文研ブログ

調査あれこれ 2019年08月30日 (金)

#204 連携ジャーナリズムが挑む「ニュースの砂漠」と「ニュースのジャングル」

メディア研究部(海外メディア研究)青木紀美子


ニュースの砂漠?ニュースのジャングル?何やら言葉遊びのようですが・・アメリカのジャーナリズムが直面する危機をあらわした表現です。
デジタル化の波で地方の新聞が減り、記者の数も減り、地域に密着した取材発信がなくなった情報の空白地帯が増えているというのが「ニュースの砂漠」です。
一方で、市民の側からみると、さまざまな媒体が溶け込んだデジタル空間には不確かな情報や偽情報を含めて情報が氾濫し、必要な情報がどこにあるのか、何が信頼できる情報なのかが分かりにくい、情報の乱立状態になっているというのが「ニュースのジャングル」です。


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こうした情報の空白地帯「ニュースの砂漠」と情報の乱立状態「ニュースのジャングル」に立ち向かおうとする試みの一つがコラボレティブ・ジャーナリズム(Collaborative Journalism)です。
日本ではあまり耳にしない表現ですが、複数のメディアの協力(Collaboration)によって取材発信することで、アメリカでは調査報道(Investigative Journalism)や課題解決型のジャーナリズム(Solutions Journalism)などと並んで、取材報道の一つのあり方と位置づけられるようになっています。
私はこれを「連携ジャーナリズム」と訳してみました。広辞苑によると「連携」は「同じ目的を持つ者が互いに連絡をとり、協力し合って物事を行うこと」とあり、まさしくCollaborative JournalismのCollaborationが意味するところに近いと考えたためです。
アメリカの地域メディアの「連携ジャーナリズム」では、社会の課題解決など、目的を共有する複数のメディアが取材力と発信力を持ちより、相互に補完することによって空白を埋め、市民にとって信頼できる情報の一つの指標になることをめざしています。


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同じ業種だけではなく、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、オンラインと、多様なメディアが垣根を越えて集まり、規模の大小にかかわらず対等なパートナーとなるチームが増えています。また、取材するテーマを決めるところからメディアどうしで話し合い、あるいは、ともに市民の意見や要望を聞きとり、単発の記事で終わるのではなく継続的に連携する例が目立ちます。
地域ジャーナリズムの支援に力を入れる非営利財団Knight Foundationは、2019年は「ローカル連携の年(A Year of Local Collaboration)」 になると予想しました。では、実際にはどのようなメディアが参加した連携ジャーナリズムが行われ、どのような成果をあげているのでしょうか。「放送研究と調査7月号」の「アメリカで広がる 地域ジャーナリズムの連携とその可能性」でさまざまな具体例を紹介していますので、ご一読ください。