#415「東京パラリンピック視聴と障害者スポーツへの理解」① ~「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」~
世論調査部(視聴者調査)斉藤孝信
『放送研究と調査』6月号では、“人々にとって、東京五輪・パラとは何だったのか”と題して、文研が大会招致決定後の2016年から7回にわたって実施した「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」の結果をもとに、人々はコロナ禍での開催をどのように感じていたのか。今大会は人々にとってどのような意義を持ち、日本にどんなレガシーを遺したのかなど、さまざまな視点で考察しております。
今回のブログでは、東京パラリンピック(以下、東京パラ)を人々がどのように視聴し、それが障害者スポーツへの理解促進につながったのかどうか、お話します。
皆さんは、東京パラのどんな競技が印象に残りましたか?
世論調査では、第2回から毎回、「見たい競技・式典」を、大会後の第7回では「印象に残った競技・式典」を尋ねました。
大会前の第6回と大会後の第7回のトップ10はこちらです。
第7回の「印象に残った競技・式典」のトップは、日本が13個のメダルを獲得した「競泳」。次いで、国枝慎吾選手の金メダルをはじめ日本勢が3つのメダルを手にした「車いすテニス」や、男子が銀メダルに輝いた「車いすバスケットボール」も、4割以上の方が「印象に残った」と答えました。
ランキングの上位を日本のメダル獲得競技が占めたという結果は、先日のブログでご紹介した東京オリンピックにも共通しています。
赤の数字で示したのは、第6回で「見たい」と答えた人よりも、第7回で「印象に残った」と答えた人のほうが多かった競技です。
ご覧のように、軒並み、赤!
日本のパラアスリートの活躍が、いかに人々の心を動かしたのかが、これを見るだけでも伝わってきます。
また、第6回では、見たい競技が「特にない」人が29%いましたが、第7回では、印象に残った競技が「特にない」人は19%と大きく減りました。
第7回では、東京パラを視聴する際にどんなメディアを利用したのか、NHKと民放の放送・サービスを、それぞれテレビの「リアルタイム(放送と同時に)」と「録画」、インターネット向けのサービスであるNHKプラスやTVerなどの「インターネット」に分けた上で、放送局以外のサービスである「YouTube」「YouTube以外の動画」「LINE」「Twitter」「Instagram」「その他のSNS」も加えた12のメディアを示して、複数回答で尋ねました。
テレビの「リアルタイム」が圧倒的に多く、NHKが73%、民放が63%でした。NHKについては、録画やNHKプラスなどのインターネット向けサービスも含めると、74%と非常に多くの人が視聴してくださいました。
この事実だけでも大変嬉しいのですが、欲を言えば、この視聴が、障害のある人や、障害者スポーツへの理解促進につながっていてほしい・・・と思うわけです。
そこで、東京パラをきっかけに「自身の障害者への理解が進んだと思うか」「自身の障害者スポーツへの理解が進んだと思うか」を尋ねた結果を、それぞれ、NHKの放送・サービスの利用有無別に集計してみました。
その結果、NHKで東京パラを視聴した人では、障害者への理解、障害者スポーツへの理解ともに、『進んだ(かなり+ある程度)』という回答が8割前後にのぼり、視聴しなかった人を大きく上回りました。今回は、最も多くの人が東京パラを視聴してくださったNHKを取り上げましたが、民放でも同じように、大会を視聴した人のほうが、障害者や障害者スポーツへの理解が進んだと思う人が多いという結果が出ています。
では、具体的に、どのように理解が進んだのでしょうか。次回のブログで、詳しく掘り下げたいと思います。