BS放送

10月14日(土)午後1時00分~午後3時00分

「太陽がいっぱい」

アラン・ドロンの世界的な人気を決定づけたサスペンス・ロマン。
金持ちの友人を殺害し、彼になりすまそうともくろむ青年の完全犯罪を鮮烈に描く。音楽はニーノ・ロータ。

4K推しポイント!

おすすめ映画の4K見どころをご紹介

今回ご紹介するのは、フランス映画を代表する大スター、アラン・ドロンが世界的人気を確立した犯罪映画「太陽がいっぱい」(1960)。
貧しい青年トムは、アメリカ人フィリップの父に頼まれ、アメリカに連れ戻すために行動をともにしていました。裕福で放とう生活を送り、友人と言いながらもトムを見下すフィリップ。フィリップへの愛憎が渦巻くなか、トムはフィリップを殺害し、財産を奪う完全犯罪を計画します…。トムを演じたアラン・ドロンは撮影当時23歳。貧しさへのコンプレックスや虚無感、冷酷に犯罪を企てる孤独な若者を繊細に表現しています。
4K版ではリリカルに表現されるドロンはじめキャストの表情や、イタリア各地で撮影された陽光きらめく映像美が楽しめます。

端正な顔だち、射るような青い瞳。香り立つ色気に女性も男性も憧れ、日本でも絶大な人気だったアラン・ドロン。1935年パリ郊外に生まれ、複雑な家庭環境から学校も転校を繰り返し、10代で海軍に志願。除隊後は放浪生活を送りさまざまな職業を経験した後、俳優を志し、1957年公開の「女が事件にからむ時」(1957)で映画デビューを果たしました。本作で世界的なスターとなり、同じ年にはイタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の「若者のすべて」(1960)にも出演。演劇学校や大学などで学んだのではなく、自らの経験から確立された演技は、巨匠たちにも高く評価されました。
本作での、深い闇を感じさせる虚(うつ)ろで孤独な表情、見下され怒りを内に秘めた表情、ふざけているのに笑っていない笑顔、そしてラスト…。
大げさな演技ではなく繊細に表情を変えることでトムの感情に寄り添う、リアルで自然なドロンの演技が4K版でより鮮明に堪能できます。

脚本も手がけたルネ・クレマン監督は1913年生まれ。ドキュメンタリーや短編映画を発表後、第2次大戦下の鉄道員たちのレジスタンス活動をドキュメンタリータッチで描いた「鉄路の斗い」(1946)で長編デビュー。文芸ドラマ「居酒屋」(1956)、子どもが主人公の反戦映画「禁じられた遊び」(1952)などで知られるフランスの名監督です。
本作ではイタリア各地でロケを行い、魚や野菜などの市場のにぎわいやお祭りをドキュメンタリーのように撮影して作品に取り入れ、リアリティーを感じさせる演出をみせています。

クレマン監督のドキュメンタリー的演出を実現したのが、フランスの名撮影監督アンリ・ドカエ。1915年生まれのドカエもドキュメンタリー出身で、状況に応じて機敏に撮影する自由闊達(かったつ)なカメラワークと簡素な照明のリアリティーあふれる映像が得意です。ロケ撮影が印象的なフランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」(1959)、クロード・シャブロル監督の「いとこ同志」(1959)といったヌーベルバーグの傑作、フレンチ・ノワールの巨匠ジャン・ピエール・メルヴィル監督の名作の映像美を作りあげました。
また本作のカメラ・オペレーターは、のちにクロード・シャブロル監督の数々の作品を手がけた名手ジャン・ラビエです。実際に海で(おそらくは手持ちカメラで)撮影されたヨットの場面の、太陽光に輝く波など自然の光をとらえた的確なアングルや、登場人物を違和感なく配置した完璧な構図にもぜひご注目ください!