#130 アクティブ・ラーニングとメディアとの関係は?
メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之
アクティブ・ラーニングという言葉、ご存知でしょうか? 最近の教育界のキーワードの一つです。
教師が一方的に説明をして生徒が聞くだけの講義型の授業ではなく、子どもたちがグループで話し合ったり、調べたことをまとめたり、プレゼンしたりする、アクティブな要素のある授業です。
授業の中で、生徒が進んで学んでいくこと、仲間と話し合いながら学んでいくこと、学んだことをより深く理解していくことは、小学校を中心にこれまでも進められてきましたが、特に高校の授業で取り入れる動きが盛んです。
新たな学習指導要領(小中高校などで教える内容や目標を示した国の基準)に基づく授業が、小学校で2020年度から、中学校で21年度から、高校で22年度から全面実施されます。そこでは「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という言葉がアクティブ・ラーニングと同様の意味で使われ、重視されています。
『放送研究と調査』6月号の「アクティブ・ラーニング時代のメディア利用の可能性 ~2017年度「高校教師のメディア利用と意識に関する調査」から①~」では、高校の授業でのメディア利用の様子とあわせて、「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業」での、メディア利用について分析しています。
全日制高校で、「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業」をしているという先生は、理科82%、社会83%、国語91%、外国語89%と、調査した教科すべてで8割を超えていました。
しかし、その際にメディアを利用しているかというと、「パソコン」や「プロジェクター」などの機器について、「いずれのメディア環境も利用していない」という先生の割合は、担当教科によって3割から5割。そして、「インターネット上のコンテンツや動画、静止画」「NHKの放送番組」などのメディア教材について「いずれのメディア教材も利用していない」いう先生も3割から5割という結果でした。
イラストにあるような、先生が「電子黒板」などで課題を動画や静止画で提示して、生徒が「タブレット端末」などで調べたりまとめたり発表したりする授業は、あまり多くはないようです。
そこで、アクティブ・ラーニングの視点にたった授業を「よく実施している」先生と「時々実施している」先生、「何度か実施したことがある先生」で比べてみました。教科によって結果はやや異なりますが、「よく実施している」先生のほうが、「パソコン」や「プロジェクター」などの機器についても、「インターネット上のコンテンツや動画、静止画」「NHKの放送番組」などのメディア教材についても、利用が多い傾向があるという結果を得ました。
アクティブ・ラーニングはメディアを利用しなくてもできるものですが、メディアを使うことで可能性が広がりそうです。
『放送研究と調査』6月号の報告では、他にも授業での「NHK高校講座」、NHK for Schoolなどの利用の様子についても調査結果をまとめています。高校の教室でどのようにメディアが利用されているか、興味のある方はぜひご覧ください。