BSオンライントップ > BSコラム > ■海外ドラマ■米国ドラマで活躍する、日本人ほか外国人俳優 by 岸川靖

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今週も、先週に引き続きミッドシーズンの新作ドラマ紹介の予定でしたが、手元に『SHERLOCK(シャーロック)』第3シリーズしか到着しておらず、予定を変えて海外ドラマ(おもに米国ドラマ)での、日本人を含む外国人俳優の起用について書いてみます。
なお、NHK BSプレミアムでの放送決定が発表になった『SHERLOCK (シャーロック)』第3シリーズは次週、紹介します。ネタバレにならないよう、どう紹介するかが悩みどころですが……。

さて、先週ご紹介した新作ドラマ『Helix』に真田広之さんがレギュラー出演していると書きました。過去にも日本人俳優が米国のドラマに出演したことは何度もありますが、その大部分はゲスト出演でした。
もっとも、ジェームズ・クラベルのベストセラーをドラマ化した『将軍 SHOGUN』(80)のように、主人公以外は、三船敏郎、島田陽子など日本人俳優という特殊な例はありましたが、米国が舞台の作品で日本人俳優がレギュラー出演するのはまれで、快挙と言えるのではないでしょうか?

近年、ハリウッドで活躍している日本人俳優と言えば、渡辺謙さん菊地凛子さんあたりが筆頭でしょう。渡辺さんは映画『ラスト サムライ』(03)の後、『バットマン ビギンズ』(05)、『インセプション』(10)などに出演し、次回作は『GODZILLA ゴジラ』。いまではすっかりハリウッド俳優の一員です。菊地さんは映画『バベル』(06)での演技が注目され、『パシフィック・リム』(13)など、こちらもハリウッド女優として活躍しています。

真田広之さんは、『ラスト サムライ』、『サンシャイン2057』(07)、『47 RONIN』(13)、さらには『最終目的地』(08/J.アイボリー監督作)といった映画のほかに、『LOST』、『リベンジ』といったTVドラマにもゲストながら出演歴があります。『Helix』は、出演依頼の手紙と脚本が同時に送られてきて、出演を決めたとのこと。企画のキャメロン・ポーサンダーは、真田さん演じるドクター・ヒロシ・ハタケを、真田さんをイメージして脚本を書いたそうです。

海外ドラマに出演した日本人と言えば、これまでは多くは米国在住の日系人でした。『宇宙大作戦/スタートレック』でヒカル・スールーを演じたジョージ・タケイさんは、その元祖とも言える一人でしょう。ジョージさんは日系二世としてロサンゼルスに生まれ、1950年代から俳優業を始めていますが、当時のショービジネス界に東洋人はめったに見かけなかったそうです。
『HEROES』が記憶に新しいマシ・オカさんは、出身は東京渋谷で、米国に渡って俳優になった人ですね。

近年の米国ドラマのキャラクター配分は、主演の男女二人を中心に、周囲を数人のレギュラーが固める構図がはやっています。これには、作品への出演機会が特定の人種や性別に偏らないようにするという、米国の社会性も影響しています。特に、黒人や女性の雇用に対する意識は強く、キャラクターを複数出せる作品にはまんべんなく起用されている感じがします。

NHKで放送されたドラマでは『ER 緊急救命室』などがそうですが、最たるものは『Glee』で、男性、女性、同性愛者、白人、黒人、東洋人という、まさに“We are the world”を絵に描いたような顔ぶれと言えるでしょう。

「東洋人枠」では、韓国系米国人の活躍が目立ちます。『LOST』『HAWAII FIVE
-O』のダニエル・デイ・キムや、同じく『HAWAII FIVE-O』『GALACTICA/ギャラクティカ』のグレイス・パーク、『グレイズ・アナトミー』のサンドラ・オー、『ウォーキング・デッド』のスティーブン・ユァン、『デクスター』で下品な言動が多い同僚の鑑識捜査官ヴィンス・マスカを演じたC・S・リーも韓国系です。

さまざまな人種の俳優を出すと、キャラクターにバリエーションを持たせることができ、またその国の人に作品を売り込みやすいといった利点があります。

また、最近は米国製ドラマに英国人俳優が流入してきています。『エレメンタリー』のジョニー・リー・ミラーは、シャーロック・ホームズが英国人なのでわかるとして、近々日本でも放送が始まる『ハンニバル』主演のヒュー・ダンシー、今期の新作『スリーピー・ホロウ』主演のトム・マイソン、『ワンス・アポン・ア・タイム』にゴールド役で出演中のロバート・カーライルなど、英国俳優が増えた印象は確かにあります。

10年くらい前までは、カナダ人もよく起用されていました。コスト削減から撮影をカナダのバンクーバーあたりで行っている作品は、現地在住の俳優を使えばさらに節約できたからです。米国の俳優を使うと、撮影のない日は米国の自宅にいちいち帰ったりして、その交通費も出さなくてはいけないので、主演クラス以外はなるべく撮影地の近所に住んでいる人を使うほうが好都合だったのです。しかし、最近はCGの発達などで、米国で製作してもコストが以前ほどかさまなくなり、また米国に戻ってきています。

米国製のドラマなのだから、米国人をもっと積極的に使うべきだという意見もある中で、製作現場では、英国人俳優のほうが、演技が繊細でうまいと言われています。
 
余談になりますが、英語を勉強したり、旅行に行ったりすると、同じ英語でも米国と英国ではアクセントがだいぶ違うと実感します。個人的にお会いしてお話しした方たちを比べてみると、同じ米国人でも分かりやすい英語の方と、そうでない方がいます。
前者は大半が、母国がイタリアやドイツ、フランスなど異なる原語の国で育ち、米国に移住してきた方々です。そのため、ものすごくシンプルな文法で、分かりやすい単語と発音なのです。逆に同じ英語圏でも、ニュージーランドの方は、アクセントが独自で非常に聞き取りにくかったりします。

米国製のドラマは、米国を舞台にしたものが多いので、出演するためには米国人らしいセリフ回しができることが条件です。配役を決めるときは、製作者が特定の俳優をイメージして脚本を書くときもありますが、多くは複数の候補者を立ててオーディションやカメラテストを重ね、最終的に一人に決める場合がほとんど。つまり、英国人俳優は、米国風のアクセントをきっちり練習して、役を獲得しているのです。

『グッド・ワイフ』(4月からBSプレミアムで、第4シーズンの放送が決定)のカリンダ役、アーチー・パンジャビは、両親はインド人ですが、生まれたのは英国です。耳が良く、なまりが強いと言われるスコットランド人の英語から、インド人のアクセント、さらに米国のアクセントも使い分けられるそうです。

米国では、スターになりたいという願望ありきで俳優をやっている人もいますが、英国人は演技に真面目に取り組む傾向があり、映画でも、TVでも、コメディでも、舞台でも、役がもらえるなら何でもやる、というスタンスの人が多いのだそうです。

英国人の友人(TV制作関係者)によると、英国は経済的に苦しくて、ドラマもまとまったエピソード数が作れないと言います。金がないと言いながらも、毎年、放送枠を埋められるだけの作品数を出してくる米国に、英国の俳優が活動の場を移そうとしているのかもしれません。
人種、国籍に偏らず、本当に実力のある人が抜け出てくる。それは、より良いものを作ろうとする姿勢があれば、当然のことではないかと思います。
 
ところで、過去の作品などを観ていると、中国系の俳優さんが日本人の役を演じており、違和感がありました。しかし、米国の制作関係者に話をうかがうと、とにかく日本人の英語、特に会話能力が低いので、起用は難しいのだそうです。なお、中国語の文法は、英語と似ているため、上達も早いそうです。
これから海外で俳優業を目指す方にとって、英語力は必須と言えるのでないかと思います。
 

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(取材・構成:工藤浩紀)

【コラム執筆者】
岸川 靖(きしかわ・おさむ)

1957年、東京生まれ。編集者・ライター。雑誌「幻影城」編集を皮切りに執筆をはじめ、海外ドラマ、特撮映画等の著書多数。

岸川 靖(きしかわ・おさむ)

投稿時間:15:00 | カテゴリ:海外ドラマ

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