文研ブログ

調査あれこれ 2016年05月10日 (火)

#25 データで検証 災害への備え

月報5月号「震災5年 国民と被災地の意識 「防災とエネルギーに関する世論調査・2015」から

世論調査部(社会調査)原美和子

熊本地震は先月14日の最初の震度7の地震から3週間以上が経ちましたが、いまも余震が続き、1万3千人近くの人が避難しています。今回のブログは、文研が昨年行った地震や災害に関する世論調査についてご紹介します。

東日本大震災の発生から今年3月で5年となるのを前に、文研では昨年(2015年)12月、世論調査を実施し、震災発生前と比べた暮らしの変化、災害に対する意識や備え、それから原発に対する人びとの考えなどを調べました。

同様の調査は、2011年、2013年にも全国を対象に実施していて、震災から時を経る中での人びとの意識の動きをみることもできます。さらに今回は、震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島各県の調査相手の人数を増やすことで、全国調査との結果比較が可能な設計にして
、被災地での人びとの意識の特性の分析もおこないました。
主な調査結果については、
「放送研究と調査」5月号 震災5年 国民と被災地の意識 「防災とエネルギーに関する世論調査・2015」からに掲載していますが、このブログでは、「災害への備え」に関わる、ちょっと気になる調査結果をいくつかご紹介します。

「あなたのお宅には、家族全員が何日くらい過ごせる食料と飲料水がありますか」0510-1.jpg

全国の調査結果では、「3~6日」という人が最も多く46%でした。政府は、大災害に備えて最低でも3日分の食料・飲料水の確保を呼びかけていますが、その目標に達していない人(「まったくない」「1~2日分」と答えた人)が4割程度いました。南海トラフ巨大地震では被害が非常に広い範囲に及ぶおそれがあるため1週間分以上の家庭備蓄が必要とされています。あなたのお宅は大丈夫ですか?

「大きな災害が発生した際の住民同士の助け合いは、どの程度期待できますか」0510-2.jpg
全国の調査結果では、「大いに」と「ある程度」を合わせた『期待できる』が55%だったのに対し、「あまり」と「まったく」を合わせた『期待できない』は44%と半数近くにのぼりました。ちょっと心配な結果ですね。


さらに、もうひとつ見てみましょう。

「あなたは、災害時に自力で避難することができると思いますか」
この質問に「できない」と答えた人は全体では19%でした。しかし、男女年層別に細かくみると、下のグラフのようになりました。

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男性では年齢層によって大きな差はありませんが、女性の70歳以上で
42%と非常に高い割合になっているのです。これも災害時の大きな課題と言えそうです。

災害への備えの実態については、ほかにもさまざまな調査結果がありますので、関心がある方はぜひ、「放送研究と調査」5月号をご覧ください。みなさんのお宅の防災チェックにもなるかもしれません。