文研ブログ

文研フォーラム 2019年02月14日 (木)

#169 有料動画配信はどこまで拡大するのか ~「メディア利用動向調査」を読み解く~

メディア研究部(メディア動向) 黛 岳郎


仕事柄、テレビや映画をよく見ます。日々次から次へ、あれもこれもという感じで無節操に見ているので、もはや楽しみを通り越して、修行に近いものがあります。それでも、時には印象に残る作品に出会えます。最近では『ROMA/ローマ』と『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』でしょうか。2本とも映画ですが、映画館で見たわけではありません。アメリカの有料動画配信「Netflix」の作品なので、会社の行き帰りや寝る前にスマホで見ました。中でも『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、見ている途中に何度も2つの選択肢が出てきます。見ている人はどちらかをタッチして選ぶことになるのですが、ストーリーもその選択によって変わっていく作りになっています。個人が手元にあるデバイスで視聴するという動画配信の特徴を最大限に生かした興味深い映画でした。

Netflixが日本に上陸したのは、2015年9月のこと。その直後には「Amazonプライム・ビデオ」のサービスも始まりました。外資の進出に、我々、放送事業者は独自の有料動画配信を積極的に展開し対抗するだけでなく、コンテンツを提供するなど連携も深めています。こうした形でのサービスの充実は、有料動画配信が映画やドラマなどを楽しむ新たな手段として多くの人たちの日常に入り込んでいるかのように感じさせます。

しかし実際のところ、ユーザーがどれだけいて、どのように使われているのか等々、その全貌はあまりよくわかっていません。そこで今、文研が2016年から毎年行っている世論調査「メディア利用動向調査」の結果分析を進めています。調査相手を“国民の縮図”となるように選び出す世論調査によって得られた結果は、日本の実態を表していると言えます。3年分の世論調査の結果から、有料動画配信の現状に迫り、今後どこまで拡大していくのか考えています。そして、3月7日の「NHK文研フォーラム2019」では、この内容について報告する予定です。

ちなみに『ROMA/ローマ』ですが、第91回アカデミー賞で作品賞や監督賞など最多の10部門でノミネートされています。動画配信事業者の作品が作品賞受賞となれば初の快挙であり、より多くの人がNetflixに注目することになるでしょう。アカデミー賞の授賞式は2月25日(日本時間)。分析作業に追われながら、こちらの行方も気になる私です。

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