文研ブログ

おススメの1本 2016年04月22日 (金)

#23 <映像>を<文章>で表現できますか?

メディア研究部(番組研究)宇治橋祐之

テレビで見たニュースやドラマの内容について、見ていない家族や友人に「こんな事件が起きていた」とか「あのシーンがよかった!」と話す機会は日常的にあるのではないでしょうか。番組で見た<映像><言葉>にするのは、そんなに難しくはなさそうです。
では、<映像>を「限られた時間」、「限られた字数」で<文章>にするのはどうでしょうか。
昨年12月、東京都北区立豊川小学校の佐藤和紀先生は、小学校6年生の国語の授業で、「映像を文章で表現する力」を育てる授業をしました。
題材に使っているのは、小学校の授業でよく利用されている、NHK for Schoolというウェブサイト。2000本以上の番組、7000本以上の1-2分の動画クリップを公開しています。

0422-1.png
NHK for School  
www.nhk.or.jp/school


たとえば、「生き物の1年」(理科),「関が原の戦い」(社会科)など、学校で学ぶことがこのウェブサイトの映像を見ることでわかります。
佐藤先生はこうした映像を国語の時間に、「限られた時間」、「限られた字数」で表現することで、情報を読み取り文章で表現する力をつけようとしました。映像を見たあと文章に書く時間は3分間。字数は100字以内です。

もし時間があったらみなさんもやってみてください。題材は「広島と長崎」という2分3秒の映像です。画像の下のタイトルをクリックすると動画が見られます。
繰り返しますが、映像を見た後、3分間で、100字以内です。

0422-2.png
広島と長崎

さて、いかがでしたでしょうか。3分間で100字以内にまとめられたでしょうか。

0422-3.pngこちらは、3か月間、この授業を受けた6年生が書いた文章です。

「1945年8月6日、広島市に原爆が落ちた。一瞬で焼け野原になった。鉄骨がむき出しになった原爆ドームは世界遺産。8月9日は長崎市に原爆が落ちた。8月9日には様々な平和行事が長崎で行われている。」

全部で95字。元の映像を見るとわかりますが、的確に内容をまとめています。
佐藤先生によると、3か月間続けた結果、最初は平均すると50字程度しか書けなかった子どもたちが80 字程度で映像を要約して表現できるようになったとのこと。毎回、自分の書いた文章を隣の子に読み聞かせて、わかりやすいかどうか確認したことで効果が高まったそうです。




 

 
放送文化研究所では、番組を「見て学ぶ」だけでなく、「使って学ぶ」全国各地の試みについて調査や研究をしています。全国の小学校の番組利用の様子については、「放送研究と調査」2015年6月号に掲載されています