文研ブログ

文研フォーラム 2020年01月31日 (金)

#230 誤情報・虚偽情報との闘い・真価を問われるメディア報道

メディア研究部(メディア動向)福長秀彦

3月の「文研フォーラム2020」では「SNS時代の誤情報・虚偽情報とメディア~“フェイク”にどう向き合うのか~」というシンポジウムを行います。誤情報・虚偽情報の拡散について研究している私もパネリストの一人として参加することになりました。

うわさや流言、デマ、都市伝説。世の中に事実の裏づけがない情報が溢れているのは、今も昔も変わりません。私はNHK報道のOBで1975~91年にかけて記者をしていましたが、当時も取材で聞き込んだ情報には、怪しげな“ガセネタ”の類がかなり交じっていました。その中から事実の裏づけがとれたものだけを拾い出しては記事を書いていました。“ガセネタ”の類はゴミ情報として捨てていました。巷でうわさになっている誤情報や虚偽情報を打ち消す記事を書いた記憶はありません。

でも、今やそんなことで済むような時代ではなくなったようです。インターネットやSNSの普及によって、誤情報・虚偽情報はかってないほど広範囲に、そして瞬く間に伝播するようになりました。私の現役時代は、誤情報・虚偽情報がどれほど世の中に広まり、社会にどんな影響を及ぼしているのか、簡単にうかがい知ることはできませんでした。しかし、今ではTwitterのリツイートなどによって、それらが社会に拡散し、人びとが反応する様子がリアルタイムで可視化されます。

 誤情報・虚偽情報に注意を呼びかけるテレビニュース
                (大阪府北部の地震)
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(注)2018年6月18日NHK総合テレビの放送画面

誤情報・虚偽情報の中には、社会に悪影響を及ぼすおそれがあるものが多くあります。ジャーナリズム=報道機関には一定の取材力、速報力、情報伝達力がありますから、有害な誤情報・虚偽情報を迅速に、リアルタイムで打ち消して、それらに惑わされないよう伝える役割があると考えます。メディア報道の真価が問われるところだと思います。

もちろん、誤情報・虚偽情報との闘いは容易ではないでしょう。客観的な事実よりも信じたい情報を信じる「ポスト・トゥル―ス」の風潮、“マスゴミ”の言葉に象徴されるメディア不信、AIによってますます巧妙化するおそれがある偽動画…。メディアはこれらとどう向き合い、どうしたら一人でも多くの人びとに正確な事実を伝えることができるのか、内外のジャーナリストやメディア研究者の皆さんとシンポジウムで掘り下げます。


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