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ドキュメンタリー
2017年03月24日

未来へ  伝統×最先端が挑む日本最古の舞 ~狂言師・野村萬斎×メディアアーティスト・真鍋大度の挑戦〜 by 山下つぼみ

2017年正月に、狂言師野村萬斎さんメディアアーティスト真鍋大度さんが、日本最古の舞「三番叟」(さんばそう)を、舞台「FORM」という名で制作した。萬斎さんが舞い、真鍋さんが背景に流す映像を作る、というもので、私はその制作過程を追わせてもらった。

萬斎さんは、狂言師であり、数々の映画やドラマでご活躍。真鍋さんの、リオオリンピック閉会式やPerfumeの演出の素晴らしさも知っていた。けれど自分にとって二人はどこか「向こう側」にいる何だか凄い人たちで、まさか自分が取材させて頂く日が来るなんて思ってもみなかった。しかも「三番叟」のことは聞いたこともなく、緊張状態で取材を始めさせてもらった。

舞台の「FORM」という名前。それは「型」を意味するという。色々調べてみたところ、狂言の世界でいうところの「型」は「決まっている動き」ということらしい。立ち姿や歩き方、発声方法、喜怒哀楽などの表現方法が決まっていて、アドリブみたいなものはほぼ存在しない、ということだった。

そう聞くと、狂言師は表現をすごく制限されているように思えた。同時に、はるか昔から存在する「型」を受け継ぐ重みはどんなものなのか気になった。しかも「三番叟」は史実前から存在しているという説もあるので、とんでもなく大切に、大切にその「型」を伝えてきたのだろう。

「三番叟」は、人間が神となって人々の喜びを祈る、という「舞」だそうだ。よく知られた狂言のスタイルとは少し違、ストーリーは存在しない。歴史的な資料もあまりなく、何を意味するものなのか「型」からしか舞の意味を理解する術がない。

どんな情報「三番叟」の「型」の中に入っているのか。
萬斎さんは型を舞う中で心に湧き上がるイメージ真実を見出していた。
真鍋さんはモーションキャプチャで取得した萬斎さんの「三番叟」の「型」に「肉眼では見えない」真実があるのではないか、と考えた。そして、いつからか二人は一緒に作り上げる舞台のテーマを「内なる宇宙」と呼んでいた。

「内なる宇宙」とは何だろう。

「三番叟」の見所は、後半、萬斎さんは黒い老人の仮面を被って「神になる」ところ。萬斎さんは面を被っていると前が殆ど見えないため、「自分はしっかり前を向いているのか、しっかり立てているのか、まるで人生の問いかけのようなもの」が始まるのだという。神を演じている時は、その境地、いわば瞑想状態にいるそうだ。

その言葉を反すうしていた時、私は萬斎さんの師であり、お父さん、万作さんの言葉を思い出した。『「型」の中にリアリズムが入っている』と。はじめ聞いた時は「リアリズム」が何を意味するのか、よくわからなかったが、もしかしたら「リアリズム=真実」は「神」を意味するのか…?そう思うとドキドキした。

もしかしたら真鍋さんがデータで見ようとしていた「肉眼では見えないもの」「神」なのか…?萬斎さんから得た「型」のデータをもとに作られた映像が、その「解」なのかもしれない。そう思って舞台「FORM」を見ると、また一際に楽しめると思う。「三番叟」って、こういう舞台だったんだ!と発見も多かった。ただ、萬斎さんと真鍋さんのお二人のタッグ。何も考えずに見ても面白いので、ぜひ新しい「三番叟」の世界観を番組で堪能していただきたい。

放送予定
「未来へ 伝統×最先端が挑む日本最古の舞
 ~狂言師・野村萬斎×メディアアーティスト・真鍋大度の挑戦~」
[BSプレミアム] 3月31日(金) 夜10:00~10:59

山下つぼみ(やました・つぼみ)

【コラム執筆者】
山下つぼみ(やました・つぼみ)

スローハンド ディレクター。米国の大学で生物学・進化学を専攻。「シャキーン!」「Tomorrow beyond311」他局の某散歩番組ほか短編映画なども制作している。最近チャップリンと初期のルパン三世、タランティーノがブーム。2歳児の母。