これまで書評した本
2003年02月09日の放送内容
司        会 高泉淳子
アナウンサー 根岸昌史
出演・書評 沢松奈生子 ・ 有吉玉青 ・ 巽孝之
特        集 大庭みな子
■アナウンサーの一言
今週の書評ゲストの皆さんは今回が初めてのご出演で“おすすめの1冊”は3冊とも小説という珍しいラインアップになりました。

沢松さんのおすすめは「鬼女の花摘み 御宿かわせみ」で御宿かわせみシリーズの最新作です。沢松さんは時代小説が好きで特に平岩さんの本は全て読まれているということで、かわせみシリーズの魅力を人間関係相関図を交えながらたっぷりとお話いただきました。

有吉さんおすすめの「太陽通り ゾンネンアレー」は東ドイツ時代の多感な少年たちのストーリーです。著者が思い出を書き綴った小説で、「東ドイツ」というと偏ったイメージを持ってしまいますが、そこにいた少年たちはこんなに楽しく面白く過ごしていたんだなあ、どこにでもいた15歳の少年なんだなあと感じました。

巽さんのおすすめ「満月の夜、モディ・ディックが」は大学生の男の子が主人公で爽やかな恋愛小説なんですが、後半にはいろいろな問題が生じてきます。こういうタイプの恋愛が今の学生に多いのかは分かりませんが、私の学生時代にはあまりなかったような気がします。もっと楽に過ごしていたというか、何も考えていなかったというか、、、。私は楽しく読めました。

今週の1冊は「女は男のどこを見ているか」を取り上げました。簡単にいえば女性は知恵と誇りをもった男性に惹かれる。そのためには男性は英雄体験が必要だということが書かれています。 でも自分の生活を考えてみると人生の中でそんなに英雄体験をする機会はありますかね。小さな子に対してベロベロバーが出来るかとか動物をなでてあげられるか等も書かれていましたが・・・。英雄体験、とまでいかなくとも自分自身で誇りを持てる生活をしていればいいんじゃないかと思います。それが変わり映えのしない生活であってもそれを毎日やり続けることに誇りを持てばいいし、あとで後悔するようなこと以外はそれで胸を張って生活しましょう。

特集は大庭みな子さん、利雄さんご夫妻。利雄さんにスタジオにお越しいただいて、介護の日々やご夫婦の出会いから現在のお二人の気持ち、思いまで伺いました。お話の中で印象的だったのは「愛」と言うよりも私たちは「好き」ということを大切にしているというお話。愛ときくと想いが込められていて素敵に感じますがそれは簡単に使いすぎているだけで、好きという気持ちをもっと大切にしたほうがいいんだなあと感じました。

さて今回が高泉さんの最後の放送になりました。私がご一緒したのは1年だけですが2年間本当にお疲れ様でした。番組でお話を伺うときにスタジオのムードをいつも和ませていただき、話しやすい雰囲気をいつも作ってくださいました。本当にありがとうございました。
■おすすめの一冊 様々なジャンルのゲスト3人が自分の選んだ本を推薦するコーナーです。
鬼女の花摘み 御宿かわせみ 書    名 鬼女の花摘み 御宿かわせみ 沢松奈生子
著    者 平岩弓枝
出版社 文藝春秋
書評する人 沢松奈生子 (元プロテニスプレーヤー)
本の内容
説明不要かも。あの、御宿かわせみシリーズ、第27巻です。

舞台となるのは、江戸・大川端町の小さな旅籠(はたご)、「かわせみ」。女主人のるいと夫の神林東吾、二人の主人公が、江戸の町に起こる大小さまざまな事件に関わり、解決してゆきます。
回が重なるにつれ、主人公の友人、家族ら脇役だったキャラクターが「レギュラー」となり、その成長や恋、結婚などが大河ドラマのように展開され、多くの読者を巻きこんできました。
27巻目にあたるこの「鬼女の花摘み」収載の7つの短編でも、そうした「脇役」たちが活躍。表題作「鬼女の花摘み」や「招き猫」では主人公夫婦の娘・千春や麻太郎と源太郎といった「レギュラー子役」たちの優しさと勇気が描かれています。

一方でそれぞれの事件からは、幕末の不穏な世情の中に息づく親子や家族、夫婦の情が鮮やかに浮びあがる。人の世の喜び、哀しみがシリーズを知らない読者の胸にもひびく、そんな一冊です。

『江戸の秋は終わって、人々は冬支度を急いでいる。
 大川端の「かわせみ」では、お吉が女中達の先頭に立って大根干しをはじめていた。
 そして東吾は、なにかというと女房にぼやいていた。
「このご時世だ。お上がよっぽどしっかりしてくれねえと、世の中、敵討だらけになっちまうぜ」
 るいは、そんな亭主の愚痴をまじめに受けとめながら、今夜も正月の晴着のためにせっせと針を運んでいた。
 一人娘の千春は、この秋、ぐんと背が伸びている。』(「吉松殺し」)
太陽通り―ゾンネンアレー 書    名 太陽通り―ゾンネンアレー 有吉玉青
著    者 トーマス・ブルスィヒ:著/浅井晶子:訳
出版社 三修社
書評する人 有吉玉青 (作家)
本の内容
ベルリンの壁を題材に、コメディーを書く。あまりに近い悲劇の歴史ゆえに、それはある種のタブーでした。1965年生まれ、ドイツ文学の「新世代」だからこそ書き得た、ユニークな小説です。

15歳の少年、ミヒャエル・クッピシュの住む「太陽通り(ゾンネンアレー)」は、東ドイツでも特殊な地区でした。西側から長く続く太陽通りの、最後の60メートルだけが、ベルリンの壁に遮られて東側に。その60メートル側に、ミヒャは住んでいたのです。
西側に行くことはもちろん、ローリングストーンズを聞くことも禁止。身分証明書を持ち歩くことが義務付けられ、いつも公安警察の目が光っているこの街。「壁」はいつも身近なところにありました。しかし、ミヒャは仲間たちとバカ騒ぎし、音楽と恋に、夢中になります。初めてもらったラブレターが国境地帯に落ちてしまったときには、その奪還?のために、必死の作戦を敢行するのでした…。

『まったく、僕らはなんて口先ばかり達者だったんだろう。後年ミヒャはそう書くことになる。あんな日々が、永遠に続いたかもしれないんだ。上から下まで反吐が出そうなことばかりだった。けれど僕らは見事に楽しんでいた。僕らはみんなとても賢く、博識で、好奇心旺盛だったのに、結局のところはばかばかしいことばかりだった。未来に向かって疾走していたのに、僕ら自身は過去の遺物だった。なんてことだ、僕らは滑稽だった。そしてそれに気づいてさえいなかったんだ。』(ゾンネンアレーでの生と死)

東ドイツの日常をユーモラスに描いた諷刺コメディー、であるとともに、矛盾に満ちた社会に否応無しに直面させられるある少年の、「成長物語」でもあります。
満月の夜、モデイ・デイックが 書    名 満月の夜、モディ・ディックが 巽孝之
著    者 片山恭一
出版社 小学館
書評する人 巽孝之 (慶応大学教授)
本の内容
前作「世界の中心で、愛をさけぶ」がロングセラーとなった著者。その続編とも読めるこの作品も前作同様、どこまでもせつない、青春恋愛小説です。

主人公の「ぼく」はモーツァルトとバス釣りが趣味という大学生。家族崩壊を経験し、年齢以上に人生に疲れ、年老いてしまっていた「ぼく」が出会ったのが、大学の同級生、風嶋香澄でした。どこか謎めいた雰囲気の彼女に、「ぼく」は次第に惹かれて行きます。しかし彼女は「ぼく」と付き合うことに同意しながらも、心のどこかに壁をつくったままでした。その後、ひょんなことで友人の画家と彼女、三人で旅をすることになった「ぼく」。しかしその旅の果てには、哀しい結末が待ちうけているのでした…。

『遠い声が語りかけてきた。
「ときどき思うの、わたしたちは何を待っているんだろうって。何かがはじまるんじゃないかと思っているけれど、それは間違いで、本当はもうみんな終わってしまったあとなのかもしれない」
 ぼくはゆっくり息を吐き、それからたずねた。
「二人ではだめなの?」
 寒さのために、喋っている声が震えている。
「二人だと、自分を壊したくなってしまうの」』(本文より)
■今週の一冊 独自に行ったアンケート調査や視聴者のみなさんからのFAX・Eメールをもとに選んだ本についてゲストが感想を語り合うコーナーです。
女は男のどこを見ているか 書    名 女は男のどこを見ているか
著    者 岩月謙司
出版社 筑摩書房
本の内容
多くの人が関心を寄せる問題なのでしょう。この本も「話を聞かない男、地図が読めない女」同様、大ベストセラーに。男女双方から賛否両論さまざまという、とにかくいま、話題の一冊です。

動物行動生理学、人間行動学の研究者である著者。その知識から、「男」と「女」の行動や嗜好の違いを分析し、よい恋愛、よい男女関係はどうすれば築けるのかを解き明かしてゆきます。
女性は男性に「心の絆」を求め、自分の心のうちにある悩みを解決しようと努力してくれる、そんな「英雄」を求めている。そのために男性は、自分だけの夢とロマンを求め、「英雄体験」をしておくことが必要だ…と、著者は説きます。誰にも見えないところで、ひそかに善行を積む。そんな行為が出来てこそ、女性にも認められる「いい男」になるのだ、と。

『「いい男」になるには障害が多くてたいへんな時代ですが、自分がブランドになることを目指して地道に努力をし続けることが大事です。努力は必ず実ります。おのれの力を信じて陰徳を積み、英雄体験をすれば、いつか誇り高き人間になれます。…』

男女の性差、というよりも、人はいかにして生きるべきか、を熱く語る。そんな一冊です。
■特集 旬の作家や大物作家へのインタビューから電子本などのジャーナルな話題まで、本を取り巻くビビッドな動きをお伝えします。
浦安うた日記 書    名 浦安うた日記 大庭みな子
著    者 大庭みな子
出版社 作品社
テーマ
大庭みな子 利雄夫妻〜うたに託す共生の日々〜
内容
大庭みな子さんは、七年前に小脳出血で突然倒れ、さらに入院中に脳梗塞を起こして半身不随となり、車椅子から離れられない身体になってしまいました。そんな、妻を一日も欠かさず身近で介護してきたのが夫の大庭利雄さん。そんな利雄さんが昨年の8月に、介護を克明に記録した本を出版されました。『終わりの蜜月―大庭みな子の介護日誌』(新潮社・2002・8出版・本体価格1600円)。病に倒れ、不随の身を最愛の夫と共生する日々を、お二人のお話と日常の介護の様子も交え、お伝えしたいと思います。

<本の内容>

『終わりの蜜月』(大庭利雄著)
『カイロウドウケツという籠のような形の海綿がいる。その中に雌雄のエビが終生住みついているので、「偕老同穴」という言葉は夫婦が年老いてまで睦まじく暮らすことのたとえのようになっている。ある日、あまり幸せな夫婦関係を持てなかった人が、この海綿を見て「偕老同穴なんていうけれど、本当は出て行きたくても出られないのよね」といったのを忘れられない。
 私たちも「偕老同穴」の余生を送っているが、この二匹のエビはどうやら閉じ込められていることに幸せを感じているので、離れ離れ出てゆく気などは毛頭ないらしい。…

 籠の中に閉じ込められたエビの状態で幸せだなどと嘯いているのは負け惜しみだと言う人も多いだろうが、ここに記すのは、その負け惜しみとも思われる介護の日々―我々二人にとっては蜜月にも近い晩年の暮らし―の記録である。』(まえがきより)

『浦安うた日記』(大庭みな子 著)

発病後、浦安の自宅でリハビリを兼ねて詠んだ短歌とそこに交えた随想を一冊にまとめたこの本。 季節の移ろいや若き日の回想に加え、イラク情勢や有事法制といった問題から戦時中の暮らしに思いを馳せるなど、世界を見つめる目はいまも瑞々しいままです。そして、何よりもまして熱く綴られるのは、夫・トシへの限りない想い…。

『…花野や紅葉にはいつも車椅子とトシがある。…車椅子の時間がトシと一緒にあるということは神の恵みである。

 トシよトシ君あればこそ吾のあり車椅子さえうるわしきなれ

 …ナコは車椅子の身になったお陰でトシとハネムーンを繰り返している。その昔のハネムーンがどんなふうであったかはもう思い出せない。その昔、花が咲いたか、紅葉が散ったか、雲が流れていたかも思い出せない。だがこの浦安のハネムーンはあの世の住人になっても繰り返し思い出すことだろう。…』(「ふるさとは」)
■ベストセラーレビュー 様々な切り口で本に関するランキングをお伝えしていきます。
テーマ 単行本・ノンフィクション他
調   べ 2月4日 トーハン調べ
  書 名 著 者 出版社
1 ベラベラブック 2 スマステーション2 マガジンハウス
2 嘘つき男と泣き虫女 アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ/藤井留美:訳 主婦の友社
3 大悟の法 大川隆法 幸福の科学出版
4 ベラベラブック vol 1[青版] - ぴあ
5 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 橘玲 幻冬舎
6 あきらめない 鎌田實 集英社
7 ラッキーマン マイケル・J・フォックス/入江真佐子:訳 ソフトバンクパブリッシング
8 わたしはあなたのこんなところが好き。 堀川波 ポプラ社
9 学力低下を克服する本 陰山英男/小河勝 文藝春秋
10 ビック・ファット・キャット、街へ行く 間山貴彦:作/たかしまてつを:絵 幻冬舎
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