文研ブログ

調査あれこれ

調査あれこれ 2023年05月09日 (火)

新型コロナ「2類相当」から「5類」へ  賛否を分けたポイントの1つは「重症化率」の捉え方【研究員の視点】#477

世論調査部(社会調査)小林利行

政府は5月8日、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけを、結核と同じように感染者への入院を勧告でき、外出自粛の要請などもできる「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げました。

ワクチン接種の広がりや病原性の低い株の出現などによって重症度が下がる中で、「ウィズコロナ」の流れを進めるためにも扱いを変えるようです。

ただし、この決定には賛否両論あります。
文研が2022年11月に実施した世論調査によると、引き下げに『賛成(どちらかといえばを含む)』は59%、『反対(どちらかといえばを含む)』は40%でした(図①)。
『賛成』が『反対』を上回っているものの、『反対』も決して少ないわけではありませんでした。

図①  法的位置づけを下げることの賛否

sheet1.png

『賛成』『反対』を、男女年層別にみたのが図②です。
男女で多少の違いはありますが、全体的にみると、男女ともに『賛成』は18歳~30代の若年層で多く、『反対』は60代以上の高年層でほかの年代より多くなっています。

図②  法的位置づけを下げることの賛否(男女年層別)

sheett2.png

この調査では、『賛成』『反対』それぞれに、そう答えた理由も尋ねています。
図③は、『賛成』と答えた人の理由です。
「感染しても重症化しづらくなっているから」が30%、「医療機関の負担が軽くなって必要な時に治療が受けやすくなるから」が29%で同率1位となっています。

図③  法的位置づけを下げることに『賛成』の理由

sheet3.png

一方図④は、『反対』と答えた人の理由で、「規制が緩くなることで感染しやすくなるから」が34%、「重症化率や致死率が季節性インフルエンザより高いとみられるから」が32%で同率1位となりました。

図④  法的位置づけを下げることに『反対』の理由

sheet4.png

さて、『賛成』『反対』双方で多い理由をよくみると、共通している単語があります。

重症化」です。

『賛成』は「重症化しづらくなっている」、『反対』は「季節性インフルエンザよりは重症化率が高いとみられる」といった具合に、重症化率をどう捉えるかが、賛否を分けるポイントの1つになっていることが読み取れます。

これは、図②の男女年層別のグラフを見返してもうなずけます。
重症化率の低い若年層では『賛成』が多く、高い高年層では『反対』が多いという結果になっています。

もう少し細かいことを付け加えると、デルタ株流行時より今回の調査時期のオミクロン株流行時のほうが、全年層で重症化率が下がっていますが、その下がり方が若年層では大きかった一方、高年層ではそれほど大きくありませんでした。
つまり、全体的な重症化率は下がっていたものの、若年層と高年層の差は以前より開いていたのです。

図②・図③・図④を考え合わせると、その人の状況によって「重症化率も下がったのだからもういいだろう」と思うか、「まだまだ心配だ」と思うかが、賛否が分かれる一因になったと推察できます。

新型コロナは、性別や業種別など社会のさまざまな分野で分断を促したとも言われていますが、これもそのひとつなのかもしれません。
この調査は半年前の結果ではありますが、「5類」への引き下げに不安を抱く人が少なからず存在する事実は、心にとめておくべきでしょう。

このほか、「放送研究と調査 2023年5月号」では、過去の調査結果との比較も含めて、新型コロナに関する世論調査の結果をさまざまな角度から分析しています。
前年より人出が増えたことで、コロナ禍で影響を受けた自営業者などに回復傾向はみられたのでしょうか?
以前より外出しやすくなったことで、男性より強かった女性たちのストレスに変化はあったのでしょうか?

ぜひご覧ください。

調査あれこれ 2023年04月26日 (水)

世論調査のデータをもっと身近に!研究員が解説する「メディア利用の生活時間調査」#474

世論調査部 (視聴者調査) 築比地真理

文研では、さまざまな世論調査を行っています。
世論調査の結果は、文研が発刊している月刊誌「放送研究と調査」でも公表しているのですが、「メディア利用の生活時間調査」では、世論調査をもっと身近に感じてもらえるように、調査の特設サイトを作っています。

サイトでは、調査結果をオープンデータとして公表しており、誰でもデータを使えるようになっています。しかし、そのデータの量は膨大。データを公表するだけでは、世論調査を身近に感じてもらうには難しい・・・そこで、データを読み解くためのヒントや注目ポイントを、調査に携わる研究員が「データにまつわる話」としてわかりやすくお伝えしています。

この調査は、【テレビ画面】【スマホ・携帯】【PC・タブレット】の3つの機器(デバイス)が、生活の中でどのように使われているかを「時刻別」に捉えるという調査で、「どのような人が」「いつ」「どのデバイスを」「どのように」使っているかなど、バラエティーに富んだ分析ができるのが最大の特徴です。

site1.png

【「メディア利用の生活時間調査」特設サイト データにまつわる話】


どのデータに着目して分析していくかは、研究員によって実にさまざま。
今回は、ことし4月に公開された3本のコラムを紹介します。

まずは、20代の「朝の時間」に着目したコラムです。
朝の時間というと、ニュースや朝ドラなど、テレビを見ながら過ごす人もいるかと思いますが、テレビをあまり見ない20代にとっては、どうやら朝の「定番」はテレビではないようです。彼らは、どんなことをして朝の時間を過ごしているのか、もはや若者の生活とは切り離すことのできない「スマホ」との関係に迫りました。
【コラム】20代 朝は何をして過ごしている?(築比地研究員)

2つ目のコラムでは、「夜の時間」のテレビ視聴やスマホ利用に注目し、20代を中心に分析しています。
20代は、夜の時間でもスマホ利用がテレビ視聴を上回り、就寝直前までスマホを見ている人も多いようです。就寝前の時間にスマホでどのようなものを見ているのかが分かります。
【コラム】あなたは寝る前に、テレビを見る?スマホを使う? (舟越研究員)

最後は、1日5時間以上スマホを使う「ヘビーユーザー」の実態に注目したコラムです。
スマホのヘビーユーザーというと、どのような人物像を思い描きますか?私は、若年層に違いないと思っていましたが、決してそうではないことが分かりました。
ヘビーユーザーは、スマホでどのようなことをしているのかにも注目です。
【コラム】スマホのヘビーユーザーは何をしている?(伊藤研究員)

今回は3人の研究員のコラムを紹介しましたが、コラムは今後も順次更新していく予定です。
はじめは膨大なデータの集まりのように感じたものも、コラムを通じてひとつひとつ読み解いていくと、自分の身近なことだと感じていただけるかもしれません。

また、特設サイトでは、データ可視化にも力を入れています。

site2.png

【「メディア利用の生活時間調査」特設サイト グラフページ】

サイトにはこのような棒グラフがあり、上部の「年層」「性別」「曜日」のタブや、下部の「時刻」のスライダーで条件を設定すると、3つのデバイスを使っている人の割合や、行動の内訳を色分けして示した棒グラフが瞬時に形成されます。2つの棒グラフ同士を見比べることもできるので、自分のメディア利用行動と比較してみるのも楽しいですね。ぜひ、サイトを訪ねて世論調査のデータに触れてみてくださいね。
メディア利用の生活時間調査|NHK放送文化研究所

tsuihiji.jpg

【築比地 真理】
2014年NHK入局。高知放送局・札幌放送局で番組編成などを担当し、2020年より放送文化研究所にて幼児視聴率調査や国民生活時間調査・メディア利用の生活時間調査などに関わる。名前の読み方は「ついひじ」

調査あれこれ 2023年04月13日 (木)

「災害復興法学」が教えてくれたこと【研究員の気づき】 #473

メディア研究部 (メディア動向)中丸憲一

みなさんは「災害復興法学」をご存じだろうか。東日本大震災から約1年間に、被災地で弁護士が実施した4万件以上の無料法律相談がきっかけとなり生まれた。今回は、避難により命を守った後、「さらに生き抜くため」に必要な法律や制度に関する知識を与えてくれる、この新しい防災の考え方について取り上げたい。

【災害復興法学とは何か】
 3月13日。東日本大震災から12年が経過して間もないタイミングで、都内で講演会が行われた。講演したのは岡本正弁護士。東日本大震災から約1年間に被災地で弁護士が実施した4万件以上の無料法律相談の内容を分析し、その結果をもとに「災害復興法学」を創設した。

okamoto_1_W_edited.jpg講演する岡本弁護士

 「災害復興法学」とはどんなものなのか。岡本弁護士は以下の4つに分類している。
① 法律相談の事例から被災者のニーズを集め、傾向や課題を分析すること。
② 既存の制度や法律の課題を見つけ、法改正などの政策提言をすること。
③ 将来の災害に備えて、新たな制度が生まれる過程を記録し、政策の手法を伝承すること。
④ 災害時に備えて、「生活再建制度の知識」を習得するための防災教育を行うこと。

これを見て、私は「災害復興法学」を、「的確・迅速な避難により命を守る」という段階を無事に乗り越えた後、「さらに生き抜くため」に必要な法律や制度、知識を与えてくれるものだと理解した。

kouenkai1_2_W_edited.jpg講演会の様子

【大事なのは「生き残った後に必要な制度」を知ること】
 講演会で岡本弁護士は、まず、「被災した後の住まいや生活の再建に必要な知識」から話し始めた。▼生活再建の第一歩は「罹災(りさい)証明書」。▼通帳やカードなしでも預貯金は引き出せる。▼家の権利証がなくなっても権利はなくならない。▼保険証をなくしても保険診療を受けられる、など。ほかにも「被災後のローンについての知識」や「被災者生活再建支援金」、「災害弔慰金」の受給など、ポイントは多数あった。私は特に、「通帳やカード、権利証、保険証がなくてもなんとかなる」という部分が重要だと感じた。過去の津波災害では、いったん避難した後、貴重品を取りに戻ったり、自宅から持ち出すのに時間がかかったりして津波に巻き込まれ、命を落とすケースが相次いだ。こうした知識を知っておくだけで、「素早い避難」につながり命を守ることができる。その上で、必要な制度や知識を知っておくことで、被災後を生き抜くことができる。この内容は、岡本弁護士の著書「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」に詳しい。

book1_3_W_edited.jpg

【目を見張った“あるデータ”】
 次に、講演では、東日本大震災の被災地で弁護士が実施した無料法律相談の話に移った。紹介されたのは、岩手県陸前高田市と宮城県石巻市、それに仙台市青葉区のいずれも震災から約1年分のデータだ。

kouenkai2_4_W_edited.jpg講演会の様子

このうち津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市と宮城県石巻市については、マスコミも報道を続け、私自身も災害担当記者時代、何度も現地入りした。しかし、私が目を見張ったのは、仙台市青葉区で行われた無料法律相談のデータだ。仙台市のうち沿岸部は津波で大きな被害を受けたが、青葉区は最大震度6弱と地震の揺れは強かったものの、海に面していないため津波の被害は受けていない。だが、約1100人が弁護士に自分たちが直面する切実な問題を相談していた。

shiryou_5.jpg仙台市青葉区の相談内容 提供:岡本正弁護士

データを詳しく見ていく。それによると、▼借家をめぐるトラブルの「不動産賃貸借(借家)」が最も多く33.5%、次いで▼瓦や石垣、ブロック塀などの落下、倒壊による損害賠償をめぐるトラブルである「工作物責任・相隣関係(妨害排除・予防・損害賠償)」が15.6%などとなっている。

【被災後に直面した予想外のトラブルとは】
こうしたトラブルは、例えばどんな内容だったのか。岡本弁護士の著書「災害復興法学」から引用する。
まず、「不動産賃貸借(借家)」の事例である。
(一部中略)
「住んでいる築30年の一戸建ては、幸い、建物自体の損壊は、見た目上はほとんどなく、電気、水道、ガスといったインフラは思いのほか早く復旧した。ただ、風呂が壊れ今も使えない。4月半ばになって、大家から連絡がきた。『一戸建てはもう古く、地震や度重なる余震で修繕しなければいけない箇所が多い。もし完全に修繕するとなれば、200万円程度かかる。とても費用は出せない。1か月くらいのうちに出て行ってもらえないだろうか。』もし正式に退去請求があったら、どうしたらよいだろうか」
次に、「工作物責任・相隣関係(妨害排除・予防・損害賠償)」の事例である。
(一部中略)
「新築したばかりの2階建て一軒家の目立った被害が、瓦屋根の一部破損で済んだことは幸運だったのかもしれない。4月7日、そろそろ眠りにつこうかと思ったその瞬間。凄まじい揺れが襲ってきた。あの時と同じか、いや、それ以上か。大地震が再び宮城を襲った。その後も各地で余震が続く。4月11日の午後5時過ぎ。再び強い地震が襲った。庭先でドゴッという音。瓦が落ちた。2階の瓦屋根が、隣家のトタンでできたガレージの屋根に降りかかり、大穴を開けた。そして、白いセダン乗用車のフロントガラスを破損してしまったのだ。しばらくして隣人からガレージの修理見積書ができあがったので、全額を弁償してほしいとの連絡が入った。請求金額は80万円だった」

book2_6_W_edited.jpg

岡本弁護士は、著書「災害復興法学」で、こうした事例について、▼当事者の言い分にはいずれも一定の理があり「100か0か」という一刀両断の解決が難しいこと、▼「被災者どうし」「ご近所どうし」の悩み事であることなどを特徴としてあげている。その上で、当事者間での「話し合い」で解決することが望まれる事案で、被災者どうしの紛争が頻発することは地域全体の復興を妨げかねないなどと指摘している。

【「災害復興法学」が教えてくれたこと】
 震災当時を思い返してみた。あの時、私は災害担当記者として、連日、被災地の取材に駆け回っていたが、目は常に沿岸部を向いていた。仙台市青葉区については、震災直後、東北最大の歓楽街、国分町が停電で真っ暗になっていたのに驚いたが、このほかは、沿岸部の被害が凄まじすぎて、内陸部に目を向ける余裕は正直言ってなかった。また、史上最悪レベルの原発事故や首都圏の計画停電、富士山直下を震源とする大地震など、経験したことのない異常事態が次々に起きる中で、内陸部に目を向け、すべてを伝えるのはかなり難しかったと思う。しかし、弁護士たちは、それに向き合い、話を聞き、一緒に悩んでいた。そこから見えてきたのは、借家だが長年住んできた家を失う人や、自宅に被害を受け、絶え間ない余震という自然現象による不可抗力で、思いもよらない新たな負債を抱えた人たちの苦悩だった。
 今、メディアが防災を取り上げるときに合言葉のように出てくるのが「自分ごととして考える」。これは、避難など命を守る行動を素早く起こすためのインセンティブとして使われることが多い。しかしこれに加え、災害を生きのびた後には生活をどう再建するかという課題に直面し、被害が比較的軽微で済んだとしても生活を脅かす予想外の事態が起きうる。この言葉は、そうした事態に備える上でも用いることができると感じた。 これらはすべて、「災害復興法学」が教えてくれたことである。

 nakamaru2.jpg

 【中丸憲一】
1998年NHK入局。
盛岡局、仙台局、高知局、報道局社会部、災害・気象センターで主に災害や環境の取材・デスク業務を担当。
2022年から放送文化研究所で主任研究員として災害や環境をテーマに研究。

★筆者が書いた、こちらの記事もあわせてお読みください
#460 東日本大震災12年「何が変わり、何が変わらないのか」~現地より~
#456「関東大震災100年」 震災の「警鐘」をいかに受け止めるか

調査あれこれ 2023年04月11日 (火)

統一地方選挙で見えてきたもの~自公政権の経年劣化か?~ 【研究員の視点】#472

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 3月21日に訪問先のインドからのウクライナ電撃訪問を果たし、ゼレンスキー大統領との対面会談を果たした岸田総理大臣。その1週間後の28日には令和5年度予算も成立し、胸を張って統一地方選挙の前半戦に臨んだはずでした。

0411_1_W_edited.jpg

 しかし、41道府県議会議員選挙や9道府県知事選挙などの結果を見ると、目立ったのは自民党の底力よりも日本維新の会の勢いでした。報道各社の受け止めには「維新、全国政党化に弾み」「全国へ足がかり」といったものが目立ちました。

 確かに41道府県議選の結果集計を政党ごとの獲得議席で見ると、日本維新の会(大阪維新の会を含む)は前回4年前の2倍近くに増えました。これに対し自民党、公明党は前回と比べてほぼ横ばい、立憲民主党は増えましたが、共産党は減りました。

 ここから浮かび上がるものをどう見るかです。私は日本維新の会が近畿圏一円に勢力を拡大しているのは確かだが、全国政党への道のりはまだまだ険しいと見ています。大阪府知事、大阪市長、奈良県知事を押さえ、大阪府議会と大阪市議会で共に過半数を制しました。そして首都圏などでも議席を増やしていますが、全国を俯瞰して老舗の他党と比較すれば地域限定的です。

0411_2_W_edited.jpg 横山英幸 大阪市長   吉村洋文 大阪府知事

では、維新の会の勢いを見せつけた背景には何があるのでしょうか。他の国政野党が躍進できなかったのは確かですが、国政与党の自民・公明も地力の強さを感じさせるものがありませんでした。自民党と公明党が衆参両院で安定した勢力を維持するために連立を組んでから20年以上になります。その間に民主党政権の時期がありましたが、安倍長期政権を支えたのも自公の協力でした。

 こうして見てきた時、今回の選挙結果で私が最も注目したのは、大阪市議会で維新の会が初めて過半数を制したことです。これまで公明党は維新の会の市長が進める大阪市政の運営に協力する立場をとり、それによって衆議院選挙の際に大阪府と兵庫県の6つの小選挙区で維新の会との競合を避けて議席を確保してきました。

 地方選挙の結果を受けて、この関係が崩れると国政で何が起きるかです。自民党幹部の一人は「公明党が近畿で小選挙区議席の確保が難しくなると、他の地域で自民党に小選挙区議席を譲ってくれと迫ってくるかもしれない」と警戒感を口にします。

 公明党幹部に取材すると「国政の安定のために、我々が候補者を立てない多数の小選挙区で自民党の候補者を応援しているのだから、もう少しこちらに小選挙区議席を回してくれてもいいはずだ」といった本音が漏れてきます。

 一票の格差是正のため、去年の暮れに公職選挙法が改正され、衆議院の小選挙区の線引きを変更した10増10減の新しい区割りが次の総選挙から導入されます。これに備える中で、公明党は都市部での議席確保のために自民党との調整が整わなくても独自の候補を新たに擁立する動きを進めています。

 今回、日本維新の会が示した勢いの背景には、こうした自民党と公明党の連立与党内でのきしみ、言いかえれば「自公政権の経年劣化現象」が垣間見え始めたことがあるのかもしれません。

0411_3_W_edited.jpg

 日本維新の会の馬場代表は、9日夜の記者会見で「公明党との関係はリセットする」と述べ、独力での党勢拡大を目指す考えを表明しました。今後の政治の動きの中で、台風の目になりそうなことは確かです。

 そこで岸田内閣です。統一地方選挙前半戦の終盤4月7日(金)から投開票日9日(日)にかけてNHK月例電話世論調査が行われました。

☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか
  支持する   42%(対前月+1ポイント)
  支持しない  35%(対前月-5ポイント)

先月と比べて支持しないが5ポイント減ったのが目立ちますが、支持するは横ばいに近い変化で一気に上向く勢いはありません。41道府県議選の獲得議席で、与党の自民党と公明党がほぼ横ばいだったのと似ています。

 岸田総理は4月23日に行われる統一地方選挙後半戦と5つの衆参補欠選挙を乗り越えて5月19日~21日のG7広島サミットに臨み、6月の国会会期末の頃には先々を見据えた政局判断の時期を迎える腹積もりだという見方があります。

0411_4_W_edited.jpg

 ただ、岸田総理の足元で一気に上向く勢いが出ていないという点には注意が必要になるでしょう。5つの衆参補欠選挙の結果にもよりますが、年明け以降、盛んに強調している「異次元の少子化対策」も財源の裏付けが不透明なため、国民の多くが喝采をもって迎え入れるという状況にはなっていません。

 特に若い世代には「先にいろいろな手当ての給付を受けても、結局、後で政府に回収されるだけではないのか」という素朴な疑問や懸念があるようです。岸田総理は令和6年度の予算編成に向けて6月に示す骨太の方針で「少子化対策の大枠を示す」と繰り返していますが、その大枠で国民が納得するのかどうかは不透明です。

0411_5_W_edited.jpg

 岸田総理大臣の自民党総裁任期は来年9月までですので、先々のことを考える時間は十分にあります。とはいえ衆議院の10増10減の新しい区割りが国会で決まった後、「新しい民意の下で政治を行うべきだ」という声は政党関係者の間で次第に強まっています。

 岸田総理が自らを支える与党内の様子、そして野党各党の動きを見ながら、衆議院の解散・総選挙のタイミングを、いつ、どう判断するのか。これが次第に具体的な政治テーマになってきたようです。

 w_simadasan.jpg

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

調査あれこれ 2023年04月06日 (木)

調査からみたコネクテッドテレビの利用実態 ~テレビ画面で何を、どのように見ている?~【研究員の視点】#470

世論調査部(視聴者調査)平田明裕


地上波や衛星放送などの番組が楽しめるこれまでのテレビに、インターネットを接続することでより多くの動画コンテンツを視聴することが可能となりました。今後、インターネットに接続されたテレビ(コネクテッドテレビ)が普及し、テレビ画面でネット動画を視聴する人が広がると、テレビ画面の利用は変わるのでしょうか?今回は、「メディア利用の生活時間調査」の結果からテレビ画面で動画を視聴する人(以下「テレビ動画視聴者」。全体の6%)に焦点をあて、テレビ画面の利用実態や視聴状況を分析しました。

 テレビ動画視聴者 時刻別のテレビ画面利用(30分ごとの平均行為者率の積み上げ・月曜)
jikanbetu.png

 このグラフは、テレビ動画視聴者が1日の中でテレビ画面をどのように利用しているかを表したものです。0時から24時までの時刻別の行為者率(利用している人の割合)を積み上げたグラフになります。朝の時間帯にテレビ画面で見ているのは「リアルタイム」が圧倒的に多く、7時台は16%に達している一方で、「動画」は1%とほとんど見ていません。その後、午後の時間から夜間にかけて「動画」が増加して21時~22時には23%に達し、「リアルタイム」と同じくらいネット動画を見ていることがわかります。このように、朝の時間帯は「リアルタイム」が中心で、夕方から夜間にかけても「リアルタイム」が増加する一方で、夜間の遅い時間帯は「動画」の視聴が増えていくなど、テレビ動画視聴者は、時間帯によってテレビ画面で何を視聴するか、選択している様子がうかがえます。

 では、テレビ動画視聴者は具体的にどのような状況で、テレビ画面で動画を見ているのでしょうか?ほかのことをしながらテレビを見る「ながら」視聴と、テレビを見る行動だけの「専念」視聴に分けて時間量をみたのが、次のグラフです。「ながら」(51分)と「専念」(57分)は同じくらい、つまり、ほぼ5対5でした。「リアルタイム」の割合(「ながら」「専念」は6対4の割合)ほどではないですが、自分で選んで視聴する「動画」でも、「ながら」視聴が半数近くになる様子がみえてきました。

 テレビ動画視聴者 動画(テレビ)の時間量 ながら・専念(全員平均時間の積み上げ・月曜)
nagarasennen.png

 では、テレビ画面で動画を見ながら、どのような行動をしているのでしょうか?次のグラフはテレビ動画視聴者が動画視聴と同時に行っている行動をみたものです。最も多いのは、「食事」(21%)で、「SNS(スマホ)」(17%)、「身のまわりの用事」「家事」「会話おしゃべり」(いずれも14%)が続きます。スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事、身のまわりの用事、家事をしながら動画を見たり、スマホ携帯でのSNS利用や会話・おしゃべりなどコミュニケーションしながら動画を見たりするなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴していることがうかがえます。

テレビ動画視聴者 動画(テレビ)との重複行動 行為者率(1日)(上位5項目・月曜)

kouisharitsu.png

 ここまでみてきましたように、テレビ画面で動画を視聴する人は、朝の時間帯はリアルタイムのテレビを見る一方で、夜の遅い時間帯はYouTubeやAmazonプライム・ビデオなどの動画コンテンツを見るなど、時間帯によってリアルタイム視聴とネット動画視聴を使い分けています。また、スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事中やスマホでSNSをしながらなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴している様子がみえてきました。テレビにインターネットを接続したコネクテッドテレビという新しいメディア環境により、人々は、自分の嗜好(しこう)や生活シーンに合わせて、好きなコンテンツを好きなように見ることができるようになりつつあるのかもしれません。今回のテレビ動画視聴者は全体の6%とまだ少数派ですが、今後、コネクテッドテレビが普及しテレビ動画視聴者が増加すると、こうした視聴スタイルが広がっていくのではないかと考えられます。

放送研究と調査2023年3月号」では、そのほかに、テレビ動画視聴者はスマホ携帯やPCタブレットで動画をどのくらい見ているかについても分析しています。ぜひご覧ください!

調査あれこれ 2023年04月05日 (水)

#469 中高生の学校生活、どんな感じ? ~第6回「中学生・高校生の生活と意識調査」から~

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

scool1_W_edited.jpg

 いよいよ新年度がスタート!新たな友だちや先生との出会いに、期待と不安の入り交じった気持ちでいる中高生の皆さんも多いのではないでしょうか。新しい教科書やノートで心機一転、「勉強頑張るぞ~」と張り切っている人もいるかもしれませんね。
 ところで、いまどきの中高生は、学校や先生、勉強についてどんなふうに感じているのでしょうか。
 文研が昨夏、全国の中高生を対象に実施した世論調査1)の結果をみると、学校が『楽しい(とても+まあ)』と答えたのは、中学生、高校生ともにおよそ9割を占めています。楽しい理由として、「友だちと話したり一緒に何かしたりすること」を挙げた中高生は7割台に上ります。

学校は楽しいか
scool2.jpg

 学校といえば、部活動を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「部活動に入っている」と答えたのは、中学生が8割、高校生が7割。このうち、部活動に『満足している(とても+まあ)』という人は、中高ともに9割近くでした。
 それでは先生に対しては、どう思っているのでしょうか?担任の先生が、自分のことを『わかってくれていると思う(よく+まあ)』と答えたのは、中高ともにおよそ8割。身近な担任の先生が自分を理解してくれていたら、安心して学校生活がおくれそうですね。

担任の先生は、自分のことをわかってくれているか
scool3.jpg

 さて、勉強についてですが、「一生懸命勉強すれば、将来よい暮らしができるようになると思う」中高生は7割台に上ります。多くの子どもたちが、勉強を頑張れば、豊かな将来が期待できると考えているようです。また、自分の将来に『期待している(とても+ある程度)』という中高生は6割台で、明るい将来展望を思い描いている様子がうかがえます。

「一生懸命勉強すれば、将来よい暮らしができるようになる」と思うか
scool4.jpg

 ただ、進学意向についてみると、子どもたちが考える将来像は、親の状況によって少し異なっているようです。 進学の最終目標について尋ねたところ、親の学歴や生活程度2)が高いほど「大学・大学院まで」進学したいという中高生が多くなっています。

進学の最終目標(父親の学歴別)
scool5.jpg
進学の最終目標(父親の生活程度別)
scool6.jpg

 日本は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べて教育費に占める家計負担の割合が高く、特に高校生・大学生のいる家庭の家計に教育費が重くのしかかっています。学費の負担ができずに大学進学をあきらめる子どもたちが相当数いることも指摘されています。子どもたちの将来が、親の学歴や経済状況によって左右されることがないように、格差の是正や教育費用の負担についての議論を高めていくことも必要ではないでしょうか。

中学生・高校生の生活と意識調査2022の結果は、こちらから!↓↓↓
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20221216_1.html


1) 第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」

2) 生活程度については、父母を対象にした調査で、「上」から「下」まで5段階で尋ねているが、このうち「上」と「中の上」を「上」、「中の中」を「中」、「下」と「中の下」を「下」としてまとめ、分析を行った。

調査あれこれ 2023年03月16日 (木)

#462 マスク着用 「個人の判断」に 顔を隠したくて着ける人ってどのくらいいるの?~「新型コロナウイルス感染症に関する世論調査(第3回)」の結果から~

世論調査部(社会調査) 小林利行

新型コロナウイルスの感染が、国内で初めて確認されてから3年あまり。

この間、マスクは多くの人の必須アイテムとなっていますが、政府は3月13日からマスク着用の方針を大きく変えました。

医療機関を受診するときや混んだ電車やバスに乗るときなどは着用を推奨するものの、それ以外の場所での着用は個人の判断に委ねるとしたのです。

皆さんはどうしているでしょうか?

文研では2022年11月に新型コロナウイルスに関する世論調査を実施しました。

その中には今回のような状況を想定した質問もあります。

図①は、感染拡大が収束して、屋内や人混みでマスクの着用が求められなくなったとしたらどうするかと尋ねた結果です。

図①  着用が求められなくなったときマスクをどうするか?

figure1_4.png

1番多いのは「感染拡大前よりは着ける機会を多くする」で47%、2番目は「できるだけ着けたままにする」で27%でした。

一方、「以前のように外す」は23%にとどまっています。

調査時点と今の感染状況や、この質問の前提と政府のマスク推奨の基準は少し異なりますが、結果をみる限り、すぐさま多くの人が以前のようにマスクを外すことにはならないようです。

考えてみれば、3月12日以前も、会話がなければ基本的に屋外でマスクを着ける必要はないとされていましたが、外でも着けていた人のほうが多かった印象があります。

この調査では、「感染拡大前よりは着ける機会を多くする」と「できるだけ着けたままにする」と答えた人に対して、その理由も尋ねています(図②)。

図②  求められなくなってもマスクを着け続けるのはなぜか 〈回答者1,671人〉

figure2_4png.png

ご覧のように、圧倒的多数の人が「感染症対策など衛生上の理由から」と回答しています。

ただ、「素顔をさらしたくないなど見た目の理由から」という人も7%います。

男女年層別に分けてみました(図③)。

図③  求められなくなってもマスクを着け続けるのはなぜか
(男女年層別)
figure3_4.png

いずれの年層も「衛生上の理由から」が多数を占めていますが、18歳~39歳の男女では、「素顔をさらしたくないから」と回答している人も16%います。

この人たちを、18歳~39歳全体に占める割合でみても、男性11%、女性13%となります。

若い男女の10人に1人強が、顔を隠すなどの目的でマスクを着け続けたいという意向を示していることがわかります。

今回の調査は、コロナ禍をきっかけにマスクの意外な着用目的を明らかにしたようです。

調査の他の結果についても「コロナ禍3年 社会にもたらした影響-NHK」で公開していますので、ぜひご覧になってみてください。

また、「放送研究と調査 2023年5月号」では、3年にわたるコロナ禍によって、人々の意識や暮らしがどう変わったかなどについて詳しく紹介しますので、ご期待ください。

調査あれこれ 2023年03月14日 (火)

#461 岸田内閣支持率 若干回復の先は ~どうしのぐ統一地方選・統一補選~

放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 新年度予算案の成立に向け国会で答弁に立っている岸田総理大臣が、この日は東京ドームのマウンドにも立ちました。WBC・ワールドベースボールクラシックの1次リーグ、ライバル対決として注目された日本対韓国の一戦での始球式です。

始球式 出典:首相官邸ホームページ 出典:首相官邸ホームページ (https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202303/10wbc.html)

 侍ジャパンの栗山監督がキャッチャーを務め、高校球児だったという岸田総理の投球をワンバウンドで捕球。野党側の厳しい追及や質問を受ける予算委員会では見せることがない岸田総理の笑みがこぼれました。

 この3月10日(金)から翌々日12日(日)にかけて、東日本大震災から12年目の3・11をはさんでNHK月例電話世論調査が行われました。

☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。

 支持する  41%(対前月+5ポイント)
 支持しない  40%(対前月-1ポイント)

統計上の誤差もありますから支持と不支持が横並びと見た方が良いのかもしれません。それでも数字の上で支持が不支持を上回ったのは去年の8月以来7か月ぶりです。

「岸田内閣を支持する」と答えた人の割合を与党支持者、野党支持者、無党派の別に比べてみるとこうなります。

 与党支持者  69%(対前月+9ポイント)
 野党支持者  19%(対前月+2ポイント)
 無党派  24%(対前月+6ポイント)

 去年の8月以降の支持率低迷の期間は特に与党支持者(自民党支持者+公明党支持者)の支持率が陰っていたのですが、この1か月は上向きました。予算委員会の審議がストップするような大きな政治的トラブルが浮上せず、岸田総理が物価上昇を超える賃上げを呼び掛けたことに一部の企業が呼応し、一定の評価につながっている面もあるようです。

 さらには3月に入って韓国のユン・ソンニョル政権が、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、解決に向けた判断を示してきたことも追い風になっているようです。この韓国政府の判断は、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下にある財団が支払いを行うとするものです。

岸田首相/韓国 ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領

 ユン・ソンニョル大統領はアメリカのバイデン政権の強い働きかけを受け、日本との関係を改善するために、問題の解決を急いだと伝えられています。地域の安全保障環境を不安定化させている北朝鮮に向き合うには、日米韓の連携強化が最重要ということは岸田総理が繰り返し主張してきたことでもあります。「待っていました」といったところでしょう。

 しかしながら、こうした好材料の半面で肝心要の国民との対話が深まっているとは言えません。最も特徴的なのが昨年末に打ち出した5年間の防衛費の大幅増額問題です。

☆あなたは、防衛費の増額についての政府の説明が、十分だと思いますか。不十分だと思いますか。

 十分だ 16% < 不十分だ 66%

3分の2が不十分だと感じているという数字は、岸田総理をはじめとする政府関係者の言葉が国民に届いていないことを端的に示しています。

 国会審議を通じて「巡航ミサイル・トマホークを400発購入する予定」といった断片的な情報は出てきました。しかし、防衛費の水準を5年でGDP(国内総生産)比2%に引き上げるという判断が、どういう積算に基づいたものなのかは依然として不透明です。

巡航ミサイルトマホーク(資料) 巡航ミサイル トマホーク(資料)

 論戦の焦点になっている「反撃能力」つまり敵基地を攻撃できる能力を抑止力として保有することについても不明確です。政府の答弁は「これまでと同様の専守防衛の範囲内だ」と繰り返すだけで、一向に説得力が増しません。新たな攻撃的装備を保有するならば、新たな歯止めの仕組みも備えないことには「専守防衛」は空念仏になってしまいます。

 ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、安全保障に対する国民の関心が高まったとはいえ、勢いで物事を進める姿は好ましいものではありません。平和憲法を掲げる日本にふさわしい国防政策、自衛隊の運用をより多くの国民に納得してもらうことが重要です。そうでなければ信頼は増しません。

☆岸田総理大臣は、将来的な子ども予算の倍増を掲げる一方、「数字ありきではない」として、まず政策を整理し、大枠を示すとしています。あなたは、政府の少子化対策に期待していますか。期待していませんか。

 期待している 39% < 期待していない 56%

このように岸田総理が力を込めて語る少子化対策についても、国民の受け止めは今一つです。特に気になるのは、まさに子育て世代にあたる18歳~39歳の回答が否定的なことです。(⇒期待している39%、期待していない66%)

 この背景には、岸田総理が通常国会冒頭の施政方針演説で総論は高く掲げたものの、中身の各論については「6月の骨太方針までに大枠を提示します」という所でストップしたままになっているという問題があります。

 4月には統一地方選挙、そして合わせて5つの衆参両院補欠選挙が控えています。地域にもよりますが、多くの人が現在の政治を見つめながら投票の機会を待つ中で、「具体的なことは後で」という姿勢には厳しい目が向けられて当然です。ここをどうしのぐかは大きな課題です。

 3月は岸田内閣の支持率が若干上向いたとはいえ、今後も一進一退が続く可能性はあります。5月のG7広島サミットを舞台に「外交・安全保障の岸田」をアピールしたいのだろうと思いますが、そのためには内を固める必要があります。

 国民の信頼を得られてこその外交・安全保障です。防衛費に関する一層の説明、少子化対策の具体的な柱建ての提示といった課題への向き合い方が、政権の今後を左右するように思います。

調査あれこれ 2023年03月07日 (火)

#459 WBC直前企画② 侍ジャパンと視聴率

計画管理部(計画) 斉藤孝信

 3月9日(木)に日本が「ワールドベースボールクラシック」の初戦を迎えるのに合わせてお届けしている「視聴率からみるプロ野球平成史」の第2弾です!

 前回のブログでは、関東地方での6月調査週のプロ野球中継の視聴率が、セ・パ交流戦の開始や球団再編のあった"平成17年"を境に減少したことをお話ししました。 では、WBCのように、日本代表が世界に挑んだ試合の視聴率はどうだったのでしょうか。 まずは、前回お見せした6月視聴率調査のグラフに、同じ年の11月調査週に行われた国際試合の視聴率(各年で最も高かった試合)を重ねてみます。
※視聴率は他のチャンネルで放送されている番組の影響も受けるので、両調査の結果を単純に比較できるわけではありません。

プロ野球視聴率の平成史

 6月、すなわち国内のレギュラーシーズン中の中継の視聴率が平成17年を境に減少したのに比べ、11月に行われた国際試合は、平成24年にも9.2%、平成27年には10.1%と、よく見られていました。
 ふた桁となった平成27年は、「世界野球プレミア12」のベネズエラ戦。日本は、日本ハムの大谷、巨人の澤村、菅野、坂本、ヤクルトの山田、横浜の筒香、西武の秋山などの豪華メンバー。特にこの試合は、8回の裏から9回裏まで3度の逆転が起きる名勝負となりました。
 この試合の男女年層別の視聴率を、参考として同年6月に最もよく見られた「日本ハム対巨人」のデータと見比べてみます。前提として、ベネズエラ戦がよく見られたのは、日曜日の夜だったという要素もあるかもしれません。
 男女年層別にみると、いずれも男性60歳以上が15%超で全体より高く、女性20代以下が2~3%程度で全体より低いという傾向は同じです。一方で、男性50代以下と女性30~50代では、日米野球のほうが格段によく見られていました。

平成27年 世界野球プレミア12の男女年層別視聴率(関東)

 平成の国際試合で最も高かった平成14年「日米野球第2戦」についてもみてみましょう。
 このシリーズには、前年にMLBでMVPと新人王に輝いたイチロー選手がMLB代表の一員として凱旋。そのほかにもジャイアンツのホームラン王バリー・ボンズや、ヤンキースの看板選手・バーニー・ウイリアムズ、ドジャースの抑えの切り札ガニエなど、スター選手が名を連ね、イチロー選手を通じてMLBを見るようになったファンにとっては「そんな大物が来るの!?」と驚きと喜びの絶頂でした。迎え撃つ日本代表も、のちにアメリカに渡ることになる"W松井(秀喜、稼頭央)、岩隈、上原、福留など、各球団のトップ選手ぞろい。第2戦では日本が8対2で勝ちました。
 この試合の男女年層別の視聴率も、参考として同年6月に最もよく見られた「ヤクルト対巨人」のデータと見比べてみます。
 どちらも全体では10%を超えてよく見られ、男性60歳以上が20%超で全体より高く、女性20代以下が5~6%程度で全体より低いという傾向は同じですが、男性20代以下と女性30~50代では、日米野球のほうがよく見られていました。
 若い男性や、女性が、「日本が世界を相手に挑む国際的な試合をよく見る」というのは、以前、サッカーW杯について考えたブログで紹介しましたが、ここでも共通した傾向が浮かび上がってきます。

平成14年 日米野球第2戦の男女年層別視聴率(関東)

 今回のWBCも、まさに「日本が世界を相手に挑む国際的な試合」です。これまでの大会ではなかなかMLBのトップ選手が参加できなかった各国代表も、今回はそうそうたる顔ぶれがそろい、"本気勝負"のムードが満ち満ちています。そして日本代表は、平成14年のイチロー選手と同じように、いまやMLBの看板選手になった大谷選手の凱旋大会でもあるわけですから、これは、いやが応にも盛り上がるのではないでしょうか!?
 プレーボールが楽しみで仕方ありません!


筆者が書いたこちらのブログも、あわせてお読みください!
#435 視聴率でみる"大河ドラマ平成史"

調査あれこれ 2023年03月06日 (月)

#458 WBC直前企画① 視聴率でみる日本プロ野球平成史

計画管理部(計画) 斉藤孝信

 3月9日(木)、野球の世界大会「ワールドベースボールクラシック」で日本が初戦を迎えます。過去2度優勝の日本は、今回、MLBで活躍中の大谷選手やダルビッシュ選手、去年史上最年少で打撃三冠王に輝いたヤクルトの村上選手も参加し、非常に楽しみですね!

 選手たちへのエールの意味も込めまして、今回は、文研の過去の視聴率調査の結果から、「プロ野球」に注目して、①「国内のプロ野球平成史」、②「国際試合の平成史」の2回シリーズでお届けします。
 まずは、毎年6月第1週に実施している「全国個人視聴率調査」の関東地方のデータから、その週の夜間(18時以降)に地上波テレビで生中継された中で、各年最も視聴率の高かった試合をピックアップしてグラフにしてみます。

【プロ野球平成史】6月第1週に最もよく見られたプロ野球中継(関東)

 ご覧のように、大づかみに言うと、"右肩下がり"。平成16年までは10%を超えていましたが、その後は5%前後となる年が多くなりました。
 最も高かったのは平成2年の「巨人対中日」の16.9%です。
 この年は、前年の日本シリーズで近鉄を相手に3連敗からの4連勝で日本一に輝いた巨人が、開幕ダッシュに成功。5月8日以降は一度も首位の座を明け渡さずに独走し、優勝。つまり6月調査週にはすでに「巨人がぶっちぎりの好調」だったのです。
 ちなみに、この年の巨人の開幕戦オーダーは、1番ショート川相、2番セカンド篠塚、3番センタークロマティー、4番レフト原、5番サード岡崎、6番ライトブラウン、7番ファースト駒田、8番キャッチャー中尾、9番ピッチャー斎藤。当時野球少年だった筆者には、涙がでるほどに懐かしい顔ぶれです...。
 次いで、「阪神対巨人」が16.8%だった平成11年は、中日が開幕11連勝でスタートダッシュ。出遅れた巨人が、ルーキーの上原投手の活躍もあり、夏場に猛追するシーズンでした。すなわち6月は「巨人がここから巻き返すぞ」という時点でした(結果的には、首位中日に1.5ゲーム差まで迫りましたが、あと一歩届かず2位)。
 平成12年は、前年に熾烈な優勝争いを繰り広げた「巨人対中日」の15.6%。そこまで3年連続で優勝を逃していた巨人はシーズンオフに大補強を行い、ダイエーから工藤、広島から江藤を、それぞれFAで獲得。松井、江藤、清原、仁志、清水などの大物選手がずらりと並んだ打線は、西暦2000年にちなんで"ミレニアム打線"とも呼ばれました。6月はこの大補強が功を奏して、「巨人が混戦から頭ひとつ抜け出した」時期でした。
 このように、トップ3はいずれも「巨人が好調な6月」の巨人戦です。
 初めて視聴率が10%を割り込んだ平成17年。巨人は開幕4連敗でつまずき、主力選手の故障も相次いで、4月21日から6月2日までは最下位に低迷し続けました。つまり、前述の3年とは対照的に「巨人が絶不調の6月」だったわけです。
 そもそも地上波では巨人戦の中継が圧倒的に多かったですし、巨人が本拠地を置く関東のデータでは、"平成のプロ野球史"と言っても、どうしても"平成の巨人戦史"をみているようなものなので、「巨人が強ければ高くなるし、弱ければ低くなる」という平成前半の傾向は、ある意味で、当然なのかもしれません。
 しかし、平成17年以降の巨人は、14年間のうち11年はAクラス(3位以上)で、6度も優勝したにもかかわらず、視聴率がふたたび10%を超えることはありませんでした。もちろん、平成の前半に比べて、地上波での中継自体が減ったり、BSやCS、ネット動画サービスなど、視聴手段が多様化したりした影響もあるかもしれませんが、ここまでのデータでは、平成17年をひとつの大きな転換点として、"プロ野球テレビ観戦離れ"が進んだようにみえます。

 ではその"平成17年"、プロ野球にいったい何があったのでしょうか。
 まさにその年、セ・パ交流戦が始まっています。これまで(関東の巨人戦視聴者の目線で言えば)オールスター戦や日本シリーズくらいでしか見ることのできなかった、パ・リーグのチームや選手を目にする機会が一気に増えました。また、球団再編によって、宮城に新球団・楽天が誕生したのもこの年です。
 さらに、時は少し前後しますが、平成4年にはロッテが千葉に、平成5年に当時のダイエー(現ソフトバンク)が福岡に、平成16年には日本ハムが北海道に、それぞれ本拠地を移転。さらに、広島では平成21年に新球場がオープンしました。平成17年に生まれた楽天も含め、これらの球団が地元で多くのファンを獲得し、好成績も相まって、各地で応援熱が高まったことは皆様ご存じの通りです。
 すなわち、セ・パ交流戦開始や球団再編のあった"平成17年"を境に、パ・リーグや地方の球団の試合を見る機会が格段に増え、それによって、プロ野球の視聴や応援も、それまでの「野球といえば巨人」という状況から、大きく多様化を遂げたと言えるのではないでしょうか。
 そうした変化、とくに地方の盛り上がりが感じられるデータを、同じく6月の「全国個人視聴率調査」からご紹介します。まずは総合テレビ木曜日19:30~20:43の地方別視聴率です。平成29年と30年、総合テレビでは、木曜は19:30まで『ニュース7』を放送した後、各地域局のニュース前の20:43まで、北海道と中国地方では、他の地域とは別編成で、地元球団である広島と日本ハムの試合を中継しました。この時間帯の視聴率について、平成最後の5年間と、参考まで平成元年と15年のデータも合わせて表にしました。

総合テレビ 木曜19:30~20:43の地方別視聴率

 北海道では、平成30年は13%、平成29年は11%で、いずれも全体より高く、それまでの3年間よりも上昇しました。中国地方は、もともとこの時間帯の視聴率が比較的高めなので目立った上昇とまでは言えませんが、平成29年の11%は北海道同様に全体よりも高くなりました。

 総合テレビでは同様に、平成28年~30年の金曜も、20:00から、各地域局のニュース前の20:42まで、独自にプロ野球中継を放送していた地域がありますので、その時間帯の地方別視聴率もお示しします。

総合テレビ 金曜20:00~20:42の地方別視聴率

 この枠では、平成30年には北海道と中国地方で「広島対日本ハム」、平成29年には北海道で「日本ハム対巨人」、東北と中国地方で「楽天対広島」、九州地方で「ソフトバンク対阪神」、平成28年にも東北で「楽天対広島」が放送されました。
 平成29年の北海道と中国地方の11%は、とくに目を引きますね。日本ハムと広島はともに前年にリーグ優勝。まさに黄金期にあった広島では若い女性ファンも増え、"カープ女子"という流行語も生まれましたし、日本ハムはこの年が大谷選手の日本でのラストシーズンということにもなり、もともと巨人ファンも多いという土地柄もあって、多くの人が視聴したのではないでしょうか。
 なかなか10%に届かなくなった関東とは対照的に、ここ数年、地方によっては、地元球団の試合中継で視聴率が10%超となるというこの現象は、プロ野球の愛され方が多様化した平成を物語っているようにも思えます。
 そして今度のWBCには、そうした地方の球団からも多くの選手が日本代表に選ばれています。ソフトバンクの甲斐・近藤・周東選手には九州から、日本ハムの伊藤選手や、MLBからの凱旋となる大谷・ダルビッシュ選手には北海道から、広島の栗林選手には中国地方から、楽天の松井選手には東北から......、ひときわ大きな声援が送られるのではないかと、このデータをみていると感じます。
 次回は野球日本代表(侍ジャパン)の平成史を振り返ろうと思います。


筆者が書いたこちらのブログも、あわせてお読みください!
#429 大谷翔平選手、2年連続MVP受賞なるか!?