「蒼い岸辺にて」

2017年5月6日

作:朱川 湊人(しゅかわ・みなと)

 二十歳の早織は、息苦しさから解放され気がつくと、蒼い世界に倒れていた。そこには大きな河があり、古いボートと渡し守の男がいた。男から「自殺した」ことを指摘された早織は、二十年間の無駄だったとしかいえないような人生を振り返る。
 三途の川を渡る際、渡し守は、「未来ゴミ」と呼ぶ“これから掴むはずだった未来”を一つ一つ捨てていく。そこには早織が想像もしていなかった出会いや憧れの職業、夫や子どもが次々とあらわれる。早織はそれらを目の当たりにし、渡し守と会話することで、「あの世」から「この世」に戻りたいと訴えるが・・・。
 新年度が始まり1ヶ月。「五月病」とも言われる憂鬱な気分になりがちなこの時期に、心に元気をくれる作品。

「甚三郎始末記」

2017年5月13日

作:あさの あつこ

 架空の藩、小舞藩が舞台。すれ違った子が泣き出すような醜男、尾上甚三郎がひそかに想っている乙江は、上級武士に嫁いだ。そんな中、甚三郎はお里という遊女と知り合う。お里から「祭りが見たい」とせがまれ、見物へ行く。
 しかし、途中ではぐれてしまい、気付くとお里が武士たちに連れ去られる様子が遠目に見えた。祭りの翌朝、見失ってしまったお里が変わり果てた姿で見つかる。お里をそんな姿にした男の顔に覚えがあった。それはなんと乙江の夫だった…。
 ある下級武士の恋と筋の通し方を描いた物語。

「かがやく」

2017年5月20日

作:帚木 蓬生(ははきぎ・ほうせい)

2015年9月5日放送のアンコール。
「退院せえというのは、わしに死ねということですね」
大学病院からの赴任先である病院のアルコール病棟。そこで働く若き精神科医の「ぼく」が出会った患者の宮田さんは、22年間病院で過ごす素行もすこぶる良い長期入院患者。「ぼく」は、主治医になってすぐ宮田さんに退院を促したのだが、返ってきた言葉は厳しいものだった。
 宮田さんは腕の良い炭鉱夫として働き続けたが、アルコール依存から抜け出すことができず、度重なる入院をくり返した末、長期入院に落ち着いた患者だった。そんな宮田さんだが、病院では職員を手伝って良く働きアルコールを断つこともできている。
 宮田さんが毎年植え続けるチューリップを通して交流していく精神科医の視点から、宮田さんが癌で亡くなるまでの医師としての心の機微を描く。

「邪魔っけ」

2017年5月27日

作:平岩 弓枝

2015年7月11日放送のアンコール。
 おこうは豆腐屋の長女で、母親が早死にし、妹弟を母親代わりになって育ててきた。甘やかされて育った妹弟は怠け癖がつき、姉のおこうを「邪魔な存在」に感じる。
 一方、仕出し屋の若旦那・長太郎は父親の急死後、半年で店が傾いてしまった。長太郎は店を立て直そうと一念発起、おこうに自分と夫婦になって仕出し屋を盛り立てて欲しいと求婚する。
 さて、おこうのいない豆腐屋はどうなるのか…。

  語り:清水 紀雄