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スポーツ
2017年12月19日

BS1スペシャル 「激突!ふたりの"世界最速"男 ~インディ500佐藤琢磨×エアレース室屋義秀~」by下田

2017年5月28日、日本のモータースポーツを愛する人々にとって、歴史的な日となった。F1のモナコグランプリ、ルマン24時間耐久と並ぶ世界三大レースである「インディ500」でレーシングドライバーの佐藤琢磨悲願の優勝を成し遂げた。その“栄冠”に私も喜びに満ちあふれたが、すぐに15年前の琢磨選手との出会いを思い出していた。

2002年、F1日本グランプリが開催された鈴鹿サーキットで握手を交わした琢磨選手、世界と戦う情熱と覚悟を強く感じさせた精かんな顔つきは今でも鮮明に覚えている。その時、プロデューサーとして制作した番組のタイトルは「いま裸にしたい男たち 佐藤琢磨25歳 誰よりも前へ」。
7月、世界のトップに立つ夢を実現させた琢磨さんに「エアレース最終戦を見に行きませんか?」と持ちかけた。突然の申し出に彼は「なぜ?」といぶかしんだと思うが、実は、ある番組の企画アイデアを思いついたからだ。2017takuma.jpg2つ理由がある。NHKのBS1では「エアレース世界選手権」を放送しているが、日本人パイロット室屋義秀選手がサンディエゴ大会と千葉大会で優勝を果たし、シリーズの年間チャンピオンの有力な候補であること、そして最終戦の会場が「インディ500」と同じ「インディアナポリス・モーター・スピードウェイ」であること。車と飛行機、まったく違うモータースポーツながら、同じ“世界最速”を目指す2人が出合えば、面白いドキュメント番組ができるのではないか、と発想した次第である。

10月14日、インディアナポリスのエアレース予選の日、機体整備の時間に佐藤琢磨さんと室屋義秀さん初めて対面したレース用の飛行機の重さはおよそ700キロ、インディ500のレーシングカーの重さとほぼ同じだ。また、レースでの最高スピードも380キロ以上と同程度である。室屋さんが飛行機エンジンや空気抵抗を極力少なくし、速く飛べる流線型の機体について丁寧に説明する。そして琢磨さんは室屋さんの特別な計らいで、コックピットに座り、視界の狭さに驚く「飛行機のことは全くわからないけど、すごく共通点が多い初めて会ったとは思えませんね。」室屋さんの予選タイムは1分7秒732、14選手のうち11位という不本意な成績だった。pit_takuma.jpg翌15日。インディアナポリスは前日とうって変わって、雨と強風、エアレースのゲートであるパイロンが揺れに揺れる。スタート時間が1時間半ほど遅れ、決勝レースが始まった。14人→8人→4人、室屋さんはとてつもない修正能力を発揮して、勝ち抜いていく。そして、琢磨さんが見守る中、4人でタイムを競った最後のラウンドで室屋さんは1分3秒026、ランキングトップのチェコのションカ選手に4秒以上の差をつける驚異的なスピードで飛んだ。劇的な優勝!室屋義秀さんと佐藤琢磨さん、抱き合い、喜びを分かち合いました。win.jpg番組では、世界最速への挑戦を続ける2人お互いの世界を知ろうと、車と飛行機に同乗し、重力加速度Gの凄さを体感したり、対談で知見を深めたりして、刺激を受けていく。そして運転・操縦技術、チームワーク、勝負のタイミング、プレッシャーに負けないメンタルなど多面的なアングルから世界で勝つために必要なことは何か?を明らかにする。car.jpg佐藤琢磨「No Attack No Chance攻めなければ、機会なし」
室屋義秀「Beyond the edge限界を超えろ」
2人が大切にしてきた自分を奮い立たせる“信念”の言葉。この言葉の意味を噛みしめた番組取材だったが、室屋さんが印象深いことを話してくれた。予選レースが始まる直前の大事な時に、しかも絶対に他の人には座らせないコックピットになぜ、琢磨を招き入れたのか?“運”をもらいたかった。インディ500で優勝した琢磨さんの強運を。

★放送予定
12月30日(21:00~21:49
BS1スペシャル 「激突!ふたりの"世界最速"男 ~インディ500佐藤琢磨×エアレース室屋義秀~」

(関連番組)
2018年12月に始まるNHK BSの4K・8Kチャンネルの本放送でも放送予定。
モータースポーツの世界で“レジェンド”になったふたりの姿を4Kカメラで記録。

下田 大樹(しもだ たいじゅ)

【コラム執筆者】
下田 大樹(しもだ たいじゅ)

NHKエンタープライズ 番組開発エグゼクティブ・プロデューサー。NHKスペシャル、クローズアップ現代、タイムスクープハンターなどの番組制作を行ってきた。最近は4K・8Kの新しいテレビ開発にチャレンジ!