文研ブログ

メディアの動き 2020年01月21日 (火)

#228 放送+通信の"多チャンネル化" 「見たいもの」をどう選ぶ?

メディア研究部(メディア動向)越智慎司

最近、テレビのリモコンに注目するようになりました。放送と通信の融合が進む中で、今のテレビにはNetflixやYouTube、AbemaTVといった動画配信サービスも視聴できるものがあります。そのリモコンには動画配信への専用ボタンがついて、一発で切り替えができます。一方で放送は、従来の数字のチャンネルを選ぶやり方です。専用ボタンは見た目にも訴求力があり、放送はいつまでもチャンネルのままでいいのだろうか、などと考えます。

ケーブルテレビ大手のJ :COMが2019年12月、「J :COM LINK」という新しいSTB(セットトップボックス)の提供を始めました。この機器は、地上波・BS・CSの100チャンネル超の放送に加え、動画配信も楽しむことができます。動画配信アプリは、あらかじめインストールされたもののほか、ダウンロードしてカスタマイズもできます。ケーブルテレビは多チャンネルが特徴の1つですが、さらに“多チャンネル化”することに、どのように対応したのか気になりました。J :COMに取材したところ、視聴履歴などをもとにした「おすすめ」機能を充実したほか、リモコンに音声で伝えて検索する機能では、放送と動画配信の横断検索ができるようにしたということです。

200121.png
                             検索結果のイメージ画面(J :COM提供)

この画面では、大まかなカテゴリーに分かれているものの、おすすめや検索結果が一覧として表示されています。ユーザーにとっては、放送の番組か動画配信のコンテンツかを、あまり意識せず選べる形になっています。「J :COM LINK」のシステムは、Googleのテレビプラットフォーム「Android TV」と、J :COMが独自に開発した横断検索や一覧表示のシステムを組み合わせているそうです。

こうした機器が普及していくと、番組やコンテンツ選びに「チャンネル」という概念がなくなっていく可能性も考えられます。J :COMの担当者にこの点について尋ねたところ、担当者は「J :COMの利用者は年配の方が多いですが、その人たちは今まで通りチャンネルの切り替えで選ぶかもしれません。一方、若い人たちは検索に慣れています。どちらにも快適に使えるプラットフォームを提供したいと思っています」と話しました。STBの機能は、今後も幅広い年代から意見をもらい、アップデートしたいということです。
放送と通信の融合がさらに進んでいく過程が、機器に具体的にどのような形で反映され、ユーザーは「見たいもの」をどのようにして選ぶのか。それも、今後のメディアの動向で注目する重要な点だと思います。
国内のメディアの動きは、こちらから