BS放送

3月2日(土)午後4時00分~午後5時45分

「時をかける少女 4Kデジタル修復版」

原田知世の映画デビュー作。
筒井康隆の原作をもとに、大林宣彦監督が個性あふれる演出で時空を超える力を持ってしまった少女の不思議な体験を描く、大ヒットSF青春映画。

4K推しポイント!

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今回ご紹介するのは、80年代を代表する大ヒットSF青春映画「時をかける少女」(1983)。
舞台は広島県の尾道。高校生の芳山和子は掃除当番の土曜日、実験室で不審な音を聞き床に落ちていたフラスコに手を伸ばしますが、ラベンダーの香りに包まれて気を失ってしまいます。その日から和子は不思議な体験をするようになり…。
時空をこえるタイムリープ、淡い恋と青春の物語は、アニメも含めこれまでに9回も映像化され、本作に影響を受けたアニメやコミックは数え切れないほどの名作です。

主人公・和子を演じるのは映画初主演の原田知世。撮影当時15歳、ボーイッシュなショートヘアに凛(りん)としたたたずまい、あどけなさを残しながらも淡い恋に胸をときめかせる少女を見事に演じ、一躍スターになりました。
監督は2020年に82歳で亡くなった広島県尾道市出身の大林宣彦監督。少年時代から映画に魅せられアニメなどの映画を製作、大学入学で上京後も8ミリフィルムや16ミリフィルムで前衛的な映画を発表するなど、自主映画界で注目されていました。その後コマーシャル製作に携わり、チャールズ・ブロンソンはじめハリウッドスターを起用したCMが話題となると、1977年には初の長編商業映画「HOUSE」を発表。CMや自主製作などで培ったポップな映像センスのホラーファンタジーは日本映画界に新風を吹きこみ、一躍注目されました。「時をかける少女」は、「転校生」(1982)「さびしんぼう」(1985)と並び、出身地を舞台にした「尾道三部作」ともいわれています。本作の大ヒット後、40本以上の映画を発表したほかドラマやミュージック・ビデオ、数々のテレビ番組にも出演。80年代以降、もっとも広く知られる映画監督の一人として活躍しました。なかでも本作は、大林監督の評価を決定づけた代表作として今も愛されています。

そんな大林監督の映画への熱い思いがこめられた本作は、さまざまな遊び心にあふれています。冒頭、和子たちがスキー場にいる場面の画面サイズはほぼ正方形の“スタンダード”で、映像はモノクロ。サイレント時代はじめ、創成期の映画の多くはこうした画面サイズ・モノクロで製作されていたことを踏まえています。そしてスキー場から帰る列車の場面から次第に色がつきはじめ、黄色の菜の花畑でカラーに変わります。
画面サイズはクレジット・タイトルが終わるといわゆる“レターボックス”とよばれる横長になり、和子が大人になってからのエピローグでは、カラーのまま再び正方形に近い“スタンダード”になります(この場面では、大林監督が敬愛するアルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」(1958)と同じカメラワークで演出されたショットも登場します)。
さらに、スローモーションや“コマ落とし”とよばれる映像効果、特撮であることを強調するかのようなショットなど、映像には随所にさまざまな仕掛けが施されています。撮影の阪本善尚はCM時代から組んでいる名コンビ。プロフェッショナルの技で大林監督のアイデアを見事に実現しています。また照明の渡辺昭夫とともに、ピンクやオレンジ、黄色、セピア調の色彩を柔らかく表現する色彩を作りあげています。
今回の放送はオリジナル素材をもとにした、4Kデジタル修復版。
音響も劇場公開時はモノラルでしたが、今回は映画会社(権利元)が新たに制作した5.1サラウンドでの放送です。大林監督とスタッフの遊び心あふれる映像美とあわせて、ぜひ4K放送でお楽しみください!