「花丼」

2012年1月7日

作: 明川 哲也

とある町にある川沿いの一軒の小さな食堂「大幸運食堂」。主の継治(つぐはる)さんが 一人で営む店は、かつてはそこそこ繁盛していたが、近所の大型スーパーが閉店して以降客足が途絶え、経営はかなり厳しい。おまけに、農業を営む兄から送りつけられた食用の「菊の花」の箱が山積みで、どうすれば処理できるのか途方に暮れる。ついには、「いっそのこと首でも吊ろうか」と思いつめるようになる。
そんなある日、いつものように河川敷を散歩していた継治さんは、川の中で膝まで水につかりながら、さらに深いところに進んで行く男を見かけた。

「大幸運食堂」(PHP研究所)所収

「越年」

2012年1月14日

作: 岡本 かの子

年末、ボーナスが出て会社全体の気分が弾んでいた時、主人公・加奈江は、突然近づいてきた男性社員に頬を平手打ちされる。男は堂島と言い、加奈江には殴られるような覚えはない。悔しく思った加奈江は翌日、課長にそのことを訴えるが、堂島は辞職したという。殴られたままではいられない。堂島を探し出して、真意を問いただしたい加奈江だったが、会社を辞めた堂島の住所を知るものはなかった。
「銀座に一緒に飲みに行ったことがある」という元同僚の話をたよりに、加奈江と友人の明子は毎晩、銀座を歩くようになる。しかし、堂島は見つからず、年が明けてしまう。
そして、正月・・・。

「老妓抄」(新潮文庫)所収

「イラクサの庭」

2012年1月21日

作: 堀江 敏幸

2011年1月8日放送のアンコール。
山あいの小さな町「雪沼」に一人移り住んで料理教室を営んできた小留知先生が亡くなった。独り身であった先生の、雪沼に居を定めるまでの前半生は、どこか孤独の影を帯び、長年連れ添った弟子にもわからないことが多かった。弔いを済ませ、彼女の思い出を語り合う中で、小留知先生が最期に言いかけた言葉の意味が次第に明らかになってくる。

「雪沼とその周辺」(新潮文庫)所収

 語り:山田 敦子

「モノグラム」

2012年1月28日

作:江戸川 乱歩

2011年11月12日放送のアンコール。
栗原一造は、ある日公園のベンチに腰掛けて暇をつぶしていた。すると一人の青年が近づいてきて、「どこかでお会いしましたね」と話しかけてくる。栗原もそう言われると青年になんとなく見覚えがあるのだが、誰だか思い出せない。
二人はベンチに腰掛け、出身地や名前、旅行した先などを話してみるが、つながりは全くない。しかし、二人ともどうにもお互いの顔を見知っている気がしてならないのである。
数日後、二人には意外な接点があることが明らかになる。

「江戸川乱歩全集18」(桃源社)所収