FILE171:「君はシリアスゲームを知っているか?」
2012年1月19日放送
NHKオンデマンドで配信中。<2013年1月18日まで>
古市昌一(数理情報学)
コンピューターゲームの新しいジャンルとしていま注目されている「シリアスゲーム」。娯楽のため、現実逃避のためのゲームではなく、「現実を変え、現実をよりよく生きる訓練」をするためのゲームだ。ゲーム内でのゴール(クリア)ではなく、ゲーム外でのゴール(能力の習得)をめざす。たとえば国連世界食糧計画が制作した「フードフォース」。地雷原をかいくぐったり、現地の武装集団の妨害をかわしたりしながら難民キャンプに食糧を届ける。ゲームのミッションをクリアしていく過程で、食糧支援活動の実態を体感できるしくみになっている。イギリスの新聞社が始めたシリアスゲーム「地元選出議員の経費を調べよう」には2万人以上の市民が参加、議員の不正な経費請求を次々に暴き、その結果28人以上の国会議員を辞職に追いこんだ。
今回爆笑問題も、子どものコミュニケーション力をあげるねらいでつくられた新型ホッケーゲームや「桃太郎」ゲーム、ソマリア沖の海賊だ捕をテーマにしたシリアスゲームに挑戦。タンカーをジャックした海賊の親分・太田と防衛隊の隊長・田中が、人質救出を巡り壮絶な攻防を繰り広げる。海賊への発砲は禁止。田中隊長は船も人質も傷つけることなく、海賊を一網打尽にできるのか?ところがそこには、驚愕の展開が待っていた・・・。
Food Force(フードフォース):WFP 国連世界食糧計画が、食糧支援の実態を知ってもらうために制作・公開したゲーム
2005年公開・旧バージョン(番組内でプレイしたバージョン)はこちら
2011年11月公開・新バージョンはこちら
古市昌一(ふるいちまさかず)
1982年広島大学総合科学部卒業後、三菱電機(株)情報電子研究所に入社。
1982〜1992年通産省国家プロジェクト「第五世代コンピュータ」で逐次型推論マシンのOSを開発。1992〜1994年イリノイ大学アーバナシャンペン校コンピュータサイエンス学科に留学、修士課程修了。2008年三菱電機を退職、同年9月より現職。
今回の対戦内容
古市昌一(ふるいちまさかず)/爆笑問題
古市:ゲームというと、どちらかというと日本では遊びのためのもの。で、できれば子どもたちにゲームをやらせたくないなって思っているお母さん方が一般的だと思うんですけど。何でもかんでもいい悪いっていうよりも、むしろ目的を持ってそれを使うっていうところが重要なんじゃないかなと思います。
太田:だからゲームばかりやっていて、人とあまり接せない人のためのゲームってどうだろう。コミュニケーションを訓練するゲームっていうか。
古市:何か人とコミュニケートしないと、そのゲームが進行しないようにすれば、おそらくいいわけですよね。
太田:でももう人とコミュニケーションしなくても、もうゲームとして成立しちゃっていればそこでいいじゃないですか。
古市:駄目です駄目です。それはむしろ反対ですよね。エンターテインメントのゲームは、そういった問題点を今備えているわけですよね。要するに、外とのコミュニケート、人との社会とのつながり。それが実現出来なければ、私が考えるシリアスゲームではない、それはシリアスじゃない。
先生の対戦感想
古市昌一(ふるいちまさかず)
太田さんと田中さんのゲーム対戦結果としては、どちらが勝ったかなというと互角だったと思うんですけど。まあ私たちが目指すところ、あるいは学生たちが目指しているところを素直に理解していただいて、おおむねこの「シリアスゲーム」っていうものと普通のゲームとの違いっていうものを、理解していただけたんじゃないかなと思います。
おそらく爆笑問題さんの目を通して、テレビの番組で見ていただいている方にも伝わるんじゃないかという印象を受けました。すごく親しみやすい方で、はい、すごく今日は私としてもいい経験になりました。
爆笑問題の対戦感想
田中:シリアスゲームというのは今回初めて知ったけど、面白かったです。
太田も言ってたけど、オーガスタのゴルフゲームをジャンボ尾崎さんがやってるって聞いた時、ゲームといってもリアルな世界なんだなと。それが今から20年前の話だから、こういうシリアスゲームが出てきて、ゲームが進化するというのもうなづけるね。これによってほんとうに現実が変わるかどうかというのは僕にはわからないけど、進化すれば現実そのものに影響を与える日はやって来るだろうと思います。
太田:シリアスゲームは超リアルな世界だと思う。ただ、今日やった「ソマリアの海賊」のシリアスゲームは、リアルな現実を感じる以前に操作がよく分からなくて、その世界に入り込めなかったのが悔しかった。田中をやっつけるという目的は果たせたけどね。
ただ、エンターテインメントのゲームとシリアスゲームというジャンル分けをすることが、果たして必要なのかなと思う。ゲームはどれをとってもシリアスな面を持ってるわけだし、非現実的なゲームより現実的なゲームのほうが人気がある。つまり、ゲームはどんどんシリアスに進化していると言えるんじゃないかな。とはいえ、いま数億人といわれるオンラインゲームのゲーマーが、新しい未来を創るパワーとなる、とかいう考え方もあるけど、ゲームはゲームだし、現実を越えることはないんじゃないかなと僕は思うけど。
ディレクター観戦後記
ゲームは昔から好きではなかった。ゲーム世界をクリアーすることの意味やその目的がどうしても理解できなかったのだ。その自分がこのゲームには夢中になった。それがシリアスゲームだ。
シリアスゲームの目的は社会性のあるものであり、ゲームの背景となっているのは現実に存在する物事だ。ゲームをしながら、世界に存在しているシリアスな現実に、自分が今まさに直面しているような錯覚さえ覚えた。これはゲームだが、現実に起きていること。現実と違うのはやり直しができることだけだ。
世の中を見回すと、シリアスゲームのテーマに事欠かない。今後シリアスゲームは大きなジャンルとして成長し、もしかしたら世界を変えるパワーを持つかもしれない。
KEYWORD
人間
社会
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