文研ブログ

2021年3月15日

ことばのはなし 2021年03月15日 (月)

#310 「2日おき」と「湯切り」の話

メディア研究部(放送用語・表現) 塩田雄大


晴れた午後。すいこまれるブルースカイ。
2回目の洗濯機を回したよ。干し担当くん、あとは任せた!

「えーとズボンってさ、裏返して干せばいいんだよな?」
「あ、そうしといてくれるとうれしい」

風にゆれる洗濯もの。すずらんの香り。まぶしい日差しに流れる平井堅。

「この歌詞の『記念日には花束を 電話は1日おきにして』っていうの、要するに毎日電話するってことだよな」
「えー、違うんじゃない?」
「だってさ、もしきょう『2日おきに電話します』って言われたら、次の電話は2日後、つまり、あさってだと思わねえ? だったら、『1日おき』の次の電話は1日後、あしたなんだから、結局『毎日』ってことだろ。『放送研究と調査』の12月号に載ってる調査結果だとさ、…」

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ハッ!! そうなの? わたしがこれまでずっと使ってきた日本語、まちがってたってこと? いやいや落ち着け私、空腹は人を混乱させるんだ。

「よ、よくわかんないけど、カップやきそば食べる? なんと98円で売ってたの」
「そうそう、それ聞きたかったんだ、カップやきそば作るとき、『湯きり』って言う? 『湯ぎり』って言う?」

ヒッ!! やばいスパイラルに入ってきたかも。

『放送研究と調査』の1月号、もう読んだだろ? そこにさ、『~を切る』みたいなのを名詞にしたときには『~ぎり』じゃなくて『~きり』になる傾向がある、って書いてあるんだよな」
「『お湯を切る』だから『湯ぎり』じゃなくて『湯きり』ってこと? あ、『爪きり』も『爪ぎり』とは言わないもんね、『爪を切る』わけだから。なるほどー」
「おっ、なかなかいいセンスしてるな」
「反対に、『輪切り』は『輪を切る』わけじゃなくて『輪みたいに切る』から、『輪ぎり』なのね」

いろいろあったけど、ステイホームも悪くない。
日常と、リスペクト。
相手がほんとに大切にしているものを大切にしていればさ、きっといいことあるよ。
こんどは、「ステイホーム」を「ホームステイ」にするとなんでこんなに意味が変わっちゃうのか、またゆっくり教えてよ。


※「言わない関係」 歌:平井堅 作詞:Ken Hirai 2004年