文研ブログ

2022年12月19日

調査あれこれ 2022年12月19日 (月)

#438 サッカー日本代表への応援熱はいつまで続く?

計画管理部(計画) 斉藤孝信

 前回に引き続き、FIFAワールドカップ2022で大健闘し、多くの感動をもたらしてくれたサッカー日本代表のお話です。
 試合後の会見で、森保監督は「これから先、日本サッカーが最高の景色を願い続ければ、必ず壁は乗り越えられます。そのためにもこの素晴らしい選手たちを今後も後押ししていただき、日本一丸となって世界に臨めば必ず乗り越えられます」と語りました。
 今大会の日本代表の活躍に多くの人が感動し、大いに盛り上がったことはたしかですが、森保監督が望むように、"今後も日本一丸となって世界に臨む"という状況が実現するかどうかは、今大会で盛り上がった応援熱が、果たしてどれだけ持続するかにかかっています。

 それを考える参考として、文研の「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」で、「東京五輪で見たい競技」として挙げた人の割合の推移を、リオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)で日本がメダルを獲得した主な競技に絞ってみてみます。

東京五輪で「見たい」と答えた人の割合(複数回答の結果)

 リオ五輪の1年後に実施した第2回では、男子4×100mリレーで銀メダルを獲得した「陸上競技」が66%、男子シングルスの水谷選手のほか男女とも団体でもメダルを取った「卓球」が50%、メダルラッシュ(12個)となった「柔道」が48%、金4つを含む7個のメダルを手にした「レスリング」が38%、そして「サッカー」は43%でした。
 ところが、五輪1年半後の第3回では「陸上競技」「柔道」「サッカー」が減少、さらにその半年後の第4回にかけては「卓球」「柔道」「レスリング」も減少しました。やはり、大きな大会直後の熱気をその後も長く持続することは簡単ではないようです。
 ただし、「サッカー」が第4回以降続落せず、第5回には第2回と同程度まで盛り返した背景には、2018年6月にロシアでのW杯、2019年1月にアジア杯、同年6月にコパアメリカと、五輪以外にも大きな国際大会が定期的に開催され、そのたびにメディアでも試合中継や関連ニュースなどで取り上げられるという、この競技ならではの事情があるのかもしれません。
 その2018年6月のW杯ロシア大会でも、日本代表は今回と同じくベスト16でした。西野監督に率いられた、本田、香川、大迫、柴崎などタレントぞろいのメンバーが、1次リーグで格上の相手を撃破し、決勝トーナメント初戦で惜敗。テレビ各局の試合中継の視聴率も今回同様に高く、試合後には渋谷のスクランブル交差点で大盛り上がりする若者たちの騒ぎぶりに"DJポリス"まで出動したことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
 あれだけ盛り上がったのだから、応援熱は大会前よりも格段に高まったのだろうと思いますよね? そこで、文研の「全国個人視聴率調査」から、ロシア大会1年前と1年後に行われたキリン杯の日本代表戦の、関東地方の視聴率をみてみます。なお、以下の3試合はいずれも19・20時台キックオフでした。

サッカー日本代表の試合の視聴率(関東・男女年層別)

 全体は8~9%と同程度、男女年層別にみても、男性60代以上が高めで、女性が低めであるという傾向には、大会前後で目立った変化がありませんでした。大会時、女性も含めて、若い人たちが大いに盛り上がっていた姿が目に焼き付いていた私にとっては、少し意外な感じがしました。
 これを、"W杯のおかげで下がらずに済んだ"とみるべきか、"たった1年でW杯の熱気が冷め、通常に戻ってしまった"とみるべきか。皆さんはどう考えますか?
 ちなみに、東京五輪・パラに関しては、大会後『楽しめた』と答えた人が7割を超えましたが、一方で「盛り上がりは一時的なものに過ぎない」といういささかクールな意見を持つ人も同じく7割近くに上っていました。

東京五輪・パラ 大会後の感想

 なお、W杯初戦前に掲載したブログで、女性50代以下では、ふだんスポーツを『見る』人が4~5割程度しかいないのに、東京五輪・パラを『楽しみ』にしていた人は8割前後に上り、"スポーツの中でも、五輪は別モノ"として受け止められていたようだと紹介しましたが、サッカーについても、W杯時にはあれだけ盛り上がったのに、その後の試合の視聴率が特段上がるわけではなかったことをみると、彼女たちにとっては五輪同様に、"W杯は別モノ"であり、それ以外の試合は"ふだんのスポーツ"であるということなのかもしれません。

 サッカーでは、来年・2023年6~7月にアジア杯、7~8月に"なでしこジャパン"の女子W杯、再来年・2024年にパリ五輪と、大きな国際大会が続きます。果たして、今大会で新たにサッカーや日本代表を好きになった人々によって、応援・視聴の熱が高い状態が維持され、再始動する代表チームを後押しすることになるのか? それとも、一時的な盛り上がりで終わってしまうのか。
 "熱しやすく冷めやすい"私自身への自戒の念と、"これだけの感動をもらった恩返しとして応援し続けます!"という誓いの気持ちも込めて、今後も、代表チームの活躍ぶりと、人々の視聴行動に注目していきたいと思います!