「私のお尻」

2017年6月3日

作:西 加奈子

 主人公は30歳の女性。「お尻」専門のパーツモデルとしてストッキングや下着、エステサロンなどのモデルを勤めている。パーツモデルとしてスカウトされるまでの20年以上、自分に自信が持てず地味に生きてきた。
“特別なお尻”モデルとして活躍するようになって彼女の生活は一変。高級マンションに住み、人生初の恋人を得て、人並み以上の生活を手に入れるようになった。
 しかし自分自身よりも「お尻」が称えられるようになればなるほど、自分の一部である「お尻」に対して愛憎を抱くようになる。そんな葛藤を抱えて彼女は「お尻」を手放す決断をするのだが…。

「街の分かれ道」

2017年6月10日

作:阿刀田 高

 研究者の卓也は二十数年ぶりにかつて住んでいた街を訪れる。大学を出て海外留学し、それなりの評価を得るようになった卓也は、懐かしい街並みを歩きだす。たびたび通ったコーヒーショップは昔の名のまま営業を続けていた。
 卓也にはこの店で偶然出会った、美貌と人柄が評判の令嬢との、ささやかだが大切な記憶があった。令嬢は、高台に登っていくと現れる高級住宅街の邸宅に住んでいた。その父親は“伯爵”と呼ばれる資産家で高貴な雰囲気の一方、気さくな性格で街 の人々から親しまれていた。卓也はひょんなことから伯爵と麻雀卓を囲んだことがあった。その時、“伯爵”が呟いたひと言が、卓也に別の人生の可能性を感じさせたのだった。あの花のように美しい令嬢とともにあったかも知れない“別の人生”を …。

「雨を聴く午後」

2017年6月17日

作:髙田 郁(たかだ・かおる)

 バブル時代に証券会社に就職した主人公の忠(ただし)は、勧誘した顧客が大損をして自殺してしまうという過去を持つ。ある日、忠はその息子たちに出会って暴行を受け、傷ついた心身でかつて大学時代を過ごしたアパートにたどり着く。忠は、部屋のスペアキーを偶然にも捨てずにとっていた。
 後日、部屋を訪ねた忠は、罪の意識を感じながらも鍵穴にキーを挿し、回してしまう。懐かしい部屋をたびたび訪れては癒される忠だったが、ある日、部屋の主の秘められた懸命な姿を知り、衝撃を受ける。

「天正鉄仮面」

2017年6月24日

作:清水 義範

2015年9月12日放送のアンコール。
 「そいつの顔には、鉄で作った仮面がかぶされているんだそうで、めしを食うときでさえ仮面が外されることはねえのだとか…」
 時は天正十三年。織田信長が本能寺の変で倒れてから六年後。大盗賊・石川五右衛門はある噂を耳にする。「大阪城の秘密の牢に鉄仮面をかぶった囚人がいる」というのだ。その秘密にふれたものは全て消されてきた…。
 この秘密を暴けば豊臣の天下がひっくりかえるかもしれねえ!石川五右衛門は単身、大阪城・鉄仮面の秘密に挑む。
 フランス王朝をゆるがした「バスティーユの鉄仮面」をモチーフに、天下の盗賊石川五右衛門が挑む大阪城の秘密を軽快に描いた時代小説。