文研ブログ

調査あれこれ 2016年11月04日 (金)

#52 『べっぴんさん』 シリーズ平均視聴率を、最初の1週間データで大胆予測!

メディア研究部(番組研究) 齋藤建作

近年、朝ドラ視聴率は何かと記事になります。
先月からの新番組『べっぴんさん』が始まると
「『べっぴんさん』初回、20%超えスタート」
「『べっぴんさん』第1週平均視聴率は20.0%!大台好スタート」
こんな具合。

その『べっぴんさん』、初回視聴率は21.6%(ビデオリサーチ・関東)。「初回は『あさが来た』よりいい数字」などと報じられました。

毎回朝ドラの新番組が始まると、きまって初回の視聴率がニュースになります。注目されるのはありがたいことですが、最初の回の視聴率がどれほど大事でしょうか。試しに、初回とその後のシリーズ平均視聴率が連動するかどうか、過去38作品の朝ドラについて確かめてみました。前作よりも初回が上がったから平均視聴率も上がるのでは?とか、初回が下がったから平均視聴率も下がるかも、などと予想したとしたら、その予想が当たったのは38回のうちで20回。つまり当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦(はっけ)ということ。うーん、これだと初回の結果で一喜一憂するのはちょっと早計。

最初の1回だけで先を占うのはさすがに無理があるとして、せめて最初1週間の平均だったらどうでしょう。初回と週平均とでどちらの方がシリーズ平均視聴率に似通っているのか、相関係数という数字で見てみましょう。相関係数は1に近いほど二つの数字の並びが似通っているというもの。下の表に示したように、初回とシリーズ平均だと0.583週平均とシリーズ平均だと0.642、ということで、やはり週平均の方がまだしも、ということが分かります。ただ、もう少しいい数字はないものか。

と、あれやこれや調べているうちに、いいものを発見しました。同じ最初の1週間分だけを集計した数字ですが、先を占うにはもっとよさそうなデータです。最初の1週間にその朝ドラを1回以上見た視聴世帯の比率、いわゆる「リーチ」です。表にまとめたように、朝ドラは全視聴世帯の概ね30%台の世帯に最初の1週間のうちに見られています。さて、この「第1週リーチ」はその後のシリーズ平均をどの程度占えそうなのでしょう。そこで相関係数を出してみると、0.828になりました。ぐっと改善です。

52-1104-1.png

それではいよいよ大胆予測。「第1週リーチ」から計算した『べっぴんさん』のシリーズ最終平均視聴率は20.2%!

ところで皆さんご存じの通り、初回がまずまずだった『べっぴんさん』ですが、その後は、
「NHK『べっぴんさん』初めて大台を割る18.3%」
「『べっぴんさん』第2週平均視聴率は19.8%…『まれ』以来大台割れ」
こんな記事が続いてはや1か月。10月の平均視聴率は20.1%! がんばれっ! 今後の健闘を祈りましょう!

さて宣伝です、『放送研究と調査』11月号に「【朝ドラ研究】 新番組が始まるとき ~視聴率による視聴行動の分析~」と題した論文を掲載しました。論文ではなにも、視聴率の当てっこをしているわけではありません。新番組が始まったとき視聴者にどのように見られたかがどれほど大事なのか、少々細かく分析してみました。あわせて今世紀最高視聴率を記録した『あさが来た』の視聴率分析も行っています。ぜひお読みください。