「青年のお礼」

2018年9月3日

作:乃南アサ

2016年7月30日放送のアンコール

幼い息子をなくして何年たっても心の傷を癒すことのできない主婦が、レンタカーで佐渡をドライブする。途中、ヒッチハイクの青年をひろうが、青年はすべての行動がマイペースで、図々しくもある。主婦は腹を立てながらも青年の姿が息子に重なる。話をする内に、青年が自分以外のすべての家族を交通事故で失ったことを知る。お参りに訪れた「賽の河原」で、青年が主婦にした「お礼」とは…。

語り:高橋淳之

「再会のゆくて」

2018年9月10日

作:中原文夫

15年ぶりに初恋の人と再会する2人。
その傍らには、それぞれ自閉症の子どもがいた。
隆夫は、お見合いで結婚した純朴な妻と、息子の障害が固い絆となり穏やかな生活を送っている。一方、真澄は、我が子の障害に理解がなく無関心な夫と離婚。1人で子育てに勤しんでいる。
そんな2人の偶然の再会。隆夫は、以前とあまり変わらない美貌の真澄に当時を想い、胸を躍らせる。真澄は、隆夫には見向きもせず心が揺れる気配も無い。互いに子供中心の平凡な日常が続いたある日。
隆夫は、かつて目にしたことのない、取り乱した真澄の姿を見る。
2人のゆくてに待ち受けるのは・・・。

語り:兼清麻美

「夏のはじまりの満月」

2018年9月17日

作:穂高 明

2016年9月24日放送のアンコール

主人公は、宮城県の海沿いの小さな町で生まれた20代の男性。東日本大震災から10年がたった2021年5月。故郷を離れて東京で社会人となっていた。震災直後、地震と津波で大きな被害を受けた故郷を家族とともに後にした。「自分は故郷から逃げ出した裏切り者なのか?」。そんな後ろめたい思いを抱えながら都会に移り住んだ。
ある日、都内の地下鉄で高校時代の同級生と偶然にも再会する。彼女から伝えられた同級生たちの消息。その時、彼の脳裏によみがえってきたのは、被災地となった故郷の風景と、ひそかに思いを寄せていた同級生の笑顔だった。
震災から10年。「あの日の記憶」と向き合った時、男性は、故郷を流れる川の姿を、隅田川の水面に重ねる。自分の進んできた道は本当に正しかったのか、自問自答をしながら。そして、一つの答えを導き出そうとしていた。

語り:本田俊介

「帰去来の井戸」

2018年9月24日

作:光原百合

大学生の由布の伯母、七重が営む雁木亭には不思議な習慣がある。
町を出てゆく馴染み客に「帰去来の井戸」の水をひとくちだけ飲ませるのだ。
そうすれば、この町を出ても必ずもう一度戻ってこられるという。地球の裏側で死んでも、帰去来の井戸の水を飲んだ人間には迎えの舟が出て、雁木にたどり着くことが出来るというのだ。
雁木とは、岸壁から海に向って作られた階段状の構造のことをいう。
潮の干満の差が大きい海岸では雁木のところに舟をつないでおけば、潮が引いて海面がずっと下がっても段を降りて舟のところまで行ける。
不治の病にかかり、店を閉めることになった七重が由布に伝える不思議な伝説と由布が目撃する幻想的な光景とは・・・。

語り:小野文惠