低酸素が内なるパワーを生む

2017年8月24日(木)BSプレミアム 午後9時00分~ 午後9時59分

酸素パワーを使って呼吸ビューティー



<低酸素が内なるパワーを生む>

呼吸、つまり酸素を上手く使えば、美しいカラダを無理なく手に入れられると聞いて、あるジムを訪ねてみました。
一見、普通のジムと変わらない機器。変わらぬトレーニング法のように見えますが、実はここは「低酸素ジム」
通常より酸素の量を減らした状態で運動するのです。


そして、利用者は指に血中酸素を測る装置をつけています。
数値はなんと84パーセント。1分間息を止めているのと同じぐらい酸素が減っています。

低酸素の環境を可能にしているのは、天井に取り付けられた空調システムです。
窒素を部屋に流しこむことで、通常、空気中の酸素がおよそ21パーセントのところを、窒素の割合を高め、およそ15パーセントまで下げると言います。

そうして酸素濃度を下げ、標高2,000メートル以上に似た環境を作ると、あるメリットが得られるのだとか。


「普段10の運動をしていたら、標高2,500メートルくらいの空間では5ぐらいの運動強度でいいので、日常でいう強度の半分ぐらいの強度で済む。そのため非常に楽にやれてしまうっていうのが、1つの特徴ですね。」(低酸素ジム指導者 新田幸一さん)


低酸素は、カラダにどんな変化を起こすのでしょうか。
低酸素の環境で運動すると、カラダは酸素が足りなくなったことを感知し、酸素の運搬を促そうと赤血球を増やします。
その状態で、通常の環境に戻ると、増えた赤血球が酸素をより多く運ぶことができるので、疲れにくいカラダになるのです。

普段、低酸素の環境でカラダに負担をかけておけば、通常の環境に戻ったとき、カラダが疲れにくくなると共に脂肪を燃焼しやすくなると言います。

 

低酸素の環境が、ダイエット効果をもたらすと注目しているのが鹿屋体育大学です。
オリンピック選手も輩出しているこの大学には、「低圧チャンバー」と呼ばれる実験室があります。

 

低酸素状態での運動パフォーマンスを詳しく調べてきたのは、水中での運動生理学を長年研究してきた鹿屋体育大学教授の荻田太さんです。

 

室内を密閉しポンプで空気を抜いて、標高2,500メートルと同じ環境を作り出し、生活習慣病の予防効果を調べる実験を行いました。


水中で1日30分、適切な管理のもと運動を4日間行い、また2週間後、4日間行いました。

低酸素でない環境では、合計8日間の運動で内臓脂肪の厚さはほとんど変わりません。ところが低酸素の環境では、大きく減少したのです

その理由は研究途中の段階で詳しくわかっていませんが、低酸素運動の効果に大きな期待が寄せられています。

「(低酸素の環境で運動することにより)メタボリックシンドロームの一番の大きな原因の腹部内臓脂肪の量が減ります。この原因はよくまだわかっていませんが、多くの人が短期間で減りますので、体脂肪率が落ちる、肥満が抑制できるということが、今まで得た結果ですね。」(荻田教授)

さらに、血管の柔らかさにも大きな違いが現れました。

運動後、血管の柔らかさがどれだけ改善したのかを比べると、低酸素では5倍以上も高かったのです。しかもその効果は運動をやめても2週間維持されました。

「血管の内側に血管内皮というものがあります。低酸素という刺激が、この血管内皮を活性化させる1つの、大きな役割を果たすのです。もう1つは、運動すると血液が流れます。それが高まると、基本的に血管の内皮細胞が活性化されます。2つが相乗効果として血管が膨らみやすくなったり、柔らかくなったりするということが起こるのです。」(荻田教授)

スポーツ選手などが行う高地トレーニングも、こうした最新の研究成果を利用して行われています。
呼吸の達人、フリーダイバーの木下さんも、いわば低酸素でトレーニングしているのと同じ状態。
呼吸の仕方、つまり酸素の使い方次第で、カラダの内なるパワーを発揮する可能性がわかってきたのです。



<元気なミトコンドリアが美と若さの鍵>

今回、訪ねたのは立命館大学スポーツ健康科学研究科。
なにやら、若者が息を切らしながら行っている運動。これが、れっきとした最先端の研究なのです。


このグループの狙いは、きつい運動をして、酸素を取り込む能力を上げること。

しかし、こちらで研究しているのは、肺を大きくしたり、血液中の赤血球を増やすことではありません。
酸素を多く取り込む能力を上げることは、"呼吸の根本"、究極の部分を活性化させることにつながっているのです。


"呼吸の根本"とは、この赤色の「ミトコンドリア」です。
ミトコンドリアを長年研究しているのは、東京都健康長寿医療センター部長の田中雅嗣さん。


「酸素を呼吸として外から肺で取り込んで、心臓がそれぞれの組織に送り込む。それはミトコンドリアの中に酸素を送り込むために呼吸をしているのです。」(田中部長)

つまり、ミトコンドリアが呼吸し、酸素を使っていることが、私たちの呼吸の根本なのです。

「ミトコンドリアは細胞の中の物質代謝、エネルギー代謝の要(かなめ)です。ミトコンドリアが元気だということは、カラダ全体が元気だということになります。」(田中部長)

これは細胞のイラストです。
中心にあるのが遺伝子が詰まった核。その外側にある赤色のものがミトコンドリアです。
細胞の中で、ミトコンドリアは車のエンジンと同じような役割を果たしています。

 

エンジンがガソリンを必要とするように、ミトコンドリアはブドウ糖の分解物や脂肪酸を原料にして、細胞のためのエネルギーを生み出します。そのときに必要なのが大量の酸素なのです。


このミトコンドリアの活発な動きを、三次元の動画で捉えることに成功したのが、研究副部長の大澤郁朗さんです。

 

こちらが、撮影された画像です。赤色のもの全てが、たった1つの細胞の中でうごめいているミトコンドリアです。

 

実はミトコンドリアは呼吸や栄養状態によって、その数や活発さも大きく変わります。
良い呼吸で、このミトコンドリアに元気に働いてもらうことが、私たちの美と若さに直結するというのです。
つまり代謝が上れば痩せやすい体質になり、細胞分裂が活発になれば、美肌や臓器の若返りにつながります。


木下さんのように、カラダを動かして呼吸もしっかりしている方のカラダにはミトコンドリアが多いのでしょうか。

「カラダの隅々まできちっと酸素が行って、ミトコンドリアを元気にしていると思われます。」(大澤副部長)

では、アスリートではない人でも、ミトコンドリアを増やす方法はあるのでしょうか?

「いろんな研究がされていますが、ミトコンドリアは単に運動しただけでも増えないし、カロリー制限したからといって増えるものでもありません。ミトコンドリアを増やすのに大事なことは、きちんと栄養をとることです。ミトコンドリアは簡単には増えません。ストレスをかけておいて、そこに栄養をあげることで、増えるのです。」(大澤副部長)

皆さんも、ミトコンドリアを元気にする、究極の呼吸を目指してみませんか?

 

 

NHKオンデマンド

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