文研ブログ

2016年11月 2日

放送博物館 2016年11月02日 (水)

#51 テレビ機器にみる放送の歩みとこれから

放送博物館 福田 勝

優れたテレビ番組や、テレビに関連するさまざまな業績に対して贈られる「エミー賞」。アメリカのテレビ芸術科学アカデミーが主催し、今年で68回を数えます。ドラマなどの作品賞、俳優賞、監督賞などさまざまな部門がありますが、放送技術の分野で貢献をした企業や団体に贈られる「フィロ・ファンズワース(Philo T Farnsworth)賞」に、NHK放送技術研究所(以下、技研)が選ばれました。この賞は、これまで主にアメリカの大手メディアや企業が受賞しており、アジアからは初めての受賞になります。

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エミー賞 技術部門 授賞式
(10月26日 アメリカ・ハリウッド)

今回の受賞は、東京オリンピック(1964年)の際の日米衛星中継、ハイビジョン、そしてスーパーハイビジョンの研究開発など、技研が手がけてきた放送技術の数多くの成果が評価されたものですが、NHK放送博物館では、テレビカメラなど、これまで技研が開発したさまざまな機器を、一堂にご覧いただくことができます。みなさんも、当館で、放送技術からみたテレビの歩みをたどってみませんか。

まず、博物館2階の「テーマ展示ゾーン」には、東京オリンピックの開催にあわせて開発した機器と、衛星中継(当時は「宇宙中継」と呼ばれていました)の資料や写真を展示しています。中でもひときわ目を引くのが、カラー放送用の大きなカメラ(2IO分離輝度方式カメラ、1964年製)です。カラー映像を、カラーテレビはもちろんのこと、当時ほとんどの家庭で視聴されていた白黒テレビでも美しく映し出せるように開発しました。このカメラで、東京オリンピックの開会式を撮影したのですが、その映像も会場で一緒にご覧いただくことができます。

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1964年 東京オリンピック開会式 カラーカメラ

3階の「ヒストリーゾーン」に展示しているのは、初代・スタジオ用ハイビジョンカメラHDCC-4(1982年製)です。今では、テレビ放送のスタンダードになってしまったハイビジョンですが、その開発は、まさに東京オリンピック開催の1964年から始まりました。人間の視覚特性を細かく分析し、ハイビジョン画面の9:16という縦横の長さの比も、この研究から生まれました。開発当時、初めてハイビジョンの映像を見た人は、誰もがその美しさに目を奪われました。
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1982年 スタジオ用 ハイビジョンカメラ第1号

「ヒストリーゾーン」の最後に並んでいるのが、これからのテレビとして今年8月から試験放送を開始した、8Kスーパーハイビジョン(SHV)の第一号カメラ(2002年製)です。8K対応の最初のカメラということで重量は80kgもありますが、開発から十数年が経ち、今では小型化が進んでいます。このスーパーハイビジョンの映像は、中2階の「愛宕山8Kシアター」でご覧いただけます。臨場感あふれる22.2chの音声とともに、迫力のある映像を体感なさってみてください。

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2002年 8Kスーパーハイビジョンカメラ第1号

 
1964年の東京オリンピックをきっかけに、テレビの技術は大きく進歩しました。そして4年後の2020年、あらためて迎える東京オリンピック・パラリンピックの頃には、どのようなテレビを楽しめるようになっているでしょうか。どうぞ秋の一日、NHK放送博物館で、時代を切り取りこれまでテレビの映像を送り出してきたさまざまな機器に触れながら、4年後のテレビを夢みるひとときをお過ごしになってみてください。


NHK放送博物館

休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1  
TEL  : 03-5400-6900

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