BS放送

8月12日(土)午後10時00分~午前1時48分

「アラビアのロレンス 完全版」

名匠デビッド・リーン監督がアラブの反乱を指導した英国人T・E・ロレンスの波乱の半生を壮大なスケールと映像美で描き、アカデミー賞7部門に輝いた映画史上不朽の名作。

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今回ご紹介するのは、デビッド・リーン監督が壮大なスケールで描く超大作「アラビアのロレンス」(1962)。

当時としては破格の製作費・約1500万ドルが投じられたというこの作品。準備に2年、撮影は1年以上に及び、ヨルダンをはじめモロッコやスペイン、カリフォルニアと世界各地で撮影が行われました。乾燥した砂漠や荒涼たる岩肌、地平線と太陽・・・。過酷で厳しい自然をワイドショットで美しくとらえ、膨大なエキストラが参加した戦闘場面では疾走するラクダや馬をカメラも並走してとらえるなど、映画ならではのダイナミックな演出に圧倒されます。
さらに、ロレンスが砂漠に抱く純粋な思いや、イギリス軍、アラブ王族や民族のさまざまな政治的思惑と、細やかで深い人間ドラマを絶妙に両立させた演出は何度見ても感嘆させられます。

キャストは男性ばかりですが、スタッフでは女性の活躍も光ります。衣装デザインのフィリス・ダルトン、キャスティング・ディレクターのモード・スペクター、なかでも編集のアン・V・コーツは30代半ばの若さで大抜てきされ、この作品でアカデミー編集賞を受賞。その後は「オリエント急行殺人事件」(1974)、「エリン・ブロコビッチ」(2000)といった名作・話題作を手がけ、90歳まで現役でした。
とりわけ印象的なのは映画の序盤、ロレンスの横顔をアップでとらえマッチの火に息を吹きかけて消すと、オレンジに輝く砂漠の日の出の風景に変わる編集です。編集者出身のリーン監督は当初、2つのショットをオーバーラップで編集しようと考えていたそうですが、コーツは当時注目されていたフランスの若手映画作家たちによるヌーベルバーグの斬新な表現から、ジャン・リュック・ゴダール監督が「勝手にしやがれ」(1959)などで実践したジャンプ・カットの技法を提案、この場面の編集が生まれたそうです。古典的な趣のある作品ですが、当時の最先端で実験的ともいえる技法を使っていることに改めて驚かされます。こうした編集をはじめ斬新な映画的手法が随所で使われていることが、本作を古びることのない、何度見ても新たな発見に満ちた作品にしています。

本作はスーパーパナビジョン70というフォーマットで製作され、撮影は65ミリフィルム、上映は音声トラックを加えた70ミリフィルムを使って大スクリーンで上映されました。完成直後のプレミア上映では222分(3時間42分)、その後202分、1970年にはさらにカットされ187分となっていましたが、1988年、リーン監督が立ち会って復元が行われ228分版が完成。今回放送するのはその228分版を元に2012年、製作50周年を記念して4K化した「完全版」です。オリジナルネガをデジタルスキャンし細かなキズまで丁寧に修復し色彩を補正したことで、まるで新作のようなゴージャスな映像美を再現。70ミリフィルムのクオリティーを最大限生かしています。音声も5.1ch化し、戦闘場面の音響や音楽なども迫力満点。上映前に劇場で流された前奏(序曲)やインターミッションも含め、ノーカットで放送します。
ぜひ、4K放送でお楽しみください!