BSトピックス スペシャルコラム
ドキュメンタリー
2018年09月12日

BS1スペシャル「脱北者の終らない旅」by吉岡

取材の端緒は、韓国からの1本の電話だった。
南北首脳会談に続いて、史上初の米朝首脳会談を終えた韓国では、融和ムードが急速に高まっていた。電話の主は「こんなムードの中、韓国を出て行こうとする人たちがいるんです。脱北者です」といった。脱北者とは北朝鮮の独裁政治や食糧難など様々なひずみから逃れてきた人たちのことで、3万人を超す。多くは身元を明かさずひっそりと生きてきた。その人たちがなぜ韓国を出て行こうとするのか?そこが最も関心のあるところだった。

300915bs1_1_beicyo.jpg私たちが出会った脱北者たちは怒っていた。独裁体制から逃れて来たのに、首脳会談では、その北の体制「非核化」と引換えに保証する、とうたっていたからだ。だが、融和ムードでいっぱいの韓国では、そんな切実な脱北者の思いなどには目をくれず、むしろせっかくのムードを壊す「邪魔者」といわんばかりに、脅迫電話やいたずらメール、店への落書きや中傷ポスターといった嫌がらせが増大したのだ。そんな理不尽さを前に追い込まれたのは、脱北者自身だった。仲間が集まれば、こんな韓国には居場所がない脱南だとの声が高まる。300915bs1_2_memberr.JPGこの10年余り、北の政治を風刺した絵故郷をテーマにした絵を画き続けてきた脱北画家は、融和ムードあふれる韓国を出てドイツに向かった。300915bs1_manngaka.jpg番組は、脱北者の切実な現状をある脱北漫画家の目を通して見てみようと密着した。
漫画家自身、嫌がらせメールや生活苦に悩まされながらも、脱北者のもとを駆け回る。迫る危険から身を守ろうとナイフを隠し持つ仲間「脱南」指南を受けようとブローカーを訪ねる母親政治亡命を考える活動家など、取材者となった漫画家の目に映ったものは、脱北者に迫る危機感焦燥感だった。300915bs1_2pic.jpgそして、最後に彼が描き上げた漫画には、脱北してきたもののさらに続く終わりなき旅が描かれていた。


★放送予定→番組情報はこちら
【BS1】9月15日(
BS1スペシャル「脱北者の終らない旅~南北融和ムードの中で~」
(前編)22:00~22:50/(後編)23:00~23:49

吉岡 攻(よしおか・こう)

【コラム執筆者】
吉岡 攻(よしおか・こう)

オルタスジャパン チーフディレクター。