文研ブログ

2022年6月20日

調査あれこれ 2022年06月20日 (月)

#398 「あなたの印象に残った五輪競技は何ですか?」① ~「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」~

世論調査部 (視聴者調査) 斉藤孝信

 早いもので、2020 東京オリンピック・パラリンピック(以下、五輪・パラ)が開催されてから、まもなく 1 年になります。去年の今頃といえば、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、日常生活のさまざまな場面で自粛を求められ、感染の不安を抱えていた人も多いと思います。
 そんな中で、皆さんは、東京五輪・パラのことをどう思っていましたか?
 私は「本当に開催できるの? せっかくの東京開催なのに、直接観戦できないなんて…」 と、正直言って少しネガティブな気持ちだったような気もします。
 ところが、ひとたび大会が始まると、連日テレビにかじりつきで、卓球混合ダブルス水谷・伊藤ペアの金メダルに歓喜の涙、女子ソフトボールの上野投手の力投に感動の涙、(恥ずかしながら今まで見たことのなかった)スケートボードの大技と、健闘を讃え合う選手たちの姿にこれまた涙と、良い意味で涙が枯れるほどに、すっかり満喫したのでした。
 実際に、今大会での日本勢の活躍ぶりは素晴らしかったですね!決してメダルがすべてだとは思いませんが、金メダル27個、銀と銅を合わせたメダル58個は、いずれも日本勢として夏の五輪では最多!大変な状況の中で練習を積み重ね、栄冠を勝ち取った選手の皆さんに、改めて大拍手を贈りたいと思います。
 szaitou1.png 皆さんは、どんな競技が印象に残りましたか?
 文研では2016年から7回にわたって「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」を実施し、2017年の第2回からは毎回、「見たい競技・式典」を、大会後の第7回では「印象に残った競技・式典」を尋ねました。今回のブログでは、この質問の結果分析を3号シリーズでお届けします。
 では、さっそく。第6回・第7回はコロナ禍を受けて郵送法で実施しましたので、第5回までの配付回収法の結果とは単純に比較できませんが、一覧にしてみますと……

saitou2.png 大会前の第6回までの「見たい競技・式典」のトップ4は、順位や「見たい」と答えた人の割合に多少の違いはありますが、「体操競技」「陸上競技」「開会式」「競泳」が占め続けていました。
 しかし、大会後の「印象に残った競技」では、上位の顔ぶれがガラリと変わりました。トップは「卓球」、2位「柔道」、3位「ソフトボール」です。さらに、第6回まで一度もトップ10に入らなかった「スケートボード」が8位、「バスケットボール」も10位にランクインしました。これらはすべて日本のメダル獲得競技です。私自身もそうですが、「大会前にはそれほど興味がなかったけれど、活躍ぶりやメダル獲得を目の当たりにして、強く印象に残った」ということなのではないでしょうか。
 東京五輪の「スケートボード」「バスケットボール」のように、大会前にあまり注目されていなかった競技が、日本勢の活躍によって一躍注目を浴びるという現象は、2018年ピョンチャン冬季五輪でも起きていました。大会前の第2回で尋ねた「見たい競技」と、大会直後の第3回に尋ねた「見た競技」での、「カーリング」を挙げた人の割合が、25%から70%へと跳ね上がったのです。たしかに当時、銅メダルを獲得した戦績だけではなく、選手たちが競技の合間におやつを頬張る“もぐもぐタイム”も話題になるなど、競技中継以外にも、テレビのニュースやワイドショーで連日のようにカーリング日本代表の皆さんを目にしていたような気がします。
 saitou3.png 今号では、東京五輪で「印象に残った競技・式典」について、調査相手全体のランキングをご紹介しましたが、実はこのランキングは、性別や年代によって、少なからず順位が入れ替わります。次号のブログでは、そのお話をいたします! 

 『放送研究と調査』6月号では、7回にわたる世論調査の結果をもとに、“人々にとって、東京五輪・パラとは何だったのか”を考えます。人々はコロナ禍での開催をどのように感じていたのか。そうした状況で大会をどのように楽しんだのか。今大会は人々にとってどのような意義を持ち、東日本大震災からの“復興五輪”たりえたのか。そして、日本にどんなレガシーを遺したのかなど、さまざまな視点で考察します。どうぞご一読ください!