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2023年11月22日

調査あれこれ 2023年11月22日 (水)

まもなくCOP28がスタート!日本人は気候変動についてどう思ってる? ~ISSP国際比較調査「環境」から~【研究員の視点】#512

世論調査部(社会調査)村田ひろ子

 2023年11月末からUAE=アラブ首長国連邦で開かれる国連の気候変動対策の会議「COP28」では、国連の気候変動枠組条約に加盟するおよそ200か国が、地球温暖化など世界的な気候変動による影響や対策について議論を行う予定です。会議は、各国が自主的に設けた温室効果ガスの削減目標がどの程度達成されているのかを確認する場にもなるわけですが、日本については、2021年に「2030年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比で46%削減する」という方針を打ち出しています。
 この目標を達成するためには、ひとりひとりの意識が重要なことは言うまでもありませんが、果たして日本人は環境問題や気候変動についてどのように考えているのでしょうか?2020年に実施し、2023年8月末にリリースされた国際比較調査※1の結果からみていきます。この国際比較調査、日本からはNHK放送文化研究所が参加しています。

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 『環境問題について心配している』※2という人は、日本で8割近くにのぼり、比較データのある28の国や地域の中で3番目に多くなっています。また、気候変動による世界的な気温の上昇が『危険だと思う(極めて+かなり)』という人も8割近くで、各国の中で上から5番目になっています。

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 各国と比べて、多くの日本人が環境問題や気候変動について不安に思っている様子がうかがえます。
 それでは、環境保護に対する意識も高いのでしょうか。『環境を守るためなら、今の生活水準を落とすつもりがある(すすんで落とす+ある程度は落としてもよい)』と回答した人の割合をみると、日本では約3割にとどまり、各国の中ではやや少ないほうです。さらに、20代以下の若い人に限ってみると、日本では2割に届かず、下から数えて4番目に位置付けています。
 日本人の多くが環境や気候変動について心配しているわりには、環境を守るためであっても、自分の生活を犠牲にしたくないと考えているようです。

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 もう一つ、気になる結果をみてみましょう。『私だけが環境のために何かをしても、他の人も同じことをしなければ無意味だと思う』かどうかを尋ねた結果です。『無意味だと思う(どちらかといえばを含む)』※3と答えた人は、日本で61%を占め、各国の中で4番目に多くなっています。さらに20代以下に限ってみると、日本では73%にのぼり、1番多くなります。日本では、市民が「メディアを通じて気候変動に関する政治・経済動向についてはよく知っている一方で、それらが自分の生活や活動に関連した問題としてはとらえにくく、自分の行動によって社会を変えられるとの感覚を持てない」という指摘※4があります。
 個人1人では、環境問題はとうてい解決できない、という無力感が日本の若い世代にまん延しているとしたら、とても気がかりです。

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 まもなく始まる「COP28」で、世界的な気候変動による影響や対策が話し合われる予定ですが、日本でも脱炭素社会のあり方についての議論が高まるのかどうか、引き続き注目したいと思います。


※1 ISSP国際比較調査「環境」
ISSP Research Group (2023). International Social Survey Programme: Environment IV - ISSP 2020. GESIS, Cologne. ZA7650 Data file Version 2.0.0, https://doi.org/10.4232/1.14153.

※2 「まったく心配していない」を「1」、「非常に心配している」を「5」として、1~5までの中から選んでもらい、「4」と「5」を合算して『心配している』とした。また、各国の回答傾向を把握しやすくするため、「わからない」や無回答を除外して集計している。

※3 「賛成」と「どちらかといえば、賛成」を合算した結果。

※4 ジェフリー・ブロードベント、佐藤圭一(2016)「世界のなかの日本—気候変動対策の政策過程」、長谷川公一・品田知美編、『気候変動政策の社会学—日本は変われるのか』、昭和堂


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【村田ひろ子】
2010年からNHK放送文化研究所で社会調査の企画や分析に従事。これまで、「中学生・高校生の生活と意識」「生命倫理」「食生活」に関する世論調査やISSP国際比較調査などを担当。