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メディアの動き 2023年05月22日 (月)

【メディアの動き】制作会社側がNHKのBS波削減による制作機会の減少に懸念 

4月24日,総務省が設置する「放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ」の第5回会合が行われた。

その中で,全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は,2024年3月にNHKがBS波を削減することについて,懸念と要望を表明した。

BS波削減によって制作機会が失われることに危機感を抱くATPは,外部制作委託や共同制作の比率のいっそうの拡大,そして適正な制作費の確保と総制作費の開示を求めた。

こうした懸念と要望の背景には,国内の製作会社の収益悪化がある。

ATPの調査によると,総売り上げ10 ~ 20 億円未満の製作会社の86%以上が減益(2021年度)であり,特に小規模な会社の経営状態が悪化しているとみられる。

放送をめぐる環境の悪化に対応するためのさまざまな議論の過程で,放送事業者と番組製作会社の間での,制作委託契約や取引価格,さらには著作権の帰属をめぐるトラブルが顕在化し,法令違反の防止,取り引きの適正化は急務となった。

総務省では,適正な取り引きのためのガイドラインの策定・改訂とともに,製作会社等に対応する無料の法律相談窓口を設けるなど,取り組みを進めている。

しかし,NHKが受信料の値下げを決定し,民放各局も番組制作費の削減が相次ぐ中,さらなるしわ寄せが立場の弱い製作会社に及ぶおそれもある。

放送業界がこの悪循環を断たなければ「良質で魅力ある放送コンテンツの製作・流通を促進」することは期待できず,Netflixなど外国資本の動画配信サービスの伸張を止めることは困難であろう。