これまで書評した本
2007年06月10日放送内容    (再放送:2007年06月11日)
司        会 長田渚左 ・ 中江有里
出演・書評 北尾トロ ・ 東直子 ・ 藤谷治
特        集 吉田修一    最新作「悪人」を語る
■おすすめの一冊 様々なジャンルのゲスト3人が自分の選んだ本を推薦するコーナーです。
巡礼 珍日本超老伝 書    名 巡礼 珍日本超老伝 北尾トロ
著    者 都築響一
出版社 双葉社
書評する人 北尾トロ (フリーライター)
本の内容
日本各地の奇妙な建築や風変わりな人々を取材し続ける著者が、二年にわたり全国のパワフルなおじいさんを訪ね歩いた記録です。登場するのはいずれ劣らぬ超・個性派ばかり。
終戦後、ジャズマンとして華々しい生活を送るも、結核、さらには交通事故と運命に翻弄され、今はラップミュージシャンの84歳。
24時間営業のラーメン店を営むかたわら、警察犬を育成し、数々の事件を解決に導いてきた67歳。
会社経営者として成功を収めた後、演歌歌手としてデビュー。今の目標は紅白出場と語る72歳。
著者は、この取材の醍醐味を「オレサマじいさんにガツンとやられる快感」と表現します。
『こんなことをいくら書いても、「しょせん、いかがわしそうな健康器具販売で大儲けしたオヤジの道楽だろ」としか思えない人もいるだろう。それなら、それでいい。でもね、そう毒づきながら立ち止まってる君のすぐ脇を、猛スピードで走り過ぎる72歳のオヤジの姿が、君には見えてない、それだけのことかもしれないのだ。』(本文より)
人が何と言おうと気にせず、ひたすら我が道を突き進む28人の生きざま。圧倒されながら、いつしか元気が湧いてくる一冊です。
北尾トロさんの「おすすめの本」(上記以外)
書名 著者 出版社
愛しのご当地ソング 九州歌謡地図 西日本新聞社文化部 編 書肆侃侃房
ワガママな病人VS つかえない医者 和田靜香 文春文庫PLUS
もしもし、運命の人ですか。 書    名 もしもし、運命の人ですか。 東直子
著    者 穂村弘
出版社 メディアファクトリー
書評する人 東直子 (歌人)
本の内容
現代短歌の世界で人気を集める著者が、自らの恋愛観を綴ったエッセイ集です。
すでに不惑を過ぎた男の恋の悩みは、滑稽でありながら、とても切実。
「恋のはじまりのときめきを持続させることはできるのか?」
「断られても傷つかないように女性をホテルに誘う方法は?」
そして・・・「この世にたった一人の運命の人≠ヘ存在するのか?」
『まともじゃない。でも、今日も私の視線はサーチライトのように女神を捜し続ける。(中略)結局のところ、自分は女性とのまともな関係を求めてはいないのかも知れない。そう思う。超越的な可能性の方を、それよりも遥かに重視しているようだ。女は女神、その笑顔は別世界への窓。そんな風に思い込みたいのだ。』(本文より)
自意識過剰で、極度のロマンチスト。大人になれない自分を笑いながら、それでも恋愛の魔力から逃れられない著者の、鋭い洞察が詰まった一冊です。
東直子さんの「おすすめの本」(上記以外)
書名 著者 出版社
ビロードのうさぎ マージェリィ・W・ビアンコ原作 酒井駒子絵・抄訳 ブロンズ新社
空中スキップ ジュディ・バドニッツ著 岸本佐知子訳 マガジンハウス
責任と判断 書    名 責任と判断 藤谷治
著    者 ハンナ・アレント著 ジェローム・コーン編 中山元訳
出版社 筑摩書房
書評する人 藤谷治 (作家)
本の内容
ドイツ生まれのユダヤ人として、全体主義の脅威と戦い続けた哲学者、ハンナ・アレント。彼女が生前に発表した講演スピーチ、書評、講義録などをまとめた遺稿集です。
「責任」と題された第一部では、国家の名のもとに罪を犯す人間の「個人の責任」と、簡単に崩壊する「道徳」について考察し、「判断」と題された第二部では、同時代の事件や政治状況に鋭い批判を加えていきます。
『わたしたちはいまでは、道徳的な規格や基準は一夜にして変わること、そして一夜にして変動が生じた後は、何かを固持するという習慣だけが残されるのだということを学んでいます。
このような習慣にしたがう人々よりも信頼できるのは、疑問を抱く人々、懐疑的な人々です。(中略)最善なのは、ただ一つのことだけが確実だと知っている人々です。すなわちどんなことが起ころうとも、わたしたちは生きるかぎり、自分のうちの自己とともに生きなければならないことを知っている人々なのです。』(本文より)
内なる自己と向き合い、孤独の中で考えること・・・ナチスの悪夢をくぐり抜けて著者が紡ぎ出した言葉は重く、没後30年以上を経た現在もまったく色あせていません。
藤谷治さんの「おすすめの本」(上記以外)
書名 著者 出版社
ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳 早川書房
サマーバケーションEP 古川日出男 文藝春秋
■特集 旬の作家や大物作家へのインタビューから電子本などのジャーナルな話題まで、本を取り巻くビビッドな動きをお伝えします。
悪人 書    名 悪人 吉田修一
著者・ゲスト 吉田修一
出版社 朝日新聞社
テーマ
最新作「悪人」を語る
内容
2002年に『パレード』で山本周五郎賞、『パークライフ』で芥川賞を受賞した吉田修一さんをお迎えして、最新長編作品『悪人』についてお話を伺いました。
『悪人』は2006年3月から2007年1月まで、朝日新聞夕刊に連載された作品。
九州北部で起きた保険外交員殺人事件。被害者と加害者、そしてそれぞれの家族たちの群像劇が、地方都市で暮らす人々の現状を浮かび上がらせます。

<「悪人」の内容>
2001年の暮れ、福岡と佐賀の県境で若いOLが殺された。犯人は彼女と出会い系サイトで知り合った長崎の土木作業員。彼は他の女と逃避行を試みた末、ひと月後に逮捕された・・・
この一見単純な事件の裏に隠された物語が、犯人、被害者、友人、家族と、目まぐるしく視点を切り替えながら展開していきます。
ここではないどこかを求めて改造車を飛ばす男。ゲームのように身体を重ねる女。親の金で遊び呆ける大学生・・・それぞれが闇を抱えた彼らの中で、ほんとうの「悪人」は誰だったのか?
娘を失った父親が、ふと呟きます。
『「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。(中略)失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」』(本文より)
絶望的な逃避行の中で、やがて真実の愛に目覚めていく犯人。果たして、そこに救済はあるのか?
「善と悪」、「強者と弱者」という骨太なテーマを、サスペンスに満ちた筆致で描ききった一作です。
■ベストセラーレビュー 様々な切り口で本に関するランキングをお伝えしていきます。
テーマ 単行本 週間ベストテン
調   べ 長崎・メトロ書店本店
  書 名 著 者 出版社
1 鈍感力 渡辺 淳一 集英社
2 願いがかなう100の方法 佳川 奈未 三笠書房
3 お札DEおりがみ 公式 『ターバン野口』のつくりかた いそにし まさお 宝島社
4 ハッピー・スピリット 紀香魂 藤原紀香 幻冬舎
5 長崎昭和レトロ寫眞館 堺屋修一 写真 永松実 文 長崎新聞社
6 赤い糸 destiny 上・下 メイ ゴマブックス
7 心霊探偵 八雲 SECRET FILES 絆 神永 学 文芸社
8 がらくた 江國香織 新潮社
9 悪人 吉田修一 朝日新聞社
10 長野殺人事件 内田康夫 光文社
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