BSオンライントップ > BSコラム > ■渡辺支配人のおしゃべりシネマ館■「太秦ライムライト」 by 渡辺俊雄

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20140106_uzumasa.jpg今回は1月14日(火)午後9時から放送する「太秦ライムライト」についてお話しましょう。舞台は京都太秦(うずまさ)、チャップリンの「ライムライト」をモチーフに時代劇の斬(き)られ役として名高い福本清三(ふくもとせいぞう)が55年に及ぶ長い俳優生活の中で初めて主演した人間ドラマです。この映画、実は劇場公開はこれからですが、テレビ版として一足早く皆さんにお見せできることになったのです。

時代劇が衰退していく中、太秦の撮影所では斬られ役の俳優たちもリストラされるなど苦境に立たされます。「斬られ役」として名声を得ていた主人公も定年を迎え撮影所を去る日がやってきますが、そんなおり、時代劇をめざす駆け出し女優と出会い、彼女に殺陣(たて)の極意を教えるうち師弟関係が結ばれます。

このあたりは、チャップリンの名作「ライムライト」を想起させますが、何と言っても初めて主演をつとめた福本清三の味わい深い演技が魅力的です。ヒロイン役には世界武術大会優勝者で映画初出演の山本千尋、さらに、松方弘樹小林稔侍本多博太郎萬田久子らが脇を固めています。そして、うれしいことに私の敬愛する中島貞雄監督も「時代劇の監督役」として登場するのですから、映画ファンにはたまりません。

「(映画の中で)5万回斬られた男」の異名を持つ福本清三こそは、知る人ぞ知る「斬られ役」の達人。1943年2月3日、兵庫県生まれ、現在70歳です。中学卒業後、15歳で東映京都撮影所に入社、「大部屋俳優」となります。
20代後半から「斬られ役」専門となり、東映が製作したほとんどの時代劇に出演し続けたスペシャリストです。福本清三のすごいところは、斬られ役としての研究を怠らず、独特の「えび反り斬られ」などを開発するなど、時代劇の殺陣に新境地を開いたこと、そして「その他大勢」としての役者にこだわり続け、誇りを持ち続けたことでしょう。
定年直前の2002年には、トム・クルーズと渡辺謙が共演したハリウッド映画「ラストサムライ」に59歳で出演、その寡黙な個性と迫力ある死に方が評判となり、仲間の大部屋俳優や無名の若手俳優たちの憧れの的となりました。

定年後も俳優業は続けており、2006年のNHK大河ドラマ「功名が辻」、2010年の「仮面ライダーW」、2011年の仮面ライダー誕生40周年記念映画ではショッカーの幹部ブラック将軍を演じるなど、むしろ年を重ねるに連れて活躍の幅を広げています。初の主演作となった「太秦ライムライト」の中でも、毎日、黙々と殺陣の稽古を続け、顔つきを鋭く見せる独特のメイクを自ら時間をかけて施すシーンが印象的です。

福本清三の生き方を見ていると、たとえ華やかな場ではなくとも、自分が好きなこと、職業と定めたことを真面目にこつこつと続けていけば、やがていつかは花が咲くのだ、ということを実感させられ、勇気がわいてきます。


★関連ドキュメンタリー番組「UZUMASAの火花」
BSプレミアム 1月9日(木)午後9:00~
時代劇映画を愛す人々の思いを映す、エンターテイメント・ドキュメンタリー。
「太秦ライムライト」ハリウッド仕込みの若手監督と、太秦本流のベテラン俳優が撮影現場で丁々発止! 果たして…?

【コラム執筆者】
渡辺俊雄(わたなべ・としお)

1972年、アナウンサーとしてNHK入局。10年以上「衛星映画劇場支配人」として映画に関連する番組の制作や出演、ナレーションを担当。

渡辺俊雄(わたなべ・としお)

投稿時間:11:00 | カテゴリ:映画

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