文研ブログ

2023年2月 6日

メディアの動き 2023年02月06日 (月)

#449 シリーズ「深刻化するネット上の誹謗中傷・いま何が必要なのか」(3) ~いまマスメディアに期待される役割とは

放送文化研究所 渡辺健策

 シリーズ第3回は、ネット上の誹謗中傷の被害拡大を防ぐために、マスメディアにどのような役割が期待されているのかを考えます。
 第1回のインタビュー記事で、ネット上で誹謗中傷を受けた被害者の裁判を担当する小沢一仁弁護士は、SNSなどに投稿される誹謗中傷や、その原因となる不正確な情報をマスメディアがいち早く打ち消すことで被害の拡大を防げると述べていました。多くの被害者と思いを共有する弁護士のこの指摘には重みがあります。
 被害者にとって、救済を求める裁判の労力と費用の負担は大きなものです。提訴したことをネット上で非難される二次的な被害に耐え、仮に勝訴しても認められる賠償額は低く、裁判費用をまかなうのも難しいのが現実です。1また、ひとたび拡散してしまった投稿を完全に消すことは難しい「デジタル・タトゥー」の問題もあるため、誹謗中傷対策を考える上では、何よりも発生・拡散を防ぐことが重要です。
 いまマスメディアに期待される役割とは、どのようなものなのでしょうか。

<マスメディアとソーシャルメディアの"相互作用">

 まず前提として考えなければいけないのは、ネット上の誹謗中傷を含む誤情報・偽情報が拡散していく過程で、マスメディアが伝える番組・ニュースなどの発信内容とソーシャルメディア上の投稿との"相互作用"がはたらいていると指摘される点です。

 法政大学の藤代裕之教授は、誤情報・偽情報を含むニュース(=フェイクニュース)は、テレビなどのマスメディアが生成を助長しており、マスメディアとソーシャルメディアの間の"相互作用"で広がっていると指摘しています。2「SNSの話題がニュース化する過程で、マスメディアのコンテンツがソースとして使われることが多い。ソースとして使われる中で内容がねじ曲げられていく、違うものにされて使われていく」と分析し、その「発生」と「拡散」の双方のプロセスにマスメディアが関わっていると言及しています。こうしたソーシャルメディア上のフェイクニュースの発生・拡散にマスメディアが深く関わっているという捉え方は、多くの研究者によって報告されています。3

 では、誹謗中傷やその原因ともなる誤情報・偽情報の発生に、マスメディアはどのように関わっているのでしょうか。冒頭に触れた小沢弁護士が裁判を担当した2つの誹謗中傷被害のケースをもとに検証します。
 1つめのケースは、2019年8月に常磐自動車道であおり運転をしたドライバーが、相手の車を停止させた上、運転席の男性を殴った事件です。民放の番組で放送されたドライブレコーダーの映像には、容疑者の男とともに車から降り、被害者に携帯電話を向けて撮影している女性の姿(顔にボカシ入れて放送)が映っていました。ネット上の投稿では"ガラケー女"と呼ばれ、映像から分かる服装などを手がかりに、身元の特定を試みる動きが一部に広がりました。その結果、何の関係もない別の女性を"ガラケー女"だと名指しする誤情報がネット上に広がり、間違われた女性に対する激しい誹謗中傷につながったのです。4

警察庁リーフレット「あおり運転厳罰化」 警察庁リーフレット「あおり運転厳罰化」

 この「あおり運転殴打事件」は当時、高速道路などで繰り返されていたあおり運転の1つとして、報道で大きく取り上げられ、その後、国が厳罰化を進めるきっかけとなりました。その点では、マスメディアが積極的に伝えたことの意義はあり、社会課題の解決に向けて世論が国の施策を動かしたことは評価されるべきでしょう。しかし、副作用として、ネット上で人違いが発生し、何の罪もない一般の市民が突然、多数の誹謗中傷を受けることになりました。
 もう1つのケースは、2019年9月に山梨県道志村のキャンプ場で小学1年生の女の子が行方不明になり、大規模な捜索が行われた時のことです。母親や知人らが始めた捜索のための募金活動などをめぐって、母親を誹謗中傷する投稿が相次ぎました。警察や消防が広い範囲で捜索を続けていましたが、女の子の手がかりを見つけることはできず、約2週間後に捜索は打ち切られました。5このケースでも、連日、マスメディアが捜索の状況を詳しく報道しました。一連の報道は、大勢のボランティアが独自の捜索に参加するなど、少しでも早く女の子を発見してあげたいという思いをもつ人たちを動かしました。このときの捜索で発見には至りませんでしたが、多くの人が自発的に協力してくれたという点で社会的な意義があったといえます。その一方で、連日の報道を通じて全国に名前が知られるようになった母親に対し、誹謗中傷の言葉が向けられることにつながりました。
 2つのケースは、積極的な報道に伴って、さまざまな臆測や思い込みといった誤情報や偽情報がネット上に広がるようになり、それらの誤った情報を信じた人が誹謗中傷を始める、という構図になっていました。こうしたネット上の誤情報・偽情報を信じた人が、独自の"正義感"から誹謗中傷を行うというプロセスは、他の事例でも報告されています。6

<なぜ誹謗中傷につながってしまうのか>

 マスメディアによる報道とネット上の誹謗中傷との関係を考える上で1つのヒントになるのが、「流言」をめぐる研究の分析手法です。「流言」とは、根拠のないうわさ、事実の裏付けがなく人びとの間に広がっている情報で、7インターネットの普及よりはるか前から、社会心理学や社会学の研究の対象となってきました。「流言」には、のちに事実と確認される情報も含まれ得るという点では誤情報・偽情報と異なりますが、『事実の裏付けがないまま広がる』という点は共通しています。どんな時に流言が広がりやすいかという分析手法は、誤情報・偽情報や誹謗中傷の発生過程を考える上で手がかりになります。

流言をめぐる研究書 R(流布量)= i(重要さ) × a(あいまいさ) 流言をめぐる研究書 R(流布量)= i(重要さ) × a(あいまいさ)

 ハーバード大学のG.W.オルポートらの研究グループは、流言が拡散される量は、情報を受け取る人にとっての「重要さ」と、その情報の「あいまいさ」の積に比例するという仮説を立てて分析しています。ポイントは、足し算ではなく、かけ算で、流言の広がりやすさを分析していることです。つまり、情報の「重要さ」と「あいまいさ」のどちらか一方がゼロなら、拡散量もゼロで、流言が広がることはありませんが、どちらか一方、あるいは双方が大きくなるほど、流言は大規模に広がっていく、ということを意味します。8
 この「重要さ」「あいまいさ」という2つのキーワードをもとに考えると、前述の2つの誹謗中傷被害のケースは、どちらもマスメディアが大きく取り上げたことで社会的な関心が高まり、受け手にとっての「重要さ」が上昇していたと考えられます。また、"ガラケー女"のケースでは、指名手配中の容疑者の男と、映像に映る同行女性の関係がよく分かっていなかった上、女性の顔にはボカシが入れられ、「あいまいさ」が顕著な状況になっていたことがうかがえます。

『新聞研究』2022.8-9 『新聞研究』2022.8-9

 山梨県道志村で起きた女の子行方不明のケースについては、地元紙の報道部部長が一連の報道を振り返る論稿を『新聞研究』に執筆しています。この中では、当時取材した担当記者の所感を紹介し、「根拠がなさ過ぎて、事故なのか、事件なのか判断に困るという雰囲気だった」と記しています。また、大規模な捜索を行ってもいっこうに手がかりが見つからない中で捜索が打ち切られ、その一方で、情報提供を呼びかけるチラシを配ったり募金活動をしたりする母親への取材が過熱していった経緯も記されています。9事故か事件か見当がつかず、手がかりもない、いわば謎が深まるような状況だったことがうかがえます。連日の報道で受け手にとっての「重要さ」が高まるとともに、「あいまいさ」も顕著になる中で、誤情報や偽情報がネット上に広がり、それに連なる誹謗中傷も増えていったと考えられます。
 当時このニュースがどのくらいの頻度で報じられていたかを振り返ると、例えばNHKでは、捜索が始まった9月22日から捜索が打ち切られた10月7日までの16日間、連日ニュースで報じており、とりわけ首都圏のローカルニュースでは、その多くがトップニュースまたはトップに準ずる上位項目という扱いでした。他のマスメディアも全体として、このニュースを大きく取り上げる傾向が長く続いていました。

国際大学 山口真一准教授 国際大学 山口真一准教授

 国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は、「2週間にわたってずっとトップ級のニュースなのかというと、おそらくそういう話ではない。報道の負の側面が次第に大きくなって、テレビのニュースを見ている側は、何回も見ているうちに『これって実は』などと疑い始める人が増えてくる。その影響力は、マスメディアに関わる一人一人が考えるべきで、過去の事例をふまえながら、自らの影響力を認識すべきところがあると思う」と述べています。10

<デジタル情報空間にどう向き合うべきか~打ち消し報道>

 正確な事実を伝えることで社会のニーズに応えるマスメディアが、その使命を果たしつつ、副作用ともいえる誤情報・偽情報や誹謗中傷の拡散を防ぐためには、どうすればいいのでしょうか。

マスメディアによる「打ち消し報道」/●迅速な事実確認が可能 ●拡散力への期待 ●報道倫理上の責任

 前述の2つのケースも含め、事件事故の当事者に関する誤情報・偽情報については、警察や消防などを取材しているマスメディアは、事実かどうかの確認を比較的しやすい状況にあります。また、マスメディアがニュースの続報として打ち消し報道を行えば、一定の拡散力も期待できます。実際、"ガラケー女"との人違いのケースでは、小沢弁護士が事実無根であるという声明文を出した後、一斉に打ち消し報道が行われ、誹謗中傷の拡散にブレーキをかけたといいます。11
 東京大学の鳥海不二夫教授は、「大手メディアは、いまだに大きな影響力を持っています。誤情報を掲載しないようにすることはもちろん、ファクトチェックなどによって、社会に広まってしまった誤情報を訂正する機能を持つことも期待されています。もちろん、大手メディア自身が誤情報を発信してしまった場合は、自らそれを責任もって訂正することも求められているでしょう」と述べています。12
 自ら誤報を出してしまった場合は当然ですが、そうでない場合でも、みずから伝えた情報がネット上を流通する過程でゆがめられ、誤情報・偽情報につながったという"相互作用"が疑われるのであれば、報道倫理の観点からも、誤った情報を打ち消す合理的な理由があるように思います。

<マスメディアの伝え方の工夫>

 打ち消し報道に加えて、もう1つ考えなければならないのが、誤情報・偽情報の発生・拡散そのものを抑制するための、マスメディアみずからの伝え方の工夫です。
 これまでマスメディアで取材・出稿に携わってきた記者や編集者にとって、最も重要なことは、伝えるニュースが事実として確認できているかどうか、ニュースそのものの真実性でした。しかし、社会の急速なデジタル化によって、マスメディアの発信した情報が、受け手側の解釈や臆測、思い込みなどによってねじ曲げられ、まったく違った内容になって拡散されることが多くなっているのが現実です。
 最近は、マスメディアの取材手法の1つとして、SNS上の投稿から、いち早く情報を入手することが日常的に行われるようになってきました。報道機関によっては、専従のチームもつくっています。
 藤代教授は、「マスメディアにはSNSの反応を見ているチームもあるのに、そこで得た情報が番組に反映されない場合がある。取材の端緒をつかむツールとして使っているにすぎず、放送がどう受け取られているかという意識は乏しい。視聴者の誤解を解いたり、誹謗中傷の被害を防止したりするためのコンプライアンス的な対応を現場に落とし込むことを検討した方がいい」と述べています。13前述の「重要さ」と「あいまいさ」のかけ算によって流言の拡散が大きくなることがあるという視点もふまえ、ニュースの取り上げ方や表現方法を工夫することで、誤情報・偽情報の発生をできるだけ予防できないか、マスメディアの伝え方に、検討の余地はあるように思います。

<マスメディアによるファクトチェック>

 一方、ネット上の疑わしい情報を検証する取り組みについてはどうでしょうか。インターネット上の本当かどうか分からない情報について、事実かどうかを検証・判定するファクトチェックは、海外では、マスメディアを含むさまざまな団体によって積極的に行われ、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が定めた原則綱領に基づいて、国境を越えた連携が強まっています。

IFCNのホームページより IFCNのホームページより

 しかし、日本ではこれまで独立系メディアや民間団体が中心となって進められてきました。最近は、新聞社やテレビ局の一部が力を入れ始める動きもありますが、14全体としてマスメディアによるファクトチェックは出遅れてきたと指摘されています。15
 日本大学の石川徳幸准教授は、「流布された誤りをただして、正確な情報を不特定多数の人びとに提供し直すのは、マスメディアが最も適任である。SNSを介した情報接触には、『フィルターバブル』や『エコーチェンバー』と呼ばれる集団極性化16をもたらす特性が指摘されているが、新聞をはじめとするマスメディアの社会的役割として期待すべきは、伝えるべき正しい情報を取捨選択して、理性的な議論を促すことであろう」と記しています。17また、マスメディアによるファクトチェックの効果について、山口准教授は、「しっかりと検証した報じ方をすれば、その情報がSNSにも流入して拡散していくということもあるので、ポジティブな共振現象が起こるのではないか。そこをしっかりとやるというのはとても大切なことだと思う」と期待感を示しています。18

<今後の課題>

 日本のマスメディアによるファクトチェックを普及させるには、何が課題となるのでしょうか。
 藤代教授は、日本の既存メディアの記者には、取るに足らない不確実な情報をフェイクニュースとして対応することをためらう考えがあると指摘しています。また、2018年9月に行われた沖縄県知事選の際に地元紙が行った候補者などに関するフェイクニュースの検証事例を紹介した上で、「通常の取材に比べて確認作業に労力がかかるために記者の大きな負担になっていた」と記しています。19報道に携わる人たちの意識改革と負担軽減の工夫が、ファクトチェックを普及させるためには欠かせません。
 また、マスメディア自身の誤報や過熱報道、ミスリードなどによって、メディアへの信頼が大きく揺らいでいることも、情報空間の汚染に拍車をかけています。20
 藤代教授は、ネット上を流れるニュースが記事単位で断片化していることに触れ、ソーシャルメディアの生態系の中で適切に記事が届くように配慮すべきで、正確な情報の流通のためには、追記や訂正といった更新履歴やソースへのリンクをネット配信記事に掲載する必要があると指摘しています。その上で「既存メディアが、ソーシャルメディア時代に取り組むことは、いいね数やページビューを稼ぐことではない。ソーシャルメディアのスピードや熱狂から距離を取り、様々な角度から検証を行い、冷静に対応すべきだ。メディアの役割は分断ではなく、社会をつなぐものである」と提言しています。21

 膨大なネット情報を1つのマスメディアだけで網羅的にチェックすることは困難ですが、まずは優先順位の高い▼人びとの生命・安全、▼個人の尊厳と人権、▼民主主義の土台となる選挙の公正を対象に、これらを危機にさらす誤った情報が大規模に広がり始めた時に、マスメディアが事実関係を検証して報じることには価値があると思います。マスメディアが互いに連携し、ファクトチェック団体やプラットフォーム事業者とも協力すれば、デジタル空間を正しい情報が循環する環境をつくることも不可能ではないでしょう。22
 マスメディアには、正確で多様な情報を社会に届ける役割に加えて、ネット上の情報のやりとりを注意深くウオッチしながら、デジタル空間の汚染の歯止めとなることも期待されているのではないでしょうか。誰でも情報交換や表現活動を自由にできるネット空間の特性を今後もいかし、育てていくため、どのような役割を果たせるのか、引き続き模索していきたいと思います。


【注釈および引用出典・参考文献】
  • さはらえり『ネット社会と闘う~ガラケー女と呼ばれて~』(リックテレコム,2021年)69-70頁
  • 藤代裕之『フェイクニュースの生態系』(青弓社,2021年) 17頁、68-71頁、 Yochai Benkler, Robert Faris, Hal Roberts『Network Propaganda』(Oxford University Press, 2018)
  • 藤代裕之(筆者インタビューへの回答,2022年12月)、藤代裕之 前掲2『フェイクニュースの生態系』、山口真一『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房,2022年)、鳥海不二夫・山本龍彦『デジタル空間とどう向き合うか 情報的健康の実現を目指して』(日経BP日本経済新聞出版,2022年)、福長秀彦「新型コロナウイルス感染拡大と流言・トイレットペーパー買いだめ~報道のあり方を考える~」『放送研究と調査』2020年1月号(NHK出版)
  • 前掲1 さはらえり『ネット社会と闘う~ガラケー女と呼ばれて~』18-25,52-55頁
  • その後、2022年4月に山梨県道志村の山中で人の骨の一部や、女の子のものと見られる運動靴、服装の一部が見つかった。骨のDNA型が一致したことなどから、警察は、女の子の死亡が確認されたという見解を示した。
  • 山口真一「わが国における誹謗中傷・フェイクニュースの実態と社会的対処」(プラットフォームサービスに関する研究会 第26回資料3,2021年4月)9頁
  • 福長秀彦「流言・デマ・フェイクニュースとマスメディアの打ち消し報道~大阪府北部の地震の事例などから」『放送研究と調査』2018年11月号(NHK出版) 86頁
  • G.W.オルポート&L.ポストマン著 南博訳『デマの心理学』(岩波現代叢書,1952年)、
    T.シブタニ著 広井修・橋本良明・後藤将之訳 『流言と社会』(東京創元社1985年)、
    R. L. ロスノウ、G. A. ファイン著 南博訳 『うわさの心理学』(岩波現代選書,1982年)
  • 山梨日日新聞社報道部部長 藤原祐紀「山梨女児不明事件報道を振り返る―2年半越しの死亡断定も死因分からず」(新聞研究No.847,2022年8-9月号 48-51頁)
  • 山口真一(筆者インタビューへの回答,2022年12月)、
  • 前掲1 さはらえり『ネット社会と闘う~ガラケー女と呼ばれて』52-56頁
    例えばNHKでは、弁護士の声明が発表された翌日の8月19日の夜7時の全国ニュースで人違いによる被害が起きていることを伝えたほか、WEBの特集記事では人違いによる誹謗中傷が発生した経緯を伝えている。「"起きたら犯罪者扱い"いったいなぜ」(NHK生活情報ブログ)
  • 前掲3 鳥海不二夫・山本龍彦『デジタル空間とどう向き合うか 情報的健康の実現を目指して』66頁
  • 藤代裕之(NHKのインタビューへの回答,2022年12月)
  • 日本国内では、推進団体の「ファクトチェックイニシアティブ(FIJ)」が活動しているほか、「日本ファクトチェックセンター(JFC)」、独立系メディアのBuzzFeed Japan、InFactなど、新聞では毎日新聞、朝日新聞、沖縄タイムス、琉球新報などがファクトチェックを行っている。また、放送局では日本テレビとNHKが一部でファクトチェックの手法を取り入れているほか、ポータルサイトなどを運営するプラットフォーム事業者がファクトチェックに関する活動にコミットする動きも出ている。
  • 「Innovation Nippon調査研究報告書 日本におけるフェイクニュースの実態と対処策」(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター,2020年3月)116-117頁、藤代裕之「ソーシャルメディアで広がる『デマ』それに結びつく既存メディア攻撃」(Journalism 2020.6)31頁
  • 「集団極性化(サイバーカスケード)」=集団の意思決定が個人の決定の平均に比べて、より極端な方向に偏る現象(日本社会心理学会編『社会心理学事典』丸善2009年)、インターネットの特定のサイトや掲示板などでの意見交換で、ある事柄への賛否いずれかの論が急激に多数を占め、先鋭化する傾向を持つというもの(松村明監修『大辞泉』小学館,2012年)
  • 石川徳幸「デジタル時代の新聞産業とジャーナリズム」(情報の科学と技術68巻9号,2018年) 437頁
  • 山口真一(筆者インタビューへの回答,2022年12月)
  • 前掲2 藤代裕之『フェイクニュースの生態系』80,139頁
  • 前掲15 藤代裕之「ソーシャルメディアで広がる「デマ」それに結びつく既存メディア攻撃」32頁 前掲6 山口真一「わが国における誹謗中傷・フェイクニュースの実態と社会的対処」15頁
  • 前掲15 藤代裕之「ソーシャルメディアで広がる「デマ」それに結びつく既存メディア攻撃」34頁
  • BBCなどが進める有害な偽情報・誤情報に関する知見や対策方法を共有する国際的なメディアネットワークTrusted News Initiative にNHKや豪州ABCなどアジア地域のメディアが2022年11月に参加を表明した。
おススメの1本 2023年02月06日 (月)

#448 『おかあさんといっしょ』と外部クリエーターたち~テレビ放送開始70年特別番組に関連して~ 

メディア研究部(番組研究) 高橋浩一郎

今年、テレビが放送開始して70年になります。その中で『おかあさんといっしょ』をはじめとするNHK子ども向け番組の歴史に焦点を当てた特集番組『「おかあさんといっしょ」から見るこども番組』が2月11日(土)午後8時~Eテレで放送されます。2月19日(日)には再放送が予定されています。
「テレビ70年」キャンペーンのNHKホームページ

文研ではこれまで幼児向け番組の変遷や初期『おかあさんといっしょ』についての論考を発表し、文研ブログでもさまざまなテーマを扱ってきました。今回の特集番組もその成果を参考にして制作されています。
『おかあさんといっしょ』をはじめとする幼児向け番組は、多くの外部クリエーターが関わっています。彼らがどのようなことを考えて番組制作に関わり、また当時のプロデューサー、ディレクターが彼らを起用した背景にはどのようなねらいがあったのか、特集番組では普段の番組からはうかがうことができない作り手たちの思いが掘り下げられています。

trimtakahashi.png 飯沢匡さん

small.png    「ブーフーウー」などの台本

取材の過程で、番組初期の人気コーナー「ブーフーウー」(1960~1967)を生み出した作家・飯沢匡さんのご遺族に資料提供などでご協力いただくことができました。ご自宅には貴重な資料が保管されていました。「ブーフーウー」以外にも「ダットくん」(1967~1969)、「とんちんこぼうず」(1969~1971)、「とんでけブッチー」(1971~1974)、「うごけぼくのえ」(1974~1976)、「ペリカンおばさん(1976~1978)、「おもちゃおじさん」(1978~1979)、「ミューミューニャーニャー」(1979~1983)など、飯沢さんが23年間にわたって『おかあさんといっしょ』のために執筆した730冊の台本です。

番組では、飯沢さんとコンビを組んで「ブーフーウー」などのキャラクターデザインを手がけた画家の土方重巳さんの資料も紹介しています。(人形の製作をしたのはアニメーション作家で人形作家の川本喜八郎さんです。)土方さんはキャラクターデザインの先駆け的存在で、製薬会社のゾウのキャラクター・サトちゃんのデザインが広く知られ、その画業を振り返る展覧会が横須賀美術館で開催されるなど改めて注目を浴びています。NHKアーカイブスのHPでは、お二人が関わった「ブーフーウー」「ダットくん」「うごけぼくのえ」「ミューミューニャーニャー」の映像が一部公開されていますので是非ご覧ください。 
NHKアーカイブス ホームページはこちらから

飯沢さんや土方さんがどのような思いで『おかあさんといっしょ』の人形劇を生み出し、20年以上かかわり続けたのか、またそれは時代の変化とともにどのように変わったのか、残された資料をひも解くことで今後明らかにすることができるかもしれません。特集番組をご覧になって『おかあさんといっしょ』の歴史に関心を持たれましたら、以下のリンクをのぞいてみてください。

【文研ブログ】
『おかあさんといっしょ』の60年① ~"婦人課"の女性職員たち~ | NHK文研
『おかあさんといっしょ』の60年② ~日本の人形アニメーション夜明け前~ | NHK文研
『おかあさんといっしょ』の60年③ ~"子どもの歌"の"おかあさん" 作曲家・福田和禾子~ | NHK文研

 【論考】
「NHK幼児向けテレビ番組の変遷」
「初期『おかあさんといっしょ』失われた映像を探る』」