BSトピックス スペシャルコラム
セレクション
2017年09月29日

「北斎インパクト~世界が愛した超絶アート~」by紙屋

いま、葛飾北斎がブーム、といわれます。でも「北斎って誰か知ってる?」と聞けば、大方は、あの」の浮世絵を描いた人と答える程度でしょうか?正直なところ、日本では、広重()、写楽、歌麿など、数多くの浮世絵師の一人というぐらいの認識が一般的ではないかと推測します。ところが海外では全く事情が違います。

0926p-wave2.jpgあの「波」の絵は、モナ・リザと並んで最も有名な絵画の一つと言っても過言ではないほど、巨大な影響力をもった存在ルイ・ヴィトンティファニーなど、誰もが憧れるブランドの商品に、北斎のデザインが大きな影響を与えてきたということを、どれだけの人がご存知でしょうか。

今年に入ってからだけでも、イギリス・オーストラリア・ポーランドと、世界各地で北斎の大規模な展覧会が開かれています。特に話題となったのが、今年の夏に開かれた、大英博物館の展覧会。会期中、北斎の作品を見に、なんと十万人もの人が訪れたのです。0929daiei.jpg海外と日本の北斎人気のギャップは、非常に大きなものがあります。レオナルド・ダビンチに匹敵するといわれる(大げさではありません)、あまりに巨大な業績ゆえ、その全貌が見えにくいうえ、明治以降、傑作といわれる作品の多くが海外に流出してしまいました。もともと美人画から生命力あふれる多様な生き物たち、不気味なお化け、さらには、番組では紹介が難しい春画しゅんが(巨大タコと美女の絵など)の傑作まで、あまりに多ジャンルの作品3万点近くも描いてしまったので、国内ではいわゆる美術史的な評価が、長く定まらなかったのです。0929p-mountain2.jpgところが海外ではモネ・ゴッホ・ドガといったスター画家たちに多大な影響を与えただけでなく、ヨーロッパの現代史や、社会思想にまで複雑にかかわっていたのです。あまりに大きな北斎の「インパクトに、最初は制作チームもどこから番組制作に手を付ければいいのか、くらくらとしてしまいました。

今年初め、北斎の展覧会を企画する大英博物館から、ある申し出がありました。NHKが開発した8K超高精細画像を使って、北斎の作品を撮影し、その画像を研究に役立てることができないだろうか、というものです。通常のテレビ(ハイビジョン)の16倍の解像度をもつ8Kで北斎作品を拡大してみれば、北斎の天才的な技法の秘密を解明できるのでは、という期待とともに、国際共同制作で調査を行いました。その結果は、私たちの想像を上回るものでした。詳しくは番組を見ていただきたいのですが、北斎が作品に込めた意図や意味が、8K画像から次々と明らかになったのです。0926-w.jpg

皆さんが、どこかでその名前と、代表作を見聞きしたことがある葛飾北斎。そのマジカルで楽しい魅力を、貫地谷しほりさんが、北斎の描いたキャラクターたちに誘惑(?)されながら、体験します。世界がこれほど北斎を受け入れてきたことに、驚きよろこびを感じるはずです。


★放送予定→番組情報はこちら
【BSP】10月7日(午後9:00~10:29
「北斎インパクト~世界が愛した超絶アート~」 

紙屋 聡(かみや さとし)

【コラム執筆者】
紙屋 聡(かみや さとし)

NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー。美術番組から、硬派のドキュメンタリーまで様々な分野の番組制作にかかわる。関東大震災で焼失した北斎の巨大絵の復元を追ったドキュメンタリー「ロスト北斎」(2016年秋放送)以来、北斎の謎と秘密を解き明かすプロジェクトを担当。