文研ブログ

おススメの1本 2017年08月04日 (金)

#90 メディア利用は特別支援教育の現場でも活発

メディア研究部(番組研究) 小平さち子

6月9日付けのブログ「#82 小学校の教室でよく見られている番組は?」にはお目通しいただけましたでしょうか。日本では学校放送の歴史が長く、現在は放送だけでなくウェブサイト上でも番組が視聴できることや、2016年度には、全国の小学校6年生の担任の先生の6割が『歴史にドキリ』という社会科番組を授業で利用したことなどをお伝えしました。

この調査を行った同じタイミングの2016年10月から12月にかけて、放送文化研究所では、もうひとつ調査を実施していました。それは、特別支援学校(小学部)および小学校の特別支援学級で授業を担当しておられる全国の先生がたを対象としたメディア利用と意識に関する調査です。この調査からも、様々なことが明らかになってきました。

「特別支援学校」や「特別支援学級」では、「通常の学級」の場合と同様、テレビやパソコンをはじめとするメディア機器やインターネット環境が一定程度整っていますが、とくに注目されたのは、特別支援学校の授業でのタブレット端末利用が、通常の学級の場合よりもはるかに浸透していることです。先生だけでなく児童にも利用が広まっています。機器の操作がパソコンより容易で持ち運びも簡単なため、多様な支援を必要とする子どもたち一人一人の学習を豊かにするための有効なツールであるとが認識されているためと思われます。 

90-0804-1.jpg 少人数制の特別支援教育の授業


NHK学校放送(「NHK学校放送番組」やインターネットのサービス「NHKデジタル教材」)の利用に目を向けてみると、『ストレッチマンV(ファイブ)』『スマイル!』などの特別支援教育向けの番組をはじめ、理科・社会等の教科番組、『おかあさんといっしょ』『ピタゴラスイッチ』といった幼児向け番組など、多様な分野の番組が利用されていることがわかりました。

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『ストレッチマンV』
のウェブサイト:番組のストリーミング視聴の他に、「きょうざい」「先生向け」のコンテンツも利用できます。

『ストレッチマンⅤ』は、特別支援教育向け学校放送番組として放送されてきた『ストレッチマン』シリーズの第4作で、2013年から放送中。ストレッチマンと一緒に行うストレッチ体操や遊びを通して、体を動かす喜びを実感し、学習や生活の基礎を楽しく身につけていくことをねらいとした番組です。人を笑わせることや、歌、ダンスなど得意なことが多種多様な5人のストレッチマンが交代で全国の特別支援学校を訪問して、子どもたちと触れ合いながら体操をし、それぞれの得意なことを生かしてストレッチパワーで大活躍しています。
なお、特別支援教育向けテレビ学校放送番組の第一号は、1964年開始の『たのしいきょうしつ』でした。

現在の特別支援教育(2006年までは「特殊教育」と呼ばれていました)の概況、「特別支援学校」や「特別支援学級」の授業におけるメディア利用の詳細、そして「通常の学級」でのメディア利用とはどのような共通点や相違点があるのか等については、『放送研究と調査』8月号に「一人一人の子どもの支援のためのメディア利用~2016年度「特別支援学校(小学部)教師と特別支援学級(小学校)教師のメディア利用と意識に関する調査」から~」と題して報告しています。(ウェブでは、9月に文研ホームページで全文を公開します。)