文研ブログ

文研フォーラム

文研フォーラム 2017年12月22日 (金)

#107 NHK文研フォーラム、今年度も3月開催決定!

計画管理部(計画) 松本裕美

2017年も残りわずかとなりました。新年を迎えると、色々な行事が目白押しですよね。
1月 箱根駅伝、大発会…
2月 ピョンチャンオリンピック…
3月 文研フォーラム2018、ピョンチャンパラリンピック…
かなり無理やりでしたね。

では、「文研フォーラム」って何??と言う方に…
年1回、NHK放送文化研究所が総力を挙げて、研究や調査の成果を発表したり、シンポジウムを開催している場です。NHK文研フォーラム2018「テレビの未来 メディアの新地図」をテーマに、3月7日(水)から3日間東京・千代田放送会館で開催します。

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プログラムは7つ。そのキーワードを一部抜き出してみると…
*日米同時世論調査
*マルチプラットフォーム戦略
*スマホ時代のテレビの可能性
*メディアの公共性
*テレビドキュメンタリー研究
*美化語
*老舗番組

ちょっと謎?なものもあると思いますが、なかなかバラエティに富んでいるような気がしませんか?
国内外のメディア関係の研究者をはじめ、ジャーナリスト、料理研究家の方など豪華ゲストをお招きして、テレビやメディアの今、未来について文研の研究員と共に考えていきます。

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文研フォーラム2017から

ちなみに過去5年のテーマを見てみると、
2013年「テレビ60年 未来へつなぐ」
2014年「テレビとメディアの‘現在値(ち)’~伝えてきたもの、伝えていくもの~」
2015年「放送90年 これまで、そしてこれから」
2016年「変貌するメディア、その先を考える」
2017年「いま考える メディアのちから メディアの役割」です。

文研が、激変しているテレビやメディア環境について模索し続けていることがお分かりいただけますでしょうか?
さて、興味を持っていただいたプログラムの申し込みは、来年2月上旬にこちらのホームページで開始予定です。定員に達してしまうと受付終了となりますので、是非お早めに。

文研フォーラム 2017年07月21日 (金)

#88 ドキュメンタリストから学んだこと@「文研フォーラム2017」

メディア研究部(番組研究) 松本裕美

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田原総一朗さん
今野勉さん相田洋さん。この、ドキュメンタリーの“巨匠”が「NHK文研フォーラム2017」に集いました。いったいどんな議論が飛び交ったのか…気になりませんか?
テーマは、「テレビ・ドキュメンタリーにおける“作家性”とは?」です。

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文研は年に一度、調査研究成果を発表するフォーラムを開催しています。今年は、3月1日(水)〜3日(金)に東京の千代田放送会館“いま考えるメディアのちから、メディアの役割”と題して行われました。
その2日目のシンポジウムが、「テレビ・ドキュメンタリーにおける“作家性”とは?」です。パネリストとしてお招きしたのが、ジャーナリストの田原総一朗さん、テレビ演出家・脚本家で、テレビマンユニオン最高顧問の今野勉さん、NHKのOBでディレクターの相田洋さん。そしてコメンテーターとして早稲田大学の伊藤守教授を迎え、ドキュメンタリー制作者の作家性などについて、約2時間半、自由奔放、闊達自在(かったつじざい)、制御不能?なトークが繰り広げられました!

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80歳を越えた今も現役で活躍中の3人ですが、テレビ・ドキュメンタリーの創り手、送り手として、その歴史とほぼ同じ時間を歩んできたからこそ語れる言葉を、シンポジウムでは聞くことができました。

89-0728-6.PNG今回のシンポジウムは、この本『テレビ・ドキュメンタリーを創った人々』の出版を機に行われました。これは、『放送調査と研究』2009年8月号に掲載したパイロット研究と、同誌に2012年2月号から3年半にわたって連載してきた「制作者研究」の論文をまとめたものです。

そして、このシンポジウムの一部も、『放送研究と調査』の7月号に採録しましたので、こちらもぜひご一読ください。
また、このシンポジムのダイジェストを文研ホームページで動画配信しています。ご覧になりたい方はここをクリック!ぜひご覧ください!

 

 

 

 

文研フォーラム 2017年03月17日 (金)

#70 多くの来場に感謝~「文研フォーラム2017」

計画管理部(計画) 安楽裕里子

年に一度、文研の調査研究成果を発表するNHK文研フォーラム
今年は3月1日(水)〜3日(金)に東京の千代田放送会館で、“いま考える メディアのちから、メディアの役割”をテーマに開催しました。海外からのゲストも招いて様々なテーマで行った8つのプログラムには、「フォーラム」という名前になったおととし以降で最も多い、延べ1400人を超える方々にご来場いただきました。

 文研フォーラム2017ポスター
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ここでは、初日と2日目に行われたシンポジウムの様子をちょこっとご紹介します。
初日は“東京2020オリンピック・パラリンピックへ”と題し、世論調査の報告と、シンポジウム「パラリンピックと放送の役割を開催。

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上智大学の師岡文男教授、英チャンネル4のマーティン・ベイカーさん、車いすランナーでパラリンピック金メダリストの伊藤智也さん、NHK2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部の樋口昌之副本部長をパネリストに迎え2時間半。リオ大会ではNHKのスタジオゲストも務めた伊藤智也さんからは、「障害者スポーツとして撮るのではなく、アスリートとしてカッコよく撮って欲しい」という率直な発言、また、日英の放送を比較した報告や、登壇者の熱いディスカッションに会場も沸き、2020年に向けた関心の高さが改めて感じられました。

2日目は、「テレビ・ドキュメンタリーにおける“作家性”とは?」として、文研発行の『放送研究と調査』に3年にわたって掲載した「制作者研究」のシンポジウムを2時間半にわたって開催。

ゲストにジャーナリストの田原総一朗さん、テレビ演出家・脚本家の今野勉さん、元NHKディレクターの相田洋さんという3巨匠、コメンテーターに早稲田大学の伊藤守教授を迎え、制作者の作家性などをテーマに自由闊達(制御不能?)なトークが繰り広げられました。

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このシンポジムの様子は、後日、文研ホームページで動画配信を予定しています。どうぞお楽しみに。

また、今回は午後の時間帯に1階ラウンジで、「文研カフェ」をオープン。文研の調査研究内容を紹介した各グループ力作のパネルを見ながら、登壇者やゲストと質疑を交わしていただくなど、交流の場としてにぎわっていました。

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文研各部グループ作のパネルを展示
世論調査部 視聴者調査グループとメディア研究部 メディア動向グループのパネル(クリックすると拡大表示されます)

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シンポジウム終了後の文研カフェ

3日間にわたったプログラムには、応募開始直後から多くの申し込みをいただきましたが、座席数の関係でご来場いただけなかった方も出てしまい、大変申し訳ありませんでした!
そんな皆さんに、会場でお配りした文研作成の資料を、近々「文研フォーラム」のホームページに掲載する予定ですので、ぜひご活用ください。
また、いくつかのプログラムでは、『放送研究と調査』の6月号、7月号等に採録を予定していますので、こちらもぜひご一読ください。
文研フォーラムはここ数年、毎年3月に開催しています。文研の一年間の調査研究成果に、多少のテレビ的演出も加え、分かりやすい発表に努めております。来年度もご期待ください!
ご来場いただきました皆さん、ありがとうございました。

文研フォーラム 2017年02月21日 (火)

#67 いま「ポッドキャスト」が新しい?

メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚

3月1日(水)・2日(木)・3日(金)に行われる「NHK文研フォーラム2017」の2日目に『米ラジオ・オンデマンド時代の到来か? ~拡大する「ポッドキャスト」サービス~』の研究発表を行います。

ポッドキャストって、いつの話?」というご指摘は、ある意味ごもっともです。日本のラジオはNHKの「らじる★らじる」、民放の「radiko」で多くの番組のストリーミング配信が聞け、世界的に見てもかなり進んだ状況です。でも、国土が広く、日本ほど通信環境が整備されていないアメリカでは、スマートフォンなど自分の携帯端末にコンテンツをダウンロードして聞く「ポッドキャスト」の“第2(第3とも)の波”が訪れ、いま静かなブームになっています。

その牽引役は、まずは「スマートフォン」。そして、確かな番組作りで知られる公共ラジオ「NPR」です。彼らの特徴は、政治・経済から、音楽、映画、歴史、笑い、クイズ、ドキュメンタリーまでさまざまなジャンルのポッドキャストを提供していることです(全て無料)。1回20分から30分程度、難しすぎず、かと言って薄っぺらくもない内容は、個人的には「万人受けはしないけれど、好きな人にはたまらない“NHK教育テレビ的”だ」と思っています。

そして、もうひとつ別の“波”も。世界を揺るがせているトランプ新政権をきびしくウォッチングするために、アメリカを代表するNew York TimesとWashington Postの2大紙が、相次いでポッドキャストを始めました。いわば、異業種からの参入です。NYTは『The Daily』の名の通り、毎日の配信。WPは『Can He Do That?』、(彼にできるの?)というタイトルが痛烈です(週1回の配信)。デジタルの普及でメディアの垣根が低くなっている今、ポッドキャストはさまざまな人が参加できるメディアになっています。

もちろん収益につなげることや、たくさんのコンテンツの中から見つけてもらう難しさなどの課題もありますが、デジタル時代に“個人の息吹を感じとることができるメディア”として、その可能性は今後広がるのではないかと感じています。実際、出演したNYTの記者に「そんなことまでしゃべっていいの?」と驚いたり、WPの記者が言いよどんだりするところで、妙に安心したりしました。ああ、人間らしくていいな、と。テクノロジーの力もありますが、『語りの力』を再認識できるアメリカのポッドキャスト。

まだまだ発展途上の“古くて新しいメディア”ポッドキャストの可能性について一緒に考えませんか。3月2日(木)の研究発表へのご参加をお待ちしています。 

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(参加申し込みはこちらから↓)
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文研フォーラム 2017年02月17日 (金)

#66 台湾新政権は「メディアの公共性」を実現できるか

メディア研究部(海外メディア研究) 山田賢一

台湾では去年5月、民進党の蔡英文新政権が発足しました。親が政治家でない、かつ女性の最高指導者は、アジアでは珍しいとして注目を集めましたが、この新政権の特色として指摘されるのは、「メディアの公共性」を重視していることです。
従来、台湾では、メディアは財閥オーナーの所有物という側面が強く、2008年に中国時報グループという大手メディアグループの経営権を食品事業者の旺旺が握った際は、中国をほめたたえる報道が急増、中国事業で多大な利益を上げる旺旺のオーナーの意向が働いたとして、メディア関係者や市民の警戒が高まりました。
こうした声に配慮する新政権は、メディア政策として①公共放送の充実②「財閥のメディア支配」排除、の2点に力を入れています。このうち①に関しては、新理事の選出にあたって、多くのメディア関係者や女性を候補者としてリストアップ、これまでより大幅に「若返り」と「多様化」が進みました。また②に関しては、財閥の通信事業者「遠傳」によるケーブルテレビ事業者最大手「中嘉網路」の買収に政府の投資審議委員会が待ったをかけ、独立規制機関のNCC(国家通信放送委員会)に審査のやり直しを求めています。

こうした新政権の政策について、与党民進党や、与党に近い政党の時代力量はおおむね肯定的ですが、商業局や野党国民党それにメディア研究者の一部は、①の公共放送の規模拡大について、民業圧迫や官僚主義による非効率につながると批判しています。一方②に関しては、与野党を通じ「遠傳」の買収に否定的な見方が多く、ある程度のコンセンサスが得られる可能性もあります(その後2月8日に中嘉が売却断念を発表)。
当面新政権のメディア政策で最も大きな課題は、公共放送充実のために必要とされる【公共テレビへの政府交付金増額】と【公共放送グループ(現在は公共テレビを中心に、中華テレビ、少数派住民向けの客家チャンネル、国際放送の宏観チャンネルで構成)の構成員拡大】に向けての公共テレビ法改正です。しかし台湾では現在、年金改革や同性婚合法化といった社会の関心の高い案件が目白押しで、公共テレビ法改正案がいつ立法院(国会)に上程されるかメドはたっていません。政策の実現にはまだまだ山あり谷ありの状態で、今年どのような動きが見られるか注目されます。

詳細は、3月1日から3日にかけて行う「NHK文研フォーラム2017」の最終日(3日)午前10時から報告いたします。ぜひご参加ください。

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(参加申し込みはこちらから↓)
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文研フォーラム 2017年02月07日 (火)

#65 一緒に考えてみませんか? 『パラリンピックと放送の役割』

メディア研究部(メディア動向) 山田 潔

1つ1つの粒が立ち、キラキラ輝いていて、じっくり味わうとなかなかおいしい。高級ブランド米の宣伝ではありません。障害者スポーツの祭典・パラリンピックの競技中継を見た感想です。
2バウンドまでOKのルールから、ラリーの応酬が延々と続く車いすテニス。激しくぶつかり合う衝撃音に興奮する車いすラグビー。静寂のなか、ボールの中の鈴の音に集中するゴール・ボール。一度見始めると、自然とこぶしを握り応援してしまう、純粋にスポーツとしての興奮と感動を感じます。
NHKは、パラリンピックのリオ大会について、初めて総合テレビでの本格的な競技中継を行うなど、ロンドンの約3倍、133時間あまり放送しました。
スポーツには、する者、関わる者、観る者、それぞれに自然とお互いの垣根を低くし、理解を進める一面があります。パラリンピックを通して、障害があるけれど、同じ人間という実感が広がり、障害のある人もない人も、誰もが1人1人個性的で、輝ける共生社会になっていけるといいですね。

地球の裏側、ブラジル・リオデジャネイロで熱戦が繰り広げられてから、はや半年近くが経ち、東京2020大会が着々と近づいています。
2020年の東京大会で、パラリンピックをみんなで楽しみ、パラリンピックを共生社会の実現につなげていくために、放送はどう貢献できるのか。3月1日から3日にかけて行うNHK文研フォーラム2017の初日にパラリンピックと放送の役割~ロンドン・リオから東京2020に向けて~をテーマにシンポジウムを開催します。2012年の自国ロンドン大会からリオ、東京とパラリンピック放送を行う英国チャンネル4とNHKのリオ大会での中継番組比較を軸に、それぞれの放送当事者、北京大会での金メダルをはじめ合計5つのメダルを獲得した車いすランナー・伊藤智也さん、パラリンピックを社会変革の機会ととらえる上智大学教授・師岡文男さんをパネリストとして、東京2020に向けて放送の役割を考えます。
あなたも会場で、一緒に考えてみませんか。

また、シンポジウムに先立ち、「文研世論調査で探る東京2020への期待と意識」と題して、世論調査の結果から、オリンピック・パラリンピックの2016年リオ大会のテレビ視聴状況の分析、2020年東京大会に関する人々の意識などを報告します。なお、この調査は東京大会まで継続し、経年比較を行うことになっています。
こちらも是非ご参加ください。

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(参加申し込みはこちらから↓)
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それにしても、善し悪しは別としてオリンピック、パラリンピックは、やっぱり金メダルをとると盛り上がるんですよね。
選手の皆さん、ファイト。応援していきます!!

文研フォーラム 2017年02月03日 (金)

#64 テレビのネット同時配信 議論はどこに向かっていくのか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

2月2日(木)、NHKは今後の受信料制度の在り方について検討するため、
外部有識者による検討委員会を設置したと発表しました。
テレビ放送の内容をネットにそのまま配信する、いわゆる同時配信にかかる費用を
どのように負担してもらうのかなどについて議論してもらうとしています。

今NHKでは、災害時やオリンピックなどでは同時配信を行っていますが、
“常時”、つまりチャンネル丸ごとを配信することは放送法で認められていません。
しかし今後、人々がネット上で動画を視聴する流れが更に広がっていくとみられる中、
NHKでは、一昨年11月に始まった総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検討会)」において、
常時同時配信が出来るよう法律の改正を求め、議論が続いています。
そして今回、NHK自らも、法律が改正された場合を見据えた検討を開始することになりました。

NHKがこの発表を行ったちょうど同じ日、
総務省では、諸課題検討会とはまた別の会議の場で同時配信に関する議論が行われていました。
情報通信審議会(情通審)の「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」です。
この委員会は昨年11月に開始され、2日は第4回目の会合でした。

このように、総務省では今、2つの会議の場で同時配信について議論が行われています。
放送法に関わるNHKの問題を主に扱うのが諸課題検討会、
広く同時配信全般の課題の整理と解決の道筋について議論するのが情通審、と
2つの会議で議論を仕分けつつ、相互に連携をとって議論を積み上げていこうというのが総務省のねらいのようです。

そもそも大前提として、同時配信については、
欧米や韓国などの国々では数~10年前から一般的なサービスとして定着しているにも関わらず、
日本では、NHKだけでなく地上波民放においても、チャンネルを丸ごと同時配信している局がないという状況にあります。
(実験的試みはNHKとTOKYO MXで実施中。)
地上波民放はNHKとは異なり、制度的に同時配信を行うことは可能ですが、行っていません。
なぜ日本では同時配信が行われてこなかったのか、このことについては、
『放送研究と調査』2016年12月号の「「これからのテレビ」を巡る動向を整理するVlo.9でまとめていますのでご参照ください。

筆者は上記の総務省の2つの会議の傍聴や取材を続けていますが、
両会議で有識者から出されている意見は、
「テレビ離れが進む中、できるだけ早く同時配信については実施すべき」
「実施するならNHKと民放一緒で、できるだけ1つのプラットフォームが望ましい」
という趣旨が多くを占めています。
総論では、これらの意見に対する反対はあまりないのですが、
なかなかそこから先に議論は進まず、2つの会議とも足踏み状態が続いているように思います。

今後どのように2つの会議の議論は進んでいくのでしょうか。
常時同時配信の実現に向けて法改正を要望しているNHKと、
動画配信サービス全体のビジネスモデル像を構築する中で、
同時配信をどう位置づけていくのかを考えていきたい地上波民放とのアプローチの違いをどのように調整していくのでしょうか。
この他にも、権利処理や技術的要件などの課題も山積しています。
引き続き議論に注目していきたいと思います。

一方で、筆者は、放送と同じ番組をそのまま配信する同時配信というサービスが
テレビ離れをした人々に対するネットを活用したアプローチの答えとしてベストなのかどうかについては疑問を持っています。
これだけ多様な動画サービスがネット上に乱立する今、
同時配信のみをゴールとして議論を進めるのではなく、
同時配信も含めた、放送事業者のネット展開全体のあるべき姿を議論することこそが、
一見、遠回りのようにみえて、結果的に収れんしていく議論ができるのではないか――、そう思うのは筆者だけでしょうか。

文研では3月1日~3日、「文研フォーラム」で数々の報告やシンポジウムを実施しますが、
3日午後には、総務省の放送行政担当の大臣官房審議官との対論を企画しています。
同時配信についても、総務省の率直なご見解を伺う予定です。
この他、最新の世論調査の結果なども報告しますので、皆様のご参加をお待ちしています。

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(参加申し込みはこちらから↓)

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文研フォーラム 2017年02月01日 (水)

#63 本日申し込み開始!!ようこそ「NHK文研フォーラム2017」へ

計画管理部(計画) 吉田理恵

いよいよ今日から2月。本格的な春の訪れが待ち遠しいですね。さて突然ですが、今日(2月1日)は何の日でしょう???


 ①テレビ放送開始記念日
 ②「おんな城主直虎」ゆかりの井伊直政の命日
 ③プロ野球キャンプイン


 
クイズの答えは最後にご覧いただくとして、今日はもう1つ!
NHK文研フォーラム2017」申し込み開始日でもあるのです(タイトルですっかりネタばれしていますが)。

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ところで「文研フォーラム」って??!!われわれ放送文化研究所が年に1度、総力を挙げてお送りしている、研究成果の発表やシンポジウムです。今年は、ちょうど1か月後の3月1日(水)から3日間、東京・千代田放送会館にて開催します。
今回のテーマは、「いま考える メディアのちから、メディアの役割」。放送やメディアをめぐる環境、そして人々の意識も大きく変わる今、改めて足元を見つめ直し、そのうえでメディアは何ができるのか、何をすべきなのかを、ご来場の皆さまと一緒に考えたい。そうした思いを込めました。内外のメディア関係者や研究者、ドキュメンタリー制作の巨匠の方々、パラリンピアンの方など、豪華なゲストをお招きし、文研の研究員とともに考えます。
具体的なプログラムはこちら
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(クリックするとPDFファイルが開きます)

初日の「東京2020オリンピック・パラリンピックへ」を皮切りに、2日め以降も、アメリカ大統領選でのテレビメディアの取り組みや、テレビドキュメンタリーの“作家性”を考える制作者研究BBCのEU国民投票報道などなど、そしてラストの「これからのテレビを考える」まで、さまざまな角度と切り口で、メディアの現在と将来に迫ります。

「あ、これ参加してみたいな」というプログラムはありましたか?そんなあなた、今すぐこのページを開いて、「申し込み」ボタンをポチっとクリックしてください。お申し込みは先着順。定員に達したプログラムは受付を終了してしまうので、お早めに!
さあ、ぜひご一緒に、放送そしてメディアの現在と将来に、思いを馳せてみませんか?文研一同、首を長くしてみなさまのお越しをお待ちしております。

最後に冒頭のクイズの答え。正解は①②③全部でした!!

文研フォーラム 2016年07月29日 (金)

#38 東日本大震災から5年 NHK文研フォーラム

メディア研究部(メディア動向) 山口 勝

「震災アーカイブ」をご存じですか?
地震、津波、原発事故という未曽有の東日本大震災をきっかけに、災害を記録し教訓を広く未来に伝えようと、震災の写真や資料などをデジタルで収集・保存・公開する取り組みが広がりました。誰もがネットからアクセスすることができます。
あの日から5年を迎えた3月、私は、NHK文研フォーラム「東日本大震災から5年 “伝えて活かす“震災アーカイブのこれから」と題したシンポジウムを企画しました。『放送研究と調査』7月号に報告とその後の熊本地震をめぐる防災とメディアの動きをまとめました。

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NHK文研フォーラムの様子。
2枚目は、NHK NMAPS。アーカイブされた災害データを可視化するデジタル地球儀。防災・減災報道に欠かせない。

東北地方沿岸の被災地では、所によって10mを超えるかさ上げ工事が進み、風景が一変しています。過去と現在を結び、未来を考える復興に、震災アーカイブの資料は欠かせません。また震災の様子をネットで見るだけでなく、震災学習用のアプリやリアルタイム情報と統合した防災情報伝達に、アーカイブのデータを利活用する動きも始まっています。

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NPOみらいサポート石巻が制作した「石巻津波伝承ARアプリ
今話題の“あのゲーム”同様、その場に行くと、震災当時の映像や画像などが再生される。

一方で、集中復興期間の5年を前に、資金難などから補助金で作られたアーカイブや企業アーカイブの閉鎖が相次いだのも事実です。シンポジウムでは「利活用」と「持続性」をキーワードに、震災アーカイブの「」を見つめ「これから」を展望しました。アーカイブの担い手は、大学、自治体、国、メディア、NPOなどです。では、使い手、ユーザーは誰なのでしょうか。「誰が、何のために、どう使うのか」。「見る」だけでなく「使う」ことで持続されるデジタルアーカイブの世界。利活用を進めるためにオープン化することはできるのか。公共放送から公共メディアへの進化を見据えるNHKにとっても、インターネット時代の公共性やメディアの役割を考える上で重要な議論が展開されました。
パネリストは、今村文彦 東北大学災害科学国際研究所所長、小野史典 多賀城市地域コミュニティ課長、諏訪康子 国立国会図書館主任司書、渡邉英徳 首都大学東京准教授、倉又俊夫 NHKアーカイブス部チーフプロデューサー、コメンテーターは、吉見俊哉 東京大学大学院教授、司会・報告は山口勝が務めました。
また、4月の熊本地震をうけたメディアの動きについても加筆しました。

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熊本地震(前震)直後の、Yahoo!防災速報アプリの画面。
NHKニュース映像(ライブ)のタブがあった。

ネットの世界の変化は早く、6月20日には、NHKニュース防災アプリの提供が始まっています。
「放送研究と調査」8月号のメディア・フォーカスもご覧ください。

文研フォーラム 2016年06月17日 (金)

#31 OTTシンポジウムの"採録"はOTT?

メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚


_MG_9466.JPG文研では、研究員が論文や報告を書くほかに、学会やシンポジウムに参加したり発表したりすることも重要な仕事です。今年3月に開いた「NHK文研フォーラム」では、いまが旬のテーマ、“OTT(over-the-top)サービス”を取り上げ、海外のゲストなどを招いて、シンポジウム『OTTはメディア産業をどう変えるか』を行いました。

OTTとは、視聴者・ユーザーがテレビ番組や映画など好きなコンテンツを、好きな時に、好きな場所で、好きなデバイスで、インターネット経由で視聴できるものです。つまり、テレビや映画の最大の弱点だった“再現性”を担保した新しいサービスです。日本では去年、Netflixがサービスを開始して話題になりました。

シンポジウムは、とりあえず無事終了しました。私は、もろもろの事前準備、当日の司会などで疲れましたが、次はそれを文章化する“採録”です。当日、会場にお越しいただけなかった方にも、議論の中身や情報、知見を共有していただくためです。私は当初、「シンポの内容を“書き起こし”して、それを再構成すればいいだろう」くらいにタカをくくっていました。

しかし、実際に作業を始めてみると、それでは全く立ち行かないことがわかりました。パネルディスカッションは常に論理的に進むわけではありません。質問に対する答えが思わぬ方向に行ったり、発言が尻切れトンボになったり、議論が予想外のところで盛り上がったり沈滞したりと、ハプニングの連続です。書き起こし文をそのまま原稿化しても意味が通らないことが、遅ればせながらわかりました。おまけに、パネリスト3人のうち2人が英語圏の人という言葉の問題もありました。

作業中は「シンポの実施だけで充分なのに。採録原稿なんて余計だ…」と思っていました。しかし、難渋の末に出来上がった原稿を読んでみて、「やっぱり採録をやって良かった」と思いました。それは、“ライブ”のシンポジウムの場では理解できなかったり、落ちてしまったりしていた大切な情報や論点を拾い集め、整理し、文字に残すことができたからです。会場に来られなかった人に共有してもらうことはもちろん重要ですが、一番得をしたのは、私自身かもしれません。シンポジウムだけだったら、このテーマをこれほど深く考えることはなかったでしょう。

そして、これって、一種のOTTじゃん…」と思い至りました。つまり、生のシンポジウムに来られなかった人にも追体験してもらえる点、そして時間をおくと新しい発見もあるという点において、です。

いまテレビ局が躍起になっているのは、感動する番組や重要な報道を、一過性で終わらせず、より多くの人に共有してもらうための仕組み作りです。生(ライブ)で体験することが理想ですが、それができなかった人にも何とか届けることが、作る側と見る側の両方のメリットになるからです。

我々、文研の研究員が日々行っている「原稿を書く、文字に残す」という仕事も、いつでも立ち戻って見直すことができ、時の経過が新たな視点を生み出す(かもしれない)という意味で、実は“OTT”と同じだということを、今回の採録作業で改めて認識した次第です。いまさらながらで、お恥ずかしい話ですが…。

「そんなに言うなら、どんな原稿か読んでみるか」と思っていただければ、このブログは成功です。「なんだ、この程度のデキか?」というご批判は覚悟の上で、興味がおありの方はぜひ
『放送研究と調査6月号』をご覧ください。
(ウェブ上では、7月に文研ホームページで全文を公開します。)