文研ブログ

メディアの動き 2020年04月03日 (金)

#244 情報が氾濫する時代の「信頼とつながり」を考える

メディア研究部(海外メディア)青木紀美子

新型コロナウィルスの感染が拡大し、各国で外出の自粛要請や禁止令が出る中、需給に問題はないトイレットペーパーが売り切れるという現象が起きました。一時的ながら食料品が棚から消えた国もありました。多くの人が十分にあるはずのものまで買いだめをしてしまう背景には、情報が十分にない、わかりにくい、信頼できないといった不安や疑問、疑念が見え隠れします。「不要不急の集まりは避けて」「外出も自粛を」という呼びかけの受け止め方も大きく分かれました。個別の事情とは別に、リスクのレベル、感染予防策の必要性や有効性などについて、さまざまな情報があり、共通の理解ができていないという問題がうかがえます。

誰もが情報を発信できる時代、情報はあふれているのに、必要な情報を見つけるのが難しい「ニュースのジャングル」状態は今に始まったことではありません。選択肢が限りなくある中で、それぞれが自分の信じたいことを信じ、社会が事実を共有できなくなるという問題も繰り返し指摘されてきました。しかし、未知の部分が多い新型ウィルスの感染拡大で、信頼できる情報を社会が共有することがこれまで以上に重要になり、大量に錯綜する複雑な情報を検証、整理し、意味づけ、何がどこまでわかっているのか、わかっていないのか、それはなぜなのか、背景も含めて説明する役割がメディアに求められています。

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では人々はどのような情報を必要としているのか?発信した情報は理解されているのか?どのような表現や手段で届けるのが効果的なのか?必要とする人の手元に届いているのか?それを知るためには、発信するだけの一方向ではないコミュニケーションが欠かせません。双方向に情報が行き来し、学びがある対話、さらには発信内容や発信方法をともにかたちづくる関係、エンゲージメントが、メディアと市民との間に必要になります。

こうした市民とのエンゲージメントに重点を置くジャーナリズム「Engaged Journalism」の考え方は、今の時代に求められるメディアの役割やありようを考える上で参考になるところがあるように思います。信頼は双方向、メディアを信頼してもらうためには、メディアが市民を信頼して耳を傾けることから始めようという取り組みです。

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エンゲージメントに重点を置くということは、取材から発信までの報道のプロセスを説明し、さまざまな段階に市民と接点を設け、その知見を取り入れることでもあります。

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「放送調査と研究」3月号では、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本でも始まっているエンゲージメントを柱とするジャーナリズムの考え方、実践例を報告しています。