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麻田語りspecial 麻田茂男 市村正親さん よりよき人生、いってらっしゃい! 麻田語りspecial 麻田茂男 市村正親さん よりよき人生、いってらっしゃい!

「想(おも)いを込めたら、伝わるんです」最後まで貫いた、職人の道

市村正親さん

やはり切ないですよね。目や手が思うように動かずに、自分のめざすものが作れない。それは役者の自分と重なる部分もありましてね。いつか将来、足腰が悪くなって舞台に立てないときが訪れることを思うと、つらいもんですよね。
“青春とは、心の若さである”というアメリカの詩人サムエル・ウルマンの詩のように、僕は、苦しみに向かってトライしていくことが情熱だと思う。その情熱は、麻田さんも失ってないんだよね。だからこそ、余計に苦しい。

市村正親さん

それでも、最後まで一貫していたのは、「想いを込めて作る」ということ。これは僕自身、このドラマで再発見した大命題なんです。想いを込めて靴を作る。想いを込めて芝居をする。......なんでもそう。ヘタでもいいから、自分の想いを込めて作れば“べっぴん”になる。

この現場でも、僕はよくみんなに言ってましたよ。「大丈夫、想いを込めてやればいいんだよ」って。

「いってらっしゃい」に想いをこめて

市村正親さん

さくらちゃんの入学式の朝、家族3人を「いってらっしゃい」と送り出した言葉は、人生の海原を歩くことへのエールなんでしょう。君たちの人生はここからだと。
麻田さんの言葉は、本当に重くってね。あったかく包んだり、ピシッと正したり、自信を持たせたり。若いうちにはできない役だなぁと思うよね。 今回、亡き名優の島田正吾さんが時折、降りてきたんですよ。麻田さんのセリフはポンポンと口にすれば言葉が薄っぺらになるから、「島田先生なら、こんなふうに想いを込めて言うんだろうな」って。時々降りてきてもらって、教えを乞うて演じていました。
「ここで作ったらどないですやろ?」......そんな何気ないひと言にもヒントがあって、それをすみれさんたちが自分の中で昇華させていく。それをくり返すうちに、職人のDNAみたいなものが、彼女たちに育ったように思いますね。

市村正親さん 麻田が、市村が、見ていたものは。

芳根京子さん 谷村美月さん 百田夏菜子さん 土村芳さん

キアリス4人の成長は、彼女たち女優としての成長なんです。
僕はそれを見ているんですよ。1週間や1か月おきに現場に来るたびに、お芝居の進化がはっきり見える。それが、麻田としてすみれさん、明美ちゃん、良子ちゃん、君枝ちゃんを見る目につながっているんですね。だからやりやすかったですよ。
すみれさんは、妻になり母になり、セリフが日に日に深くなっていくのが分かる。だけど、麻田が何か言うと、リハーサルからすぐに泣くところは変わらないなっていうね(笑)。ある意味、彼女の無垢(むく)な心がずっと変わらない証拠でもありますよね。

今だから白状するとね、キアリス4人の中に僕がひとり入って芝居するときは、妙に緊張してたんですよ。若い娘さんの前で、おじさんがトチったらどうしようってね(笑)。さぁ、ここから麻田さんはどうするんだろう。もしかして何か月かしたら、「ちょっとニューヨークまで行って来ました」なんて、ぴょこんと現れたりして、ね。

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