文研ブログ

2018年10月 5日

おススメの1本 2018年10月05日 (金)

#147 「トライアル研究」の発表会はトライアルでした

メディア研究部 鳥谷部寛巳

つい2年ほど前まで「アーカイブ研究」なるものをよく知らなかった自分が、こうしたイベントの開催を担うことになるとは思ってもみませんでした。「NHK番組アーカイブス学術利用トライアイル 研究発表会2018」のことです。その模様を『放送研究と調査』10月号掲載の「アーカイブ研究の現在」で報告しました。

NHKは2010年から、NHKアーカイブスに保管されている放送番組を学術利用の閲覧に供する事業(詳しくは公式ウェブサイト参照)を行っています。そこから生まれた成果論文は61本、研究発表(学会等にて)は65件にのぼります(今年3月末時点)。
事業の担当チームは去年末、アーカイブ研究の一層の発展につなげることを趣旨とした研究発表会を開くことを決めました。開催は半年余り後(今年7月)。成果論文の中から5つほどを選考し、利用番組の一部上映を盛り込むなどアーカイブ研究ならではの発表会にしようということになりました。突然ですが、そのときの私の心のつぶやきを以下に。

……こういう立ち上げって、誰かがプロデューサー役を担って少々強引に事を進めていかないと、“絵に描いた餅”で終わりかねないんだよな~。それだけにとっても大事な役割。結構大変な役割。個人的にはなるべく、いや何とか避けたいところ。ま、自分はこの事業に関わってまだ1年半と最短だから、免れるかな……

しかしながら結局、立場上&成り行き上(詳細略)、ほとんど買って出るかのごとく私がプロデューサー役を務めることになりました。組織に身を置いて30年。多少は物分かりがよくなっているのです(発表者はじめ関係者の皆さん、実はそんな経緯で申し訳ありません)。

私は番組制作畑の出身ですが、アーカイブ研究についてはほぼ素人。担当チームの先輩たちや審査委員の先生方の意見・指導を仰ぎ、開催の段取りとプログラム内容を少しずつ固めていきました。まさに手探りの“トライアル”だったように思います。
その中でも特に苦心し、印象に残っているのは、発表会のラインナップをバラエティーに富んだものにしようと試みた、「研究分類」です。これは自分のアーカイブ研究への理解を深める意味でもかなり勉強になりました。どんな分類なのかは、冒頭で紹介した報告の中で共同執筆者の宮田章が解説しています。「のっぺらぼうの顔にいくらか目鼻がつく」(=「茫洋としていたアーカイブ研究が分節できる」)ことにつながった、「これまでになかった研究分類」。もともと発表会用の便宜的なものではありましたが、それこそ意味ある“トライアル”になったように思います。今回発表された研究5件の内容(要旨)とともに、ぜひご一読ください。

147-1005-111.pngちなみに、発表会が終了したあとに、発表者・審査委員・来場者が自由に参加できる懇親会を行いました。発表者の皆さんが喜んでくださっている様子、アーカイブ研究に関心のある人たちがつながっていく様子を拝見し、「開催してよかったな」としみじみうれしくなりました。あんなことを思っていたくせに。現金なものです。