTVは1980年代に日本の協力によって,ヤンゴンのスタジオセンター(現在のヤンゴン支局)の建設と番組制作機材の整備を行い,本格的にテレビ放送を開始したが,当時整備された機材は老朽化していた。