「あなたに会いたい」

2016年7月2日

作:浅田 次郎

自らの会社を海外展開する企業に成長させた内藤。東北の地で開催されたシンポジウムでの講演後、大学進学以来一度も帰らなかった故郷の農村を訪ねる。レンタカーを運転し、カーナビのおすすめルートに従っていくと、車は見覚えのある場所へ入っていく…。 内藤には苦い記憶があった。故郷とともに無残に捨て去った女性がいたのだ。内藤の耳に、長年封印していた女性の声がよみがえる…。「あなたに会いたい」。

「碁盤の首」

2016年7月9日

作:池波 正太郎

信州・真田藩の馬場主水は武勇に優れるが、通りすがりの百姓の娘に乱暴を働いた罪で牢に押し込められる。藩主・真田信幸の思いに反して、主水は牢を破り脱走する。朋輩の小川治郎右衛門は心を痛めるが、主水は幕府に対し真田一族を讒訴してしまう。真田家への疑いは晴れるが、治郎右衛門は藩主・信幸から山里へ蟄居させられる。 三年後の夜、治郎右衛門のもとに、脱走した主水が突然訪れる。主水が一番負け越している碁の決着をつけようと、夜陰に乗じて舞い戻って来たのだ。治郎右衛門は手作りの碁盤で歓待するのだが…。

「カワイイ、アナタ」

2016年7月16日

作:髙村 薫

2014年6月14日放送のアンコール。
ある刑事が、20代の頃に先輩から聞いた話をなぞる。先輩によれば、20年ほど前、山田某と名乗る初老の男が交番を訪れた。山田某は目の前を走る少女が落とした財布を拾って交番に届け、それがきっかけで少女に恋心を抱く。 妄想の中で「カワイイ、アナタ」と呼びかけ、遂には渡すあてもない赤いハイヒールまで買ってしまったというのだ。果たして、先輩の話は本当で、山田某という人物は実在したのか…。

「生霊」

2016年7月23日

作:久生 十蘭

2015年8月22日放送のアンコール。
飛騨の奥に咲く美しい栃の木の花を見ようと旅に出た画家・松久三十郎。たどり着いた荻町(現・岐阜県白川村)で、不思議な体験をする。里の盆踊りを見物に行く途中、段々畑で踊る美しい娘、君子と出会い、あまりの艶っぽさに自分を化かしに出た狐に違いないと…。ところが話してみると君子は東京から村に戻ってきていた元・画家の卵で、向こうも三十郎を狐だと思っていたという。それは、三十郎が2年前に戦死した君子の兄にそっくりだったからだ。  君子は、三十郎に不思議なお願いをする。「兄のお精霊」になって祖父と祖母に会ってやってほしいと。かくして三十郎は「生霊」になることになって…。

「青年のお礼」

2016年7月30日

作:乃南 アサ

幼い息子をなくして何年たっても心の傷を癒すことのできない女性が、レンタカーで佐渡をドライブする。途中、ヒッチハイクの青年を車に乗せるが、青年はすべての行動がマイペースで、図々しくもあった。女性は腹を立てながらも青年の姿が息子に重なる。話をする内に、青年が自分以外のすべての家族を交通事故で失ったことを知る。お参りに訪れた「賽の河原」で、青年が主婦にした「お礼」とは…。

語り:高橋 淳之