「沖縄戦下の幼女 みえちゃんからの伝言」

2018年11月5日

作:比嘉淳子

2016年12月3日放送のアンコール

本土(関東)で都会生活をしていた「アタシ」は、3歳と1歳の子どもがいる主婦(夫婦とも沖縄出身)。本土から沖縄本島中部のマンションへと、家族そろって戻ったが、忙しさを理由に家族を顧みない夫とは喧嘩の毎日。ついに夫は家に帰らなくなった。「アタシ」は育児ストレスから娘を叱り、手をあげてしまうようになった。そんなある日、娘が「毎晩、みえちゃんが、首を絞める。助けて」と訴えてきた。みえちゃんは、沖縄戦の時、壕の中で母親にあやめられた幼女の幽霊だった。壕の中で「泣く子は悪い!泣くとアメリカに見つかる」と言われ続けたみえちゃんは、泣いている子を見つけると「泣くと殺されるぞ!」と訴えていたのだ。「アタシ」は気づいた。現代に生きる自分の娘と、壕で戦死した子どもの心に共通する気持ちがあったことに…。

語り:塩田慎二

「殺したい女」

2018年11月12日

作:吉田修一

コインランドリーからの帰り、僕は当時付き合っていた『あかね』とレンタルビデオ店に寄った。あれからもう十数年も経つが、実際になんであんな女と付き合っていたのか、自分でも腑に落ちない。実の父親に「がらっぱち」と言われ兄にマジ蹴りを食らわせ濃い痣をこしらえる。街を歩けば柄の悪い男に声をかけられる。そんな『あかね』は家では炊事洗濯をしっかりとこなし、シーツにアイロンまでかける。しかし、ある日あかねは突然姿を消してしまう・・・

語り:黒田信哉

「モノレールねこ」

2018年11月19日

作:加納朋子

デブで不細工なノラ猫。小学五年生のサトルの家に時折上がりこんでくる。
ある日、猫に赤い首輪がついていることに気がついた。
サトルは「このねこのなまえはなんですか?」とメモを首輪にくくりつけた。
数日後、「モノレールねこ」という一言が書かれていた。
「きみはどこの小学校ですか? サトル」
「学校は水野小学校です。 タカキ」
タカキは毎回ぶっきらぼうな返事だったが、サトルの心の中では親友になった。ある日事件が起きる。モノレール猫が車に轢かれて死んでいたのだ。
サトルはもうタカキにも会えなくなってしまった。
それから十数年の月日が流れ、サトルは社会人になる。
配属先の先輩は若い美人の高木瑤子。部署では性格がキツイと評判だ。
サトルの新人としての仕事に同行した瑤子先輩。実はこの先輩、あのモノレールねこと大いに関係があったのだ・・・。

語り:出田奈々

「よろこびの歌」

2018年11月26日

作:宮下奈都

2016年12月10日放送のアンコール

有名なヴァイオリニストの娘・御木本玲は、幼い頃から母と同じように音楽の道に進み、声楽家になることを信じ、育ってきた。しかし、誰もが合格を信じて疑わなかった音大付属高校の受験に失敗。新設の女子高に進むが、「ここは自分の居場所ではない」と心を閉ざしてしまう。クラスメートと距離を置きながら日々を過ごしていた2年の秋、校内合唱コンクールの指揮者に選ばれてしまい、封印し目を背けてきた「歌」と向き合うことになる…。
思春期の挫折と葛藤、楽しげなクラスメートと自分との距離感。避けてきた他者との交わりの中で少女は、自分の中に閉じ込めていた思いと、「間違い」に気づく。

語り:柴田徹