文研ブログ

2019年3月15日

放送ヒストリー 2019年03月15日 (金)

#175 シリーズ「証言を基に読み解く放送制度」 スタート ~文研が届けるアナザー・ストーリー~

メディア研究部(メディア動向) 山田 潔


平成が終わり、1つの区切りを迎えようとする中で、いろいろな角度から「昭和そして平成がどういう時代だったのか」の振り返りがなされています。

戦後の昭和から平成にかけて、表現の自由と技術革新を反映しながら大きく成長し、人々にさまざまな情報を届けてきたメディア「放送」。戦後の焼け野原で流れたNHKのラジオ放送だけから、民放ができ、テレビジョン放送開始、それがカラー化し、BS、ハイビジョン、デジタル化、4K・8K、そして今、電波による放送に加えたインターネットの本格活用が模索されています。

日本の放送は、戦前の反省に立ち、豊かで多様な番組をあまねく届ける民主的な放送を目指して、受信料による公共放送NHKと、広告収入による多くの民放という財源を異にする二元体制を中心に互いに切磋琢磨しながら自律的に進んできました。一方で、放送を行うには、電波免許が必要なことや、番組内容についての政治的公平性確保といった規律が設けられるなど、他のメディアと少し異なった制度が設けられています。また、電波や受信機に関する技術規格、放送事業者の経営のあり方などの面でもこれらの要請を前提として考えられてきました。

今回はじめたシリーズは、こうした日本の「放送制度」がどのような過程を経て形成されてきたのかまた、関係者はどのように関与したのかこれまで必ずしも明らかになっていない点を、放送制度の検討に関わった方々の証言を基に読み解こうというものです。


シリーズ第1回(『放送研究と調査』2019年2月号に掲載)は、放送制度の根幹とも言える放送法についてです。放送法は1950年の制定後、改正規模は大小さまざまですが、2018年末までに実に60回も改正され現在に至っています。改正には、所管官庁、放送事業者の担当者、国会議員、放送制度に詳しい有識者など多くの関係者がそれぞれの立場であるべき放送の姿を求めて、関与してきました。

その中でも、理論的・体系的な法制度検討における法学研究者の存在は大きいです。今回は行政法学者として長年にわたり放送法制の研究に携わり、法改正に向けた有識者会議の座長を務めるなど検討の中心となってリードされた東京大学名誉教授・塩野宏氏に、ご自身が放送法に関わり始めた1960年代を中心に伺いました。

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証言する塩野宏氏

当時、民放の成長、テレビの普及という状況を受け、政府の「臨時放送関係法制調査会」に対応するため、NHKが独自に理論的検討を行った「NHK放送法制研究会」に若き研究者として参加された塩野氏。新憲法の下、放送の重要性に鑑み、勢い込んで参加されたかと思いきや……。話は聞いてみないと分らないものです。
歩く知性のような塩野氏ですが、私たちにも分かりやすくお話してくださいました。

当研究所が届けるアナザー・ストーリー 是非のぞいてみてください。
シリーズ第2回も『放送研究と調査』2019年3月号に掲載しました。4月に当ホームページでも全文公開されます。)