「箱の中」

2017年4月1日

作:折口 真喜子

江戸時代、京の寺。亡くなった祖母が「絶対に開けてはいけない」と言い残した小さな茶箱。大掃除中に箱を見つけた孫のおりんは、その中身が気になって仕方がない。「おばあちゃんかんにん」と手を合わせて封を切ると、箱の中には膝を抱えた赤い『小鬼』がいた。小鬼が語る祖母の秘密とは…。俳人・与謝蕪村が出会った愛おしい人々と妖(あやかし)を描いた 連作集「恋する狐」から、「箱の中」を紹介する。

「必要のない人」

2017年4月8日

作:内館 牧子

55歳の主人公は、新聞社の印刷現場から子会社のカルチャーセンターに出向を命ぜられた。子会社でも一日も休むことなく職場に通っていたが、2週間を過ぎたころから、ひどくみじめな思いに悩むことが増えた。具体的な原因は何もなかったが、新聞社にいたころのような「おれは必要とされている人間だ」という昂揚感がどうしても持てなくなっていたのだ。そんな夫に、妻は「お願いだからもう少し前向きに生きてよ」と忠告してしまう。働きがい、老い……。人生の大きな流れのなかで、揺れ、惑う、男と女を描いた作品。

  語り:金野 正人

「時計屋の息子」

2017年4月15日

作:宮本  輝

大阪の商店街「夢見通り」で時計店を営む村田英介は、息子の哲太郎の幼いころからの手癖の悪さに手を焼いていた。“左手小指の痺れ”は6年前から始まった。哲太郎が店の時計や貴金属を盗み始めたことに気づいてからの“症状”である。その息子がやがて商店会の組合長の一人娘と駆け落ちする。急展開する現実と、前に進もうとする息子の意志をどう受け入れるか、苦悶する英介の姿を描く。

「母の言霊」

2017年4月22日

作:谷口 雅美

2013年5月11日放送のアンコール。
東京都内のエレベーターの管理会社に勤める主人公の鈴木正彦。会社の野球部の会計係を担当していたが、度々、先輩社員から「備品を買う」と言われ、部費を渡していた。しかし、監査によって、買ったはずの物品が存在しなかったことが明らかになった。社長から自宅待機を命じられた正彦。そのことを妻には話したが、近くに住む母には話すつもりはなかった。それを妻が口を滑らせ母にばれることに。事情を知った母は、勤め先を早退。正彦の会社の社長に息子の潔白を訴えに向かった。

「恩を返す話」

2017年4月29日

作:菊池 寛

2006年10月15日放送のアンコール。
江戸時代、島原での戦の際、熊本・細川藩の神山甚兵衛は、ライバル・佐原惣八郎に命を救われる。早く恩を返したいと焦る甚兵衛だったが…。1917年、菊池寛28歳で発表した作品を、作者のプロフィール紹介とともに朗読する。

  語り:伊藤 健三