「小さなレストラン」

2017年3月4日

作:北 杜夫

歯の治療中の私は、家から徒歩15分の歯科への道すがら、一軒のほんの小さなレストランを見つける。ショーウインドーに並ぶ料理に並々ならぬ興味を抱くものの、扉には「本日休店」という木札が下がっていた。その後も、店を気にしつつ歯の治療を続けたが、道中では相変わらず「本日休店」の札がかかる。そんなある日、目に入った「只今準備中」に胸を躍らせ、歯科での治療後、店へと向かった。期待と不安を抱えレストランの扉を開くと、そこは見るからに安食堂。店で一番高価な「ビフテキ」を注文するが、果たしてその味は…。

「天国のベル」

2017年3月11日

作:石田 衣良

ある朝、突然耳が聞こえなくなった息子。母親の尚美は、病院で心因性の難聴であること、そしてなぜか「電話のベル」の音だけは聞こえるということを知る。2年前、事故で夫を失ってから、一人で必死に2人の子どもを育ててきた尚美。気晴らしになればと、病院で知り合った家族に誘われて家族旅行に出る。旅先の部屋で、息子が突如とりあげた電話。そして、その電話を置いた後、息子が語り出した言葉は、生前知ることができなかった亡くなった夫の気持ち、そして家族へのメッセージを伝えるものだった。

「はるか」

2017年3月18日

作:北村 薫

2016年3月12日放送の再アンコール。
町の本屋の2代目、英造は、駅前の一等地のパン屋兼スーパーが店じまいするので後を探しているという商工会の話を聞き、思い切って、中西屋の店を出すことにした。学生時代の友達が開店祝いに贈ってくれた現代版画を飾った明るい店は、地の利もあって駅の乗降客が毎日何人か寄っていく。新しく雇ったパートの奥さんや短大生などの中で一際元気なのが、高校生の柳田はるかさん。変わらない毎日に何かしらエピソードを巻き起こすのだった。

「日曜日の新郎たち」

2017年3月25日

作:吉田 修一

親類の結婚式で九州から上京してきた父が、主人公の男性に「東京見物」に連れて行けと言い出す。観光などに全く興味がなく、絵にかいたような九州男児だった父。3年前に母が他界して、頑固者だった父はすっかり変わった。披露宴で酔いつぶれて帰ってきた父は「忘れようとすればするほど忘れられん」とつぶやく。主人公も、かつて事故で亡くした婚約者のことをいまも忘れられない。突然の死に打ちひしがれていたとき、父が不器用ながら励ましてくれたことを思い出す。婚約者を亡くした主人公の男性と、連れ合いを亡くした頑固な父との心の交流の物語。