「三年目」

2017年9月2日

作:山本 周五郎

 広田屋伊兵衛のもとで子飼いの頃から働く大工の友吉は100人に1人と言われる腕利きの職人。伊兵衛は娘のお菊と友吉を夫婦にして広田屋を盛り立ててもらいたいと考えていた。ケガがもとで死に際にあった伊兵衛は、友吉の唯一の悪癖、博打をやめるよう頼む。友吉は博打仲間との縁を切るべく、お菊を弟分の角太郎に預け、江戸を離れる決心をする。
 三年後、江戸へ戻った友吉を待っていたのは、角太郎とお菊が夫婦になったという噂話。大雨の中、2人を捜し、深川の町を歩きさまよう友吉。やっと見つけた2人が住む家で知った驚きの真相とは…。

「鳥を運ぶ」

2017年9月9日

作:角田 光代

 主人公の「私」は、入院した母親にかわって、母が飼っていた鳥を預かることになる。面倒なことと思いながら久しぶりに訪ねた実家。6羽の鳥を運び出すのを手伝ってくれたのは1ヶ月前に離婚したばかりの健一だった。
「私」は離婚したことを母に言えずにいた。鳥が思い出させる、母の愛情。父を亡くし、ひとりで鳥をかわいがっていた母のさびしさ。母の命そのものであるかのような鳥を運びながら「私」の心に母への思いがこみ上げる。

「モウレン船」

2017年9月16日

作:熊谷 達也

 昭和27年。かつてカツオ遠洋漁船にも乗り、大海原こそ我が仕事場と自負した漁師・勘治。40歳近い今、沖へ出ると身体の底から震えるような恐怖に取りつかれるため、沿岸で小遣い稼ぎのような漁をして暮らしている。幼なじみの漁師から戦後再開された遠洋漁業に誘われても、「怖い」とは打ち明けられず、ケンカ別れして霧の中に舟を漕ぎ出す。
舟を漕ぐ勘治の心に去来するのは、戦争で味わった過酷な経験と、誰も救えなかった無念さだった。ふと気がつくと、手こぎ船が一艘追いかけてくる。幽霊が乗っているという「モウレン船」なのか? 懸命に漕ぐ手を速める勘治の眼に映ったものは・・・。

「デートまでの道のり」

2017年9月23日

作:瀬尾 まいこ

2015年10月10日放送のアンコール。
保育園で年長組を受け持つ“祥子先生”は、担任する“カンちゃん”の父親・脩平と交際している。早くに母親を亡くしたカンちゃんは、保育園から逃亡したり、女の子の鞄にカエルを入れたりするいたずらっ子で、祥子にもなついていない。祥子は途方に暮れるばかり。脩平から「3人で遊びに行こう」と提案されても断り続けている。3人でのデートはかなうのか、それぞれの心模様を温かく描く。

「友は野末に」

2017年9月30日

作:色川 武大

2015年8月1日放送のアンコール。
五十歳を過ぎた「私」は、一人また一人と友の死を知るようになった。そこに、30年来音信不通だった「大空くん」の訃報が届く。「私」自身はナルコレプシー(睡眠障害)を抱え、夢と現の間にあって、しばしば「大空くん」や彼の母親との交流を実感するようになっていた。彼の人生は一体どんなものだったのか、深く交わる事なく終わった友人への思いをしみじみと描く。

語り:徳田 章