文研ブログ

2018年2月 2日

文研フォーラム 2018年02月02日 (金)

#111 「これからの"放送"」を民放連会長とともに考えます!

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

「電波を使って放送することが絶対ではない」
「本当に電波が必要なのかどうか。(中略)放送の産業構造そのものがどうなっていくのかも見据えた議論をやっていかないといけない」


これは、去年の10月から内閣府の規制改革推進会議で行われてきた議論の一幕です。推進会議では、“放送”について2か月間、8回の集中した議論が行われ、11月末に「第2次答申」が提出されました。
(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/publication/toshin/171129/toshin.pdf)(放送については10 Pを参照)

放送の種類には、テレビでは、地上放送、衛星放送、ケーブルテレビ、IPTVがありますが、この議論で扱われてきた“放送”とは地上放送のことです。地上放送は、事業者に対し日本のあまねく世帯に届けることが法律で定められており(NHKは義務、民放は努力義務)、全国津々浦々に中継局を設置して、みなさんのご自宅まで電波で放送番組を届けています。世界的には、地上放送はケーブルテレビやIPTV経由で視聴することが多く、自宅にアンテナを設置して電波を直接受信する割合は低いのですが(アメリカは約10%、韓国は約1%)、日本の場合は、約半数の世帯が直接受信しています。

地上放送が使う電波については、特定の周波数帯域が割り当てられています。現在割り当てられている周波数帯域はUHF帯と呼ばれる場所ですが、ここは、放送事業者だけでなく多くの事業者にとって使い勝手の良い場所(下図参照)。そのため、次のような問題提起がなされています。<これから需要が大きく増えると見込まれているIoTやAI、データ利用といったさまざまな通信サービスなどに、放送用帯域の中で使っていない場所を活用できないか>、中でも冒頭で紹介した発言は、<地上放送は今後、電波を使う必要はない、つまり専用の帯域を割り当てなくてもいいのではないか> という究極的な指摘ですが、こうしたことも議論されているのです。

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(図)電波の利用状況
(参照: http://www.soumu.go.jp/main_content/000517430.pdf P3)

1月30日からは総務省でも、このテーマで議論が開始されました。放送事業者の監督官庁である総務省、それから事業者自身がしっかりと放送の未来像を考えていこうということで、「放送サービスの未来像を見据えた周波数有効活用に関する検討分科会」と名付けられました。第1回目であったため、本格的な議論はまだ行われませんでしたが、この夏までには一定の方向性を示すとしているのであまり時間はありません。地上4Kはどうなるのか、同時配信はどうなるのか、民放とNHKの共通プラットフォームという考え方はありうるのか、など先読みが難しいテーマについて、どのような議論が行われるのか、引き続き注目して取材していきたいと思います。

こうした状況も含めて来月に実施するNHK文研フォーラム2018では、日本民間放送連盟の井上弘会長にお越しいただき、「これからの“放送”」はどうなっていくのか、をみなさんとともに考えていきたいと思っています。参加の申し込みは、2月2日(金)から文研ホームページで開始しています。ぜひお早めにお申込みください。会場でお待ちしています。