FILE118:「はじまりはラブソング」
2010年8月31日放送
NHKオンデマンド:配信終了<2011年8月30日まで>
岡ノ谷一夫(生物言語学)
人類はいかにして言葉を獲得したのか?「言葉の起源」は、ヒトの進化史上最大の謎であり、物的証拠がないだけに、最も困難な課題の一つと言われている。その謎に独自の視点から迫ろうとするのが、理化学研究所・生物言語研究チームリーダーの岡ノ谷一夫だ。岡ノ谷の研究対象は、言葉を獲得する以前の動物たちだ。女王を頂点とする階級社会を形成し、身分によって鳴き声を変える珍獣「ハダカデバネズミ」、仲間うちで20種類近い鳴き声を使い分ける南米産のネズミ「デグー」、さまざまなフレーズをつなぎ合わせ、一羽一羽が独自の求愛の歌をつくって歌う「ジュウシマツ」。これまでは、まず「単語」が生まれ、やがてそれらを結びつけて複雑な意味を作り出す「文法」が生じてきた、とする説が支配的だった。しかし岡ノ谷は動物の音声コミュニケーション研究を通して、「言語の起源は求愛の歌だった」と大胆な仮説を立て、世界から注目を集めている。
番組では、爆笑問題が言語の起源研究の最前線に潜入。動物たちの驚異のラブソングに耳を傾ける。「言葉は、求愛を含め、他者を操るために進化したもの」という岡ノ谷と、「ほんとうの“感情”は言葉にできない。言葉にしたとたんに、“そのようなもの”になってしまう」という太田。メールの絵文字は感情を伝えているのか?人は言葉ではなくその間の「沈黙」こそ聞いているのではないか?・・・言葉と感情の関係、人だけがもつ言葉の本質について、熱い対話が交わされる。
岡ノ谷一夫(おかのやかずお)
2008年からERATO情動情報プロジェクト総括を兼任。2010年から東京大学教授を兼任。
主な著書に『言葉はなぜ生まれたのか』『小鳥の歌からヒトの言葉へ 』『ハダカデバネズミ−女王・兵隊・ふとん係』など。
今回の対戦内容
岡ノ谷一夫(おかのやかずお)/爆笑問題
岡ノ谷:感情の問題についてなんだけど、言葉の研究をしていると、自分の感情が時々置き去りになるっていうのが怖くて。言葉で語り続けるうちに語りたいことが逃げてしまっている、・・・というのを利用したのが、メールとかさ、電子メディアなん だよね。だから、心を伴わなくても、言葉だけ出すっていうことが出来ちゃっているじゃない。
だから、電子メディアの問題は、感情が乗っからなくなっているところだと思う。
太田:いやあ、感情乗っかるよ。
岡ノ谷:乗っけることは出来るけど、それは操作的な感情って僕は呼んでいるんだけど。
太田:でもそれが言葉ですよね、やっぱり。
岡ノ谷:そう。言葉はね、操作するために進化したんだよ。だから求愛っていうのはさ、アイラブユーっていうのは、それはアイラブユーなんだけど、でも結局は「やりたい」わけでしょ。で、やりたいっていうことは、操作ですよね。だから操作のために進化した言葉で、本当の気持ちを伝えるっていうのはとっても難しいんじゃないかと思う。
先生の対戦感想
岡ノ谷一夫(おかのやかずお)
非常に面白かったです。太田さんって表層的な言葉だけの人なのかという若干そういう思い込みがあって、でもそうじゃなくて、言葉がしみ出てくる雰囲気が分かりましたね。後は、やっぱり田中さんのフォローがうまいわ。太田さんが自由に動くところに句読点を打つっていう。そんな感じがしました。
言葉と感情の問題で、太田さんが、向田邦子さんの遺書の話をされましたよね。あえて言葉にしないことで伝わる感情があるって話。あれは非常に感動したんですけれども。でも僕はやっぱりね、あれはそもそも向田さんと家族との間に、感情の共有というか信頼が成り立っているから伝わったという部分があると思うんですね。
爆笑問題の対戦感想
田中:哲学的な話がかなり面白かったですね。先生もそういう話に興味があるっていうか、最終的に太田の悩み相談みたいになっていた部分もあるじゃないですか。それが何かすごく面白かったですね。「言葉の前に歌があったんじゃないか」っていう先生の説を、太田がもうすぐに「おれも絶対そう思う」って、そこからどんどん話が盛り上がっていって。先生と共通する部分が、太田にも沢山あるから「違うんだ、先生」って言えて、それをうんうんって素直に聞いている先生がまたすごく可愛らしくて。
太田:先生が言ってた「死が怖い」っていうのを聞いて、おれは、いつから怖くないんだろう・・・と改めて思いました。生と死っていうのは同じところにあって。何か「離れたい」っていうのと「くっつきたい」っていうのは、常に何かこう、人間が生まれてくる時は離れたくて生まれてくるんだけど。でも、その後すぐ、赤ん坊は泣き出して誰かを求めるっていう、何か同じことのような気がするんですよね。
ディレクター観戦後記
人を、人たらしめるもの。
それは“言葉”なのかも。
そんなことを今回、ふと思いました。
普段、当たり前のように使っている私たちの“言葉”
もしも言葉がなかったら・・・・
私たちはどんな暮らしをしているんでしょうか?
家族、友人、恋人・・・とどうやって意思の疎通を図るんでしょう。
身振り、手振り、表情・・・
それで、一体どこまで自分の気持ちを伝えられるんでしょうか?
一方で、対談でもあったように、
言葉では伝えられないもの、言葉によって生じる誤解・・・
があるのも事実。
そう考えると言葉ってややこしい道具ですよね。
でも、人だけが持った特別な道具。
例え、うまく使いこなせなくても、どんどん使わなきゃ損ですよね。
つぶやき
KEYWORD
生物
人間
社会

