文研ブログ

調査あれこれ 2017年04月14日 (金)

#74 高齢者の生活はどう変わる? ~2015年NHK国民生活時間調査より~

世論調査部(視聴者調査) 吉藤昌代

先日、実家の父が70歳の誕生日を迎え、長年勤めた会社を退職しました。
父の会社は60歳が定年で、それ以降、父は契約社員として10年を過ごしてきました。
現役時代よりは働く時間を減らし夕方6時30分には帰宅していたようですが、それでも平日は仕事中心の生活を送っていたそうです。

平成28年度版 高齢社会白書(内閣府)によれば、就労を希望する60歳以上の割合は71.9%。理由はさまざまでしょうが、全体としては公的年金の支給開始年齢が引き上げられていることが大きな要因となり、実際に60歳を超えても働き続ける人は増加傾向にあります。
『60歳で定年退職したら、そのあとは悠々自適な毎日を送る』……
これまで当然のように思われていた日本の“老後の生活”は、変化の時を迎えているのです。

文研が5年ごとに実施している国民生活時間調査の結果からも、その変化を読み解くことができます。
下の表は、男性60代について、2010年と2015年の調査結果を比較し、差があった主な行動をまとめたものです。
(全員平均時間とは、その行動を行っていない人も含めた時間量の平均です。)

<男60代 2010年と2015年で変化のあった主な行動の時間量(平日)>
74-0414-11.png

男性60代では、前述の通り、定年後も仕事をする人が増えていることを背景に、5年前より仕事の時間が増えました。
このほかビデオ・HDD・DVDやインターネットの時間も増えています。
一方で、テレビと新聞にあてられていた時間がそれぞれ減少しています。
メディア環境の変化は今や60代にまで及んでいるのが分かります。

さて、冒頭の70歳の父ですが、退職後の毎日をどう過ごしているのか母に尋ねたところ、「とりあえずテレビの番人をしているわよ」との答えが返ってきました。

<50代以上のマスメディア接触、レジャー活動の時間量(平日)>
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生活時間調査の結果をみると、仕事などから離れ自由な時間が増える60代を境に、テレビなどのマスメディア接触の時間量は、男女とも70代後半まで年齢を重ねるごとに増加していきます。
父の生活の変化は70代男性の典型的な変化と言えますが、同調査では、スポーツや行楽・散策といったレジャー活動の時間量も、テレビには及ばないまでも年齢を重ねるごとに増え、70代前半がそのピークであることが分かっています。
健康で活動的な高齢者になってもらうべく、父にはテレビはほどほどに、まずは軽いウオーキングを始めるよう勧めたいと思います。

『放送研究と調査4月号』では、超高齢社会における高齢者の姿と生活の変化を、国民生活時間調査の結果をもとにさらに詳しく読み解いています。是非、ご覧ください。