BS放送

12月29日(金)午後10時30分~午前0時34分

「戦場のメリークリスマス 4K修復版」

坂本龍一、デビッド・ボウイ、ビートたけし共演。
鬼才・大島渚監督が第2次大戦下の日本軍の俘虜(ふりょ)収容所を舞台に、異文化の男たちの衝突と愛を描く傑作戦争映画。

4K推しポイント!

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今回ご紹介するのは、今年3月に亡くなった坂本龍一と、ビートたけし、デビッド・ボウイの共演が話題となった「戦場のメリークリスマス」(1983)。

舞台は第二次大戦下の日本軍俘虜(ふりょ)収容所。日本軍の軍曹・ハラは粗暴ですが、日本語を話す英国軍のロレンスには心を許しています。一方、所長のヨノイ大尉は俘虜としてやってきた英国軍のセリアズの反抗的な態度に悩まされながらも、次第に心をひかれていきます…。
激しい銃撃戦や大爆発といった戦闘シーンは一切なく、異なる国に生まれ異なる文化や価値観を持つ男たちの衝突し争う姿が緊張感を持って描かれます。男たちが互いを理解し、受容するクライマックスが圧倒的な感動を呼び起こす、異色の戦争映画です。

何といっても話題となったのは、映画俳優ではない3人のキャスト。
ヨノイ大尉を演じたのは、70年代後半、細野晴臣、高橋幸宏と結成したバンド・YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)で世界的に注目されていた坂本龍一。それまで演技経験はありませんでしたが、大島渚監督の演出に見事に応え、無表情とも思えるクールさの下に、若くして所長となったエリート軍人の苦悩やセリアズへの恋慕と、複雑な感情をもつヨノイを体現しています。
ビートたけしは、当時、漫才コンビ・ツービートをはじめ人気タレントとして、テレビやラジオで大活躍中。粗暴でありながらも素朴で、イギリスの軍人・ロレンスと友情を交わす日本兵を演じ切りました。撮影中は大島監督の演出を観察していたというたけし、本作の6年後には監督主演作「その男、狂暴につき」(1989)で映画監督デビューを果たし、その後世界的な映画作家となりました。
セリアズを演じたデビッド・ボウイはブリティッシュ・ロックを代表するミュージシャンですが、表現者として演技にも深い関心を寄せていました。大島監督はニューヨークでボウイ出演の舞台劇「エレファント・マン」を見てオファー、ボウイも大島作品のファンで、出演を快諾しました。軍人としてのプライドを持ちながらも、故郷イギリスで弟との複雑な関係に苦悩を抱え、暗い一面も持つ青年セリアズはボウイにピッタリ。本作の後もボウイは「ラビリンス 魔王の迷宮」(1986)はじめ、さまざまな映画に出演しました。

撮影監督は成島東一郎。吉田喜重監督の「秋津温泉」(1962)などの文芸作品では端正な映像美、篠田正浩監督の「心中天網島」(1969)では幻想的な映像美と、多彩な作品を手がけた日本を代表する名撮影監督です。本作では、ジャングルや木々の緑や明かり・陽光のオレンジ、夜の場面では青を基調にしたリアリティーを感じさせながらも、現実離れした美しさや色彩を感じさせるカラー映像を作り上げています。収容所の場面では柔らかく、ボウイ演じるセリアズの過去の場面はシャープな映像とすることで、現在と過去、幻想とも感じられるさまざまな場面が交錯する映像美となっています。
シンセサイザーを使い、美しくもはかなさを感じられる音楽は坂本龍一。出演をオファーされた坂本は、音楽も担当することを大島監督に提案、自身初の映画音楽となりました。物語をドラマチックに盛り上げ、なかでも主題曲は数ある坂本の音楽のなかでもひときわ人気の高い曲になりました。本作での音楽は世界的にも高く評価され、イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」(1987)でアカデミー賞を受賞するなど、数々の映画音楽を手がけました。
今回の4K放送は5.1サラウンドでの放送です。美しい映像と音楽、異色のキャストが織りなす名作を、ぜひ4K放送でお楽しみください!

※大島渚監督の「渚」は、正式表記では つくりにあたる“者”の中心に点があります。パソコンの環境によって正しく表示できない場合があります。