"お酒は百薬の長"はまぼろし?

2017年7月6日(木)BSプレミアム 午後9時00分~ 午後9時59分

お酒は“老ける毒” 若さを守る対策術


<“お酒は百薬の長”はまぼろし?>

お酒がおいしい季節になってきました。
仕事終わりに1杯! 気分もよくなりココロも弾みますよね。
女性の飲酒率は、40年前に比べ急激に高まり、一時は男性を追い越すほど。

しかし、最新の研究からお酒のある実態が見えてきました。
あなたが飲んでいるそのお酒、実は老ける毒なんです。

お酒の飲み過ぎによって生まれたある物質は、あなたの美と若さを、全身でむしばんでいきます。お酒が作り出す猛毒によってダメージを受けた細胞は次々と死滅。あなたのお肌はボロボロに…。

更に、理性を司るあの脳が、お酒の飲み過ぎで萎縮してしまうかも!? お酒をこよなく愛する人に、明るい未来はあるのでしょうか。長く人類に愛され続けてきたお酒の真実に迫ります!

みなさんはどれぐらいの量のお酒を飲んでいますか? 
そして、気になるのは、アルコール依存症の恐れ。

 簡単にチェックできるのが、WHO(世界保健機関)が作成し、多くの国で使われている「オーディット」というテストです。項目は全部で10問。これらの合計点で、依存症の度合いを判定します。

 

AUDIT
(Alcohol Use Disorders Identification Test)
アルコール使用障害同定テスト、オーディット 

点数の算出方法: 上記1~10の各項目の回答についている番号を合計してください。

Q1、あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲む?

【0点】飲まない

【3点】1週に2~3度

【1点】1か月に1度以下

【4点】1週に4度以上

【2点】1か月に2~4度

Q2、飲酒するときには、通常どれくらいの量を飲む?飲酒量の単位(ドリンク)については、「アルコール換算表(★1)」を参照してください。

【0点】0~2ドリンク

【3点】7~9ドリンク

【1点】3~4ドリンク

【4点】10ドリンク

【2点】5~6ドリンク

Q3、1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q4、過去1年間に、飲み始めるととめられなかったことがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q5.過去1年間に、普通だと思えることを飲酒していたために、できなかったことがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q6、過去1年間に、深酒のあと体調を整えるために、朝、迎え酒をせねばならなかったことがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q7、過去1年間に、飲酒後、罪悪感や自責の念にかられたことがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q8、過去1年間に、飲酒のため、前後の出来事を思い出せなかったことがどのくらいの頻度である?

【0点】ない

【3点】1週に1度

【1点】1か月に1度未満

【4点】毎日あるいはほとんど毎日

【2点】1か月に1度

Q9、あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがある?

【0点】ない

 

【2点】あるが,過去1年にはなし

【4点】過去1年間にあり

Q10、肉親や親戚、友人、医師、あるいは他の健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがある?

【0点】ない

 

【2点】あるが,過去1年にはなし

【4点】過去1年間にあり

 

アルコール換算表(★1)

酒類は、アルコールの濃さや容器の大きさが多様です。ここでは、中に入っている純アルコール換算量が示されています。ドリンクは、純アルコール換算量の単位です。
1ドリンク = 純アルコール10グラム

[注意:]

  1. 1ドリンクは、純アルコールで12.5mLまたは10グラム。
  2. 発泡はビールと同じ。
  3. カクテル類とは、果実味などを含んだ甘い酒をいう。

種類

ドリンク

(1)

ビール(5%)・発泡

コップ(180mL) 1杯

0.7

小ビンまたは350mL缶1本

1.4

中ビンまたは500mL缶1本

2.0

大ビンまたは633mL缶1本

2.5

ジョッキ(320mL)1杯

1.3

ジョッキ(600mL)1杯

2.4

(2)

日本(15%)

1合(180mL)

2.2

猪口(30mL)1杯

0.4

(3)

焼酎泡盛(20%)

ストレーで1合(180mL)

2.9

焼酎泡盛(25%)

ストレーで1合(180mL)

3.6

焼酎泡盛(30%)

ストレーで1合(180mL)

4.3

焼酎泡盛(40%)

ストレーで1合(180mL)

5.8

(4)

酎ハイ(7%)

コップ1杯(180mL)

1.0

350mL缶酎ハイ1本

2.0

500mL缶酎ハイ

2.8

ジョッキ(320mL)1杯

1.8

ジョッキ(600mL)1杯

3.4

(5)

カクテル類(5%)

コップ(180mL) 1杯

0.7

350mL缶1本

1.4

500mL缶1本

2.0

ジョッキ(320mL) 1杯

1.3

(6)

ワイン(12%)

ワイングラス(120mL) 1杯

1.2

ハーフボトル(375mL) 1本

3.6

フルボトル(750mL) 1本

7.2

(7)

ウイスキーブランデー、ジン、ウォッカ、  ラムなど(40%)

シングル水割り1杯(原酒で30mL)

1.0

ダブル水割り1杯(原酒で60mL)

2.0

ショットグラス(30mL) 1杯

1.0

ポケットビン(180mL) 1本

5.8

ボトル半分(360mL)

11.5

(8)

梅酒(15%)

1合(180mL)

2.2

猪口(30mL)

0.4

[出典] AUDIT WHO

 

アルコール依存症治療の第一人者、久里浜医療センター院長の樋口進さんによると、厚生労働省の基準では、7点以下の方の場合は問題なし。8点から14点までは飲み過ぎ。15点以上が、アルコール依存症の疑いがあるということになっています。

みなさんは何点でしたか?

ただし、判定に関しては、点数だけでなく、カラダからアルコールが抜けないような状況が続いたり、量が自分でコントロールできないなどの状態も判定基準になるようです。
気になる方は、医療機関を受診して専門家にご相談ください。

 

アルコール依存症までいかないまでも、お酒とどう付き合うべきか。その大原則を教えてくれるデータがあります。

下の図は男性の1日に飲むお酒の量と死亡リスクの関係を示したグラフ。1.0のラインがお酒を飲まない人の死亡リスク。少量のお酒を飲んだ場合、お酒を飲まない人に比べて、死亡リスクは下がります。

これが「お酒は百薬の長」といわれるゆえんでもあるのですが、お酒の量が増えると死亡リスクが急速に上がっています。

最も望ましいのは死亡リスクが一番低いポイントです。その量を見てみると日本酒1合、純アルコールおよそ20グラム。

こうしたデータを背景に、国が勧める「適量」が示されています。
男性の適量はおよそ20グラム。
女性の場合は、男性よりカラダが小さいので、更に少量の20グラム未満が適量となっています。

この純アルコールおよそ20グラムをお酒の種類別で見てみると……。

  • ビール…500mlの中ジョッキ1杯(アルコール度数5度なら)
  • 日本酒…1合/180ml(アルコール度数15度なら)
  • 焼酎…0.6合/約110ml(アルコール度数25度なら)
  • ウイスキー…ダブル1杯/60ml(アルコール度数43度なら)
  • ワイン…ワイングラス2杯/約180ml(アルコール度数14度なら)

お酒のみの人にとっては悲しい量ですよね。 

では、適量を超えるとカラダにどんな影響を与えるのでしょうか。

アルコールの危険性を教えてくれるのは、お酒の場でよく見かける顔を赤くしてお酒を飲んでいる人。

慶應義塾大学教授、加藤眞三さんは、この顔が赤くなることが死亡リスクの上昇につながっていると説明します。

「アルコールは肝臓で分解されるのですが、分解されてアセトアルデヒドというものが生じます。このアセトアルデヒドは割と毒性の高いものでカラダにかなり悪い影響を及ぼすから、心臓がドキドキしたりとか、頭痛がしたりとか、顔が真っ赤になったり。いわゆる悪酔いの症状が出やすいんです。」(加藤教授)

 

アルコールは主に腸で吸収され肝臓に送られます。

肝臓ではまず、主に分解酵素1(アルコール脱水素酵素)によってアセトアルデヒドという物質に変わります。更にその後、主に分解酵素2(アルデヒド脱水素酵素)によって無害な物質へと分解されます。最終的には水と二酸化炭素になって、カラダの外へ排出されます。

 

このお酒の分解ルートの途中で生まれたアセトアルデヒド。この処理が間に合わないと全身かけめぐることに。顔が赤くなるのも、アセトアルデヒドが血管を広げる作用があるためです。

しかし、顔を赤くする作用は、アセトアルデヒドがカラダに及ぼす影響の、ほんの序の口に過ぎません。

恐ろしいのは発がん性。特に食道がんがアセトアルデヒドの影響を強く受けます。更に飲酒自体も肝臓がんや大腸がんなどほぼ全身に影響すると言われています。

アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素1。
そしてアセトアルデヒドを無害な物質に分解する酵素2。
この2つの酵素の能力は遺伝子で決められており、生涯変わることはありません。 

自分の分解能力にかかわらず、たくさんお酒を飲んでいるとそのぶん死亡リスクが高くなります。

それでは、適量を飲む分には問題ないのでしょうか?

「それ(適量)が一応目標にされています。女性の場合の適量は、肝臓も弱いし、乳がんとかも多くなるということで、男性の3分の2まで。」(加藤教授)

でもやっぱり、飲まないにこしたことはないのでしょうか?

「適量の範囲内であれば飲んで、むしろいい影響もある。例えば動脈硬化が起きにくいとか、(善玉)コレステロールの数値上がるとか、そういったいい効果もあるので、むしろ寿命を長くする効果もある。」(加藤教授)

ところで、お酒に強い体質とか弱い体質という話をよく聞きますよね。
自分の体感だけで判断している人も多いと思いますが、大酒飲みのスタジオゲストのみなさんを実際に分析しました。 

縦軸はアルコール分解能力の強弱、横軸はアセトアルデヒドの分解能力の強弱を示しています。

その結果、意外にも高橋さん、遠野さん、古閑さんはお酒に強い体質ではありませんでした。
そしてフットボールアワーの2人はお酒に強いタイプであることが分かりました。

それでは、アセトアルデヒドの分解能力が高くない、高橋さんや遠野さんは、どういったタイプなのでしょうか?

「結局アセトアルデヒドがカラダに溜まりやすい人なのだけれども、だんだん慣れるに従ってそれでも飲めるようになってくる。ですから、本来アルデヒドの分解能力が弱いのに飲んでいる人は、今度はカラダの中にアセトアルデヒドの悪い作用が働きやすい。特に食道がんあるいは口腔咽頭がんが、それ以外の人に比べると7倍ぐらい。特に濃いアルコールを飲んでいる人は食道がんが危ない。」(加藤教授)

では、一番弱いグループに入った古閑さんのようなタイプの人にはどんなリスクがあるのでしょうか。

「顔の赤くなる方々っていうのはアセトアルデヒドが高くなるので、普通は依存症になりづらい。ところが古閑さんの場合は実は、赤くなり方がすごく弱い。本来なら、顔が赤くなるはずなのに、アルコールの分解が遅いので、赤くなり方が弱い。こういうタイプの方は実は依存症になるリスクが高い。」(樋口院長)

一方、フットボールアワーの2人は、アルコールもアセトアルデヒドの分解能力も最強グループ。
こんな人はいくらお酒を飲んでも大丈夫なのでしょうか?

「逆です。こういう人はお酒をたくさん飲みやすくて、結局アルコールで肝臓とかカラダを悪くする人はここのグループの人が一番多い。」(加藤教授)

 



<お肌を老けさせる“サビとコゲ”>

アルコールが美と若さに、どう影響を与えるのでしょうか。訪れたのは岐阜大学。
お酒と老化の関係を研究する、特任教授の犬房春彦さんは、マウスを使った実験でアルコールがどう老化に関わっているのか調べました。

 

実験では、1匹のマウスにはアルコールを与えず、もう一方のマウスには毎日アルコールを与え続けました。その量は、人間に換算すると毎日ワイン1本分くらい。

2週間後犬房教授はマウスの血液を採取し、分析。するとある数値に違いが出ていました。

アルコールを飲んでいないマウスが101。アルコールを毎日飲んでいる方が155。

 

実はこの数値、過酸化水素という物質の量を表しています。聞き慣れない言葉ですが、それが増えるとどうなるのでしょうか?

 

ケースの中には、培養した人間の細胞が入っています。そこに変化が出やすいように、大量の過酸化水素を加えました。

 

細胞が次々と色を変えていき、変色した細胞は次第に動きが鈍くなっていきます。
酸化水素によって細胞がダメージを受けたのです。
ダメージを受けた細胞は最終的に全滅してしまいました。

 

これこそが1つ目のキーワードとなる、カラダが酸化して“サビる”ということなのです。

 

サビと言えば、古い鉄がボロボロになっているあのイメージですよね。カラダがサビると、どうなってしまうのでしょうか。

「カラダがサビた状態になると、細胞がダメージを受けます。極端にいうと細胞が死んでしまうことですが、例えばコラーゲンにもダメージを与えます。皮膚で言いますと、細胞が死んだり、コラーゲンがうまく作れないという状況になりますと弾力を失ってシワを作ります。」(犬房教授)

サビが引き起こすのはなんとお肌のシワ。
健康な肌の下にはコラーゲン繊維などが網のように貼り巡らされ、下から支えています。

 

しかし過酸化水素が肌に増えると、コラーゲン繊維を攻撃し皮膚が陥没。その部分にシワを生まれてしまうのです。

 

アルコールを飲んで過酸化水素が生まれる理由。その犯人は…アセトアルデヒドです。

 

アルコールの分解からできたアセトアルデヒドが肝臓の細胞に作用して、活性酸素という物質を生み出します。その活性酸素は、ある酵素と反応して過酸化水素になり全身へ。

 

そして過酸化水素は、細胞をサビ付かせて死滅させてしまうのです。

「アルコールを大量に飲むということは、カラダを老けさせる毒だということ。(飲酒が)一定量を超えると若さを失い、老化を進めてしまいます。当然、美容面の皮膚に関しても加速度的に年をとっていくと考えてください。」(犬房教授)

 

もう1つ、アセトアルデヒドがもたらす老化があります。

そのキーワードは“コゲ”です。実際にコゲた食パンを指で押してみると、弾力を失っています。
これと同じことがお肌でも起こるのです。

お肌にとってのコゲとはAGEという物質。このAGEはなぜお肌の弾力を失わせるのでしょうか。

 

お肌の下には、コラーゲン繊維がベッドのスプリングのようになっていて肌に弾力を与えてくれます。しかし体内のAGE量が増えるとコラーゲン繊維にべっとりと絡み付き、この弾力を奪っていきます。

 

お酒を飲むことは、コゲの原因であるAGEをカラダに溜めることになります。
アセトアルデヒドが、体内のタンパク質と結合することでAGEが生まれてしまうからです。

「過酸化水素によるサビ」。
「AGEによるコゲ」。
この2つが、お酒は老ける毒だと言われるゆえんなのです。

 

では、お酒好きの方のお肌は、どれほど老化しているのか?
協力してもらったのは、お笑い芸人のツジカオルコさん(34)。

とにかくお酒が大好きな彼女。果たして彼女のお肌のAGE量はどれぐらい多いのか。
肌のAGE量を、年齢に換算する装置で測ってみます。 

AGE量が分かる光を当てて調べてみると…

なんと、老化の進み具合は倍の年齢の68歳。

 

肝臓のスペシャリストである金沢医科大学教授の堤幹宏さんは

「アセトアルデヒドそのものも細胞に悪さをし、アセトアルデヒドからできたAGEもお肌に障害がある。」

と説明します。ただし、

「ラットの実験では、AGEは4週間ほど禁酒すると肝臓から消えていく。」(堤教授)

とのこと。

ですから、禁酒をすれば、お肌年齢も、若返るそう。あきらめないでくださいね!

 



<脳のブラックアウト~記憶をなくすのは危険!~>

みなさん、お酒を飲んでいて家に帰るまでのことを覚えていなかったり、お酒の席での記憶が途中からなかったりしたこと、ありませんか?

それは「脳のブラックアウト」と呼ばれる症状。

実はこんな経験の多い人は、要注意です。記憶をなくす程のお酒は、脳にある大きな影響を与えてしまっている可能性が大きいのです。

 

アルコール依存症治療の総本山ともいえる久里浜医療センター。院長の樋口進さんはブラックアウトの危険性を次のように指摘します。

「お酒をたくさん飲んで次の日お酒から覚めたあとに記憶がない状況をブラックアウトといいます。ブラックアウトを引き起こすようなお酒の飲み方をすると、脳の神経細胞が破壊される。その結果、脳が働かなくなってくるとか、脳の萎縮が起きてきます。」(樋口院長)

 

下はアルコール依存症患者の脳の画像です。色が濃くなっている部分は脳が萎縮して隙間がうまれてしまった部分。

[出典:久里浜医療センター]

正常な脳と比べると一目瞭然です。この患者は大量のお酒を飲んで、わずか5年間でここまで脳が萎縮してしまったのです。

「(ブラックアウトを繰り返すと)、記憶力が下がるとか、意欲などにも関係しているので、物事をやろうと思ってもなかなか意欲が出てこない。人間らしさが少しずつ失われてきてしまう可能性があるかもしれません。」(樋口院長)

樋口院長によると、女性のほうがブラックアウトを起こしやすいので、注意とのこと。
また、濃いお酒を急に飲むと、アルコールの血中濃度の上がりが速くなりブラックアウトを起こしやすくなるので、注意だそうです。

 

NHKオンデマンド

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