文研ブログ

2021年9月14日

メディアの動き 2021年09月14日 (火)

#342 政治は変わる、変わらない? ~衆院選、そして来夏の参院選~

放送文化研究所 島田敏男


 先月11日付の文研ブログで、私はNHK世論調査の内閣支持率と政党支持率のクロス分析を紹介しながら、「自民党支持者の『菅離れ』が加速するようならば、自民党内に『菅降ろし』の動きが噴き出してくることが想定される」と指摘しました。

 それからわずか3週間余、『菅降ろし』が表面化する前に9月3日には『菅降りる』という展開になってしまいました。9月17日告示、29日投開票という日程が決まった自民党総裁選を勝ち抜くことは困難と判断したわけです。

 この背景には、菅氏に総裁の残りの任期を託した安倍総理、第2次安倍内閣の発足から政権の支柱となってきた麻生副総理兼財務大臣が、菅続投に懐疑的になったことがあります。以前は盛んに発していた「菅再選・続投支持」の声を潜めるように変化していました。

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 次第に後ろ盾が無くなった菅氏は、「自民党総裁選の前に衆議院の解散・総選挙に踏み切れば、総裁選自体を先送りできるのではないか」という一点突破の仰天アイデアを検討。しかし、これが逆に党内の反発を買い、自ら土俵を割ることになってしまいました。

 本来、政権を担っている自民党の総裁選びには、あるべき日本の中長期的な姿をどう構想するかといった政策論争が期待されています。ところが今回は10月21日に衆議院議員の任期満了を迎える直前というタイミングになり、「議席を維持できる選挙の顔探し」の要素が大きくなっています。

 各種世論調査では、ワクチン接種の推進にあたってきた河野太郎行政改革担当大臣の人気が一歩先んじていて、真っ先に名乗りを上げた岸田文雄政務調査会長がこれに続いています。高市早苗総務大臣も、安倍総理の応援を梃子に岸田氏の背中を追っています。

 ただ正直なところ、これまでの各氏の発言や発信を見る限り、安倍・麻生の支持を得たいがために、安倍・菅政権の進めてきた政策を大きく転換するような内容は見当たりません。

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 永田町では昔から「パペット(puppet)」という言葉がよく使われます。
「操り人形」の意で、影の実力者に支えられながら政権運営している姿を揶揄する時に使われてきました。昭和の時代に、闇将軍の田中角栄総理に支えられながら政権を発足させた当時の中曽根康弘総理がこう評されました。ただ、中曽根氏は次第に自力で足場を固め、5年近い長期政権を築いたことを付言しておきます。


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 今回の自民党総裁選の3立候補予定者(14日午後の時点で石破茂氏は立候補見送りへ、野田聖子氏は模索中)は、多かれ少なかれ2A=安倍・麻生を敵に回したくないという姿勢です。

 17日の告示以降、日本記者クラブ主催の討論会など、政策や政治理念の違いをぶつけ合う場面が続きます。そこで独自性を発信して政治の変化を期待させる姿を見ることができるのか?それともパペットぶりを発揮して、内向きの選挙の顔選びに終始するのか?自民党総裁選の姿そのものが、国民の前に晒されます。

 さてここで、9月のNHK世論調査の結果を見ておきます。菅内閣の下で最後になる調査は10日(金)から12日(日)にかけて行われました。

☆菅内閣を「支持する」30%で、「支持しない」50%でした。8月と比べ「支持する」+1ポイント、「支持しない」-2ポイントで、ほぼ横ばいでした。

 これを自民党支持者に限ってみると「支持する」が50%で、去年9月の菅内閣発足直後の85%から大きく落ち込んでいて、この1年間で最も低い数字だったという点が特徴的です。やはり自民党支持者の『菅離れ』は止まりませんでした。

 では総裁選の後、国民はどういう政治の姿を望んでいるのでしょうか?

 自民党の新しいリーダーが決まった後、国会で総理大臣指名選挙が行われますが、現在は衆参共に自民・公明の与党が多数を占めていますので、新総裁が新総理に就任して内閣をスタートさせ、衆議院選挙に臨みます。

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☆その衆議院選挙で、あなたは与党と野党の議席がどのようになればよいと思いますかと聞いた結果です。

「与党の議席が増えた方がよい」22%、「野党の議席が増えた方がよい」26%、「どちらともいえない」47%となっていて、全体の半数近くが判断に迷っている状況です。

 この「どちらともいえない」について詳しく見ると、与党支持者で47%、野党支持者で20%、無党派層で53%となっています。

 「どちらともいえない」が半数前後を占めている与党支持者と無党派層の回答が、今後どう変化してくるかが選挙結果を探るポイントになりそうです。
 過去の選挙でも、この質問に対する回答の変化が、実際の投票行動の傾向に結びつくことがありました。ここは来月以降の注目点です。

 衆議院選挙の行方は流動的ですが、野党の間で候補者が乱立しないよう調整を図ることができれば、自民・公明の与党に厳しい結果を生じさせることが考えられます。

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 今度の衆議院選挙の先には、来年7月に半数が任期満了となり改選を迎える参議院選挙が控えています。ここまでを「選挙の1年」と呼ぶこともできます。

 ある立憲民主党幹部は「一度の選挙で大逆転できるほど世の中は甘くはない。だけど多くの国民に共感してもらえる社会保障政策や安全保障政策を発信して与野党伯仲の状態を作って行けば、失われて久しい政治の緊張感が戻ってくる」と、自らを鼓舞するように語ります。

 安倍・菅時代には国会で深みのある論戦が交わされたとは言い難い面がありました。それが国民と政治の距離を引き離していたとも言えます。

 「選挙の1年」では、コロナ禍を乗り越えながら、これからの社会を展望する国民的議論を一気に深めたいものです。