過去放送記録

FILE102:「2010年 縄文の旅」

2010年3月2日放送

 

小林達雄(考古学)

縄文時代といえば、文明を持たず、もっぱら狩猟や採集に頼った未開社会だと思っていないだろうか。そんな従来のイメージを覆す縄文像を打ち出してきたのが、小林達雄國學院大學名誉教授だ。
小林は、土器や土偶など縄文人が遺したものを通して彼らと向き合い、そこに豊かな精神文化や世界観を読み解いてきた。
例えば日本全国の土器を分析した小林は、縄文土器は単なる入れ物、器ではないという。 火焔土器などのある種異様な意匠には、本来の器としての機能を離れ、「装飾」の次元すら超えて、縄文人が表現しようとした神話や世界観が見て取れるというのだ。 このほか土偶にこめられた意味や、縄文人が数や暦の概念を持っていたことをうかがわせる驚愕の事実も飛び出す。
文明を持たないとされる縄文人の世界観とは、いったいどんなものだったのか。1万年も続いた安定した縄文時代はなぜ終ってしまったのか。
爆笑問題とともに竪穴住居でたき火を囲み、当時の食事など縄文流スローライフを体験しながら、その真の姿に迫る。


小林達雄(こばやしたつお)
考古学者。國學院大學名誉教授。
1937年、新潟県長岡市生まれ。國學院大學大学院博士課程修了。文学博士(歴史学)。
東京都教育庁文化課、文化庁文化財調査官を経て、1978年國學院大學文学部助教授、1985年より同教授。2008年3月退官。新潟県立歴史博物館名誉館長。
編著に『縄文土器大観』『縄文文化の研究』など、著書に『縄文人追跡』『縄文人の世界』『縄文の思考』など多数。

今回の対戦内容

小林達雄(こばやしたつお)/爆笑問題


小林:普通の入れ物というのは、口があって底があればものが出し入れできるでしょ。ところが縄文は、(「火焔土器」を指し示しながら)ちゃんと一所懸命作ったものは、全部こういう突起があるんです。それから、突起があるだけじゃなくてね、これ底が小さいのにね、寸胴の側面があって、その上にわっと大げさな装飾がある。そうするとこれ、重心がずり上がってね、不安定きわまりないんですよ。それをあえて作るんです。
太田:機能的じゃないわけですね。
小林:そうです。で、作ってですよ。これ何かと思ったら煮炊き用なんです。使ってるんです。中にべっとりと焦げ付きがこびりついてる。この装飾、邪魔ですよ。つまりね、機能一点張りのものを作るんじゃなくて、「縄文土器」を作りたかったんです。で、縄文土器というのは、使い勝手がいいということを問題にしないんですよ。私はこれを「器離れ」と。器っていうのは、器としての本領を全うするために追求する形があっていいんですが、それから離れていくんです。これ(火焔土器の装飾)だってね、例えばね、何かというと、そっちから見ると分かるでしょうけど、S字なんです。Sのモチーフなんです。そのSのモチーフを、今度こっちから見るとわかりますように、ここにフリルを付けるんですね。そうやってこうSのモチーフを沈ませてるんだけども、厳然たるSのモチーフがここで生きているわけです。だからその、近寄りがたいんだけれども、何かの手立てを講じて、自分の観念、世界観というものが縄文の土器にあるわけですね。
田中:あの、文字はまだないんですか?
小林:文字はない。
太田:例えばね、随分後になりますけど、利休、千利休みたいな人が出てくるじゃないですか。
で、利休がやったことっていうのは、これと逆に見えるんだよね。(装飾を)抜いて、抜いていく。逆は逆だけど、無駄は省いているけど、「この名器見てください」。これって機能とまた別の価値観でいっちゃうよね。だからつまり、その後の日本人の中にも、やっぱりそういう感覚ってしっかり残っているような気がするんですよね。
小林:だから、造形のなかにね、世界観を込める。詩人が詩を作るのと同じように、縄文人は土器に詩心を表現しているんですよ、ある意味。そういうことって、今、ないわけですよ。

先生の対戦感想

小林達雄(こばやしたつお)


彼らは二人とも、ある意味では現代の最前線にいますよね。そういう最前線にいる人が、縄文についてどう反応してくれるのかなっていうのは、ちょっと興味がありました。話してみると、こっちの言うことにべったりとくっついてくるんじゃなくて、ちょっと手綱を緩めると自分の思いをね、むしろ私よりもたくさん語りたがっているみたいで、それを逆に僕が横やりを入れて戻したっていうところがいっぱいあったような(笑)。まあ二人とも、乗ってくれたのかなという気はしましたね。
縄文というと、物の形だとかそういうのだけを話すんじゃなくて、思想というか、哲学というか、そういう分野にも足を掛けながらモノを見ようと私はしたいわけですね。やっぱり縄文は生易しくないんです。

爆笑問題の対戦感想

田中:本当に縄文時代を愛している先生で面白かったです。最初はそうはあまり言わなかったけど、だんだん最後の方は弥生批判みたいになってきて。弥生土器を好きで見ているやつはとんでもないやつだみたいな(笑)。でもすごい全然知らなかったというか、考えたこともなかったようなお話がいっぱい聞けて面白かったです。
縄文が1万年も続いたっていうのも、何となく昔習ったんだろうけど、何で文明がワーッと進まなかったのかは、うん、100%はなかなか納得が出来ないですけどね。なぜそうなのかって。すげえリーダーシップがあるカリスマみたいなのが出てきたりして、何かそこからまたちょっと変わっていくみたいなところがなかったとすれば、1万年続くのも分かりますけどね。
あと、数字のやつ(縄文時代の数の標準器)も面白かったです。算数がちゃんとあるって。そういう合理的なことも実はちゃんと知っているし、踏まえているし、で、あえて合理的じゃなかったりもするのが、うん、何か結構すごいんだなっていう感じがするんですね。なかなか貴重な体験でした。
太田:ちょうどおれも今、長時間にわたって文明が進まないでいられることって不思議だなってずっと考えていたので。特に縄文なんかっていうのは、それとリンクした感じがしました。もしかして進まないことを知恵としてやっているなら、そんな高等なことが出来るのかっていう気もするしね。人間は進むことを止めることなんて出来ないっておれは思っているんだけど、もしそれを縄文人がやっていたとすると、それはすごい知恵だなって思うんです。

ディレクター観戦後記

いま縄文時代について語ったら日本で一番熱い男(!?)、小林達雄先生にご登場いただきました。わたし自身縄文時代についての知識は中学校レベルのものだったので、先生からお聞きする縄文の世界は、本当にオドロキの連続でした。
さて、取材して感じたことを一つ。それは、本物はスゴイ!ということです。ロケの前に、東京都埋蔵文化財センターや國學院大學の伝統文化リサーチセンター資料館、そして東京国立博物館の「国宝 土偶展」に行ってきました。そこで本物の土器や土偶を見てきたのですが、正直圧倒されました。写真やレプリカにはないオーラが、本物にはあるのです。数千年前に実際に作られた土器や土偶には、当時の人々が込めた思いのようなものが感じられました。小林先生がおっしゃっていた「モノを通して縄文人と対話する」ということがわかった気がしました。みなさんも機会があれば本物に触れてみてはいかがでしょうか?縄文人の声が聞こえるかもしれませんよ。

つぶやき


KEYWORD

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