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メディアの動き 2019年02月08日 (金)

#168 TBSラジオ、番組制作の指標にradikoの聴取データ

メディア研究部(メディア動向)越智慎司


TBSラジオは、ラジオ番組をインターネットで配信するradikoの聴取データを番組制作に活用する取り組みを始めました。

ラジオでは、番組制作や広告取引の指標として「聴取率」が利用されています。聴取率は多くの場合、調査対象者にどんな番組を聞いたかを記録してもらう方法で調べます。首都圏の民放の場合、ビデオリサーチが2か月に一度、1週間にわたって行っている聴取率調査のデータを利用しています。
TBSラジオは番組制作の指標として、こうした聴取率の代わりに、リスナーの動向をリアルタイムで把握できるradikoのデータを活用することにしました。データをグラフなどで見やすくするツールを開発し、1月末から試験運用を始めました。

今回開発されたツールは「リスナーファインダー」という名前で、radikoからTBSラジオの番組をリアルタイムで聴いている人数が画面の中で1分単位のグラフで表示されます。また、延べの視聴分数や性別・年齢層、各SNSで番組がシェアされた数なども表示され、電通が開発したデータ管理プラットフォームにあるデータと合わせると、リスナーの志向性の分析につなげることもできます。TBSラジオのスタッフルームや副調整室にはこうしたデータを表示するモニターが設置されました。TBSラジオは「リスナーファインダー」のデータは外部に公表せず、広告取引にも使わないとしています。

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TBSラジオの三村孝成社長は「radikoと聴取率調査の数字の関係性をずっと見てきたが、ほとんど等しい動きになっており、リアルタイムの数字で企画や演出を検証するほうがニーズに応えられると考えた。今のラジオにとってのテーマは、ラジオに接触していない人をリスナーにすることで、制作者がリスナー開拓のアイデアを出すことに、新しいツールを使っていきたい」と話しています。

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radikoのデータという聴取率に代わる指標を活用しようとするTBSラジオの取り組みが、今後、ラジオ業界にどのような影響を与えるのか、注目したいと思います。