BS放送

9月22日(金)午後9時45分~午前0時10分

「カリートの道」

アル・パチーノ主演。鬼才ブライアン・デ・パルマ監督が、更生しようと思いながらも暗黒街の抗争に巻き込まれてしまうギャングの悲哀を華麗な映像美で描く傑作犯罪ドラマ。

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今回ご紹介するのは、名優アル・パチーノがプエルトリコ系ギャングを演じる犯罪アクション大作「カリートの道」(1993)。
原作はニューヨーク最高裁判所の判事だったプエルトリコ系のエドウィン・トレスが、実在の人物や出来事を元に創作した小説で、70年代にトレスの小説を読んだパチーノはカリートを演じたいと希望していたそうです。
イタリア系のパチーノは、イタリア移民の一代記「ゴッドファーザー」(1972)で大スターに。「ゴッドファーザー」以降、登場人物の民族性に焦点をあてたギャング映画が盛んになり、パチーノは「スカーフェイス」(1983)でキューバ出身のギャング、トニー・モンタナを演じました。その「スカーフェイス」のブライアン・デ・パルマ監督と10年ぶりに組み、再びラテンアメリカ系ギャングを演じたのが本作です。

傑作ホラー「キャリー」(1976)や名作アクション「アンタッチャブル」(1987)、ベトナム戦争が題材の「カジュアリティーズ」(1989)、トム・クルーズ製作主演の大ヒット作「ミッション:インポッシブル」(1996)など、幅広いジャンルの作品を発表しているデ・パルマ監督。大胆で斬新なカメラワークと編集、スローモーション、同一画面でピントを変えたり、フィルターを使って画面の手前にも奥にもピントをあわせたりするなど、さまざまな技法を駆使して映像で物語を語る演出が特徴で、4K版ではさらに迫力を感じられます。スタイリッシュな演出は世界中に熱狂的なファンを生み、クエンティン・タランティーノやノア・バームバック(話題作「バービー」(2023)で製作総指揮・脚本を担当)といった映画作家にも影響を与えています。

物語は、パチーノ演じるカリートが銃で撃たれるモノクロの場面から始まります。天井の明かりをとらえたカメラは、アクロバティックに回転しながらストレッチャーで運ばれるカリートの表情へ。冒頭から登場人物の感情を映像で語るデ・パルマ監督ならではの演出が印象的です。
そしてクライマックス、カリートが全財産を持ってゲイルとマイアミ行きの列車に乗ろうとする場面。ギャングに追われるカリートは地下鉄でグランド・セントラル駅に向かいます。地下鉄の車内を走り追っ手を振り切ろうとするカリートと、カリートをしとめようとするギャングたち。グランド・セントラル駅のエスカレーターで激しい銃撃戦となるまで、カメラはカリートと並走したり、追っ手のギャングの視点になったり、巨大な駅の空間を生かした緊迫感あふれる場面が続きます。エスカレーターでの高低差、垂直の空間を強調した銃撃戦。およそ10分にわたってセリフはほぼなく、縦横無尽で機敏なカメラワークと自在な編集、効果音とパトリック・ドイルの音楽が、デ・パルマ監督ならではの迫力のアクション、映画ならではのエモーショナルな場面を作りあげています。

カリートがディスコを経営しているとあって、さまざまなダンスチューンが使われている本作。音楽スーパーバイザーはジェリービーン・ベニテス。プエルトリコ系で70年代からディスコ/クラブDJとして活躍し、80年代には音楽プロデューサーとしてマドンナをはじめ、デビッド・ボウイ、ポール・マッカートニーなどさまざまなアーティストのダンス・リミックス版の制作を手がけました。マーク・アンソニーやエクトル・ラボーのサルサ、オージェイズやBTエクスプレスなどのディスコ、時代の雰囲気や民族性も表現したベニテスの選曲にも注目しながら、5.1サラウンドでお楽しみください!